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目次

目次背景アメリカでの事例
津波被害軽減と事前準備に関する包括的アプローチ
カリフォルニア州における地震被害軽減プログラムの歩み
官民のユーザー主導によるライフライン耐震調査のパートナーシップについて
意図的な災害−アメリカにおける自然災害の再評価−
FEMAによる改訂版沿岸建設マニュアル
カリフォルニア州サンフランシスコ沿岸地域におけるHAZUSによる地震リスク評価能力を向上させるための官民のパートナーシップについて
地震被害軽減のための知識の拡充と活用
地震工学シミュレーションのためのネットワーク(NEES)
平時及び大規模災害時の情報交換
陸上や海底での地滑りによって生じる津波災害のモデル化について
サンフランシスコ沿岸地域における「プロジェクト・インパクト」の概要
全米津波防災プログラム
津波に耐えうるコミュニティー
地震リスク軽減のためのプログラム
緊急事態における統合管理

目次背景日本での事例

目次背景日米共同の事例


意図的な災害 −アメリカにおける自然災害の再評価−
−「国際防災の10年」の活動の一環として− (1)

■近年、自然災害とそれに伴う技術災害とは、個々別々に解決できるものではないことが認識されるようになった。その背景には、人間の環境に対する、偏狭で近視眼的な関わり方という根本的な問題が控えているのである。

 1975年、地理学者のギルバート・F・ホワイトと社会学者のJ・ユージン・ハースは、『自然災害調査の評価』を著し、その中で、国家は自然災害に対抗することができると説いた。彼らが指摘したように、自然災害は単に理工系分野のみの問題ではなく、経済、社会、政治にわたる問題である。さらにホワイトとハースは、国家は発災後にデータを集めるのみでなく、何よりもまず被害の発生自体を減らすべく、よりよい計画の立案、土地利用状況の監視、その他の予防的・被害軽減的な措置を取るべきだと主張した。今日に至り、公的セクターや民間セクターの計画や政策において、自然災害による被害を事前対応によって軽減することの重要性が、ようやく積極的に認識されるようになった。

 自然災害の発生それ自体は予測できないが、それによる被害は、地勢や人口分布、そして構造物の相互作用から生じるもので、予測可能である。現在、地球温暖化など地球環境全体が変化しており、さらに人口分布の変化、貧富の差の拡大、交通 網・通信網をはじめ住環境がますます複雑化し、都市部への人口集中などから、自然災害がもたらしうる損害の規模は日増しに増大している。

 問題はそればかりではない。開発によって地域環境が破壊されることは言うまでもないが、ある場所で行った災害対策が結果 的に環境を破壊し、別の場所に災害をもたらすというケースも考えられる。また、警報システムの発達によって、危険な場所であっても人々が(安心して)住むようになり、災害が起きてしまうと被害が大きくなってしまうという矛盾もある。
 このように、災害を先送りするだけというような災害対策を切り替え、「防災力(sustainability)の向上を伴う被害軽減」の政策を採らなければならない。

 地域の「防災力」の向上  
  ある地域に「防災力」があるというのは、被災した場合に、外部からの援助に全面的に頼ることなく、損害や生産性の低下、生活の質の低下に耐えてこれを跳ね返すことが出来るという意味である。地域に「防災力」をつけつつ被害の軽減をめざすためには、以下の6点を達成する必要がある。

*環境の質を維持し向上させること  
*住民の生活の質を維持し向上させること  
*地域の復興能力と自覚を高めること  
*地域経済の活性化が不可欠であることを認識すること  
*人種、民族、階層の違いをこえて公平な被害軽減を追及すること。経済的負担を後の世代や社会的に弱い立場の人々に押し付けてはならないこと  
*地域住民の全員参加による合意にはしたがうこと

以上6点を達成するためには、自治体が実際の計画を立てるだけでなく、国からの指導も重要である。

意図的な災害 −アメリカにおける自然災害の再評価「国際防災の10年」の活動の一環として− (2)へ


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