jishin

EPCF


目次

目次背景アメリカでの事例
津波被害軽減と事前準備に関する包括的アプローチ
カリフォルニア州における地震被害軽減プログラムの歩み
官民のユーザー主導によるライフライン耐震調査のパートナーシップについて
意図的な災害−アメリカにおける自然災害の再評価−
FEMAによる改訂版沿岸建設マニュアル
カリフォルニア州サンフランシスコ沿岸地域におけるHAZUSによる地震リスク評価能力を向上させるための官民のパートナーシップについて
地震被害軽減のための知識の拡充と活用
地震工学シミュレーションのためのネットワーク(NEES)
平時及び大規模災害時の情報交換
陸上や海底での地滑りによって生じる津波災害のモデル化について
サンフランシスコ沿岸地域における「プロジェクト・インパクト」の概要
全米津波防災プログラム
津波に耐えうるコミュニティー
地震リスク軽減のためのプログラム
緊急事態における統合管理

目次背景日本での事例

目次背景日米共同の事例


地震被害軽減のための知識の拡充と活用
全米地震被害軽減プログラム・戦略計画について

■地震は、わが国が直面する自然災害の中で、単一のものとしては犠牲者と経済的損失がもっとも大きくなる可能性を秘めたものである。発生する場所は変わってもパターンは同じである。すなわち、地震は何の警告もなしに発生し、都市を瓦礫に変え、無数の人命を奪う。20世紀だけでも、5万人以上の死者を出した地震が10回、千人以上の死者を出した地震は100回を数えるのである。

 幸運にもアメリカでは、近年、都市の中心部が「大」地震(マグニチュード7以上)に直撃された例はない。1964年のアラスカ大地震以来、アメリカでは26回の大地震が発生したが、幸いにも65人以上の死者を出した例はない。このような「最小の」被害ですんだのは、地震が発生した場所のほとんどがアリューシャン列島やモハーヴェ砂漠といった人里離れた地域だったからである。ロマプリータ地震(1989年)とノースリッジ地震(1994年)という二つの特筆されるべき地震も、大都市の周辺で発生しており、しかも社会活動の低い時間帯の発生であったため、被害は比較的小規模なものですんだのである。

 アメリカの人口密集地が大地震に一度ならず襲われるのも、単なる時間の問題である。アメリカでは、7州をのぞくすべての州で大規模な地震が発生する危険性があり、多くの大都市も同様である。連邦緊急事態管理庁(FEMA)の推定によれば、アメリカにおける地震による経済的損失は年間44億ドルにのぼる(FEMA、#366、2000年9月)。ただし、この数字は長期的な損失予想の年平均をとったもので、大規模な地震が大都市を直撃すれば、実際の損失額はさらに大きなものになるだろう。

 中規模の都市型地震でさえ壊滅的な被害をもたらす危険性があることを正しく認識するためには、1995年の阪神・淡路大震災の際、日本が経験したことを思い起こせばよい。マグニチュード6.7のこの地震は、その規模や揺れの継続時間がノースリッジ地震とまったく同じだったにもかかわらず、5500人以上の死者と1000億〜2000億ドルの経済的損失とをもたらした。阪神・淡路大震災の被害は、アメリカを襲った災害の中で最も経済的被害が大きかったノースリッジ地震(400億ドル、死者57名)より、はるかに大きかった。阪神・淡路大震災の被害のほうが大きい理由は、一義的にはその発生場所にある。この地震は高度に都市化された地域の直下で発生した。一方ノースリッジ地震は、ロサンゼルス市街地の北の外れの直下で起きた。アメリカは運がよかったのである。

 アメリカでは、地震に対して脆弱な部分が憂慮すべき率で増加している。人口増、都市化、インフラの拡張、これらはみなこの傾向に拍車をかけている。地震被害軽減に向けた努力は賞賛に値するが、順調とは言えない。ある都市の周辺で大規模な地震が起これば、数千人の死者が出て、被害額は1000億〜2000億ドルにのぼるだろう。このような傾向に抗して地震に強いコミュニティー作りのための効果 的、長期的かつ持続的な戦略を展開するためには、今日の時点で大胆な行動がとられなければならない。そのための行動計画が小論のテーマである。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.