第3節 発生が危惧される災害種別ごとの対策
3-1 地震・津波災害対策
内閣府では、中央防災会議が対象としている大規模地震について、最大クラスの地震動・津波の推定及びその被害想定の算出や教訓等も踏まえながら、対策の充実に向けた調査・検討を行っている。また、大規模地震防災対策推進検討会において、大規模地震における防災対応に関して発生する諸課題について検討を行っている。令和7年度は、各地震について以下のような検討を行った。
(1)千島海溝地震、日本海溝地震対策の検討
択捉島東方沖から三陸海岸の東方沖を経て、房総半島の東方沖までの千島海溝・日本海溝沿いで発生する巨大地震の防災対策については、令和2年4月に「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ」を設置し、令和3年12月には最大クラスの地震・津波による人的・物的・経済的被害想定結果を、令和4年3月には被害想定を踏まえた防災対策を取りまとめた。このワーキンググループの報告を受け、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(平成16年法律第27号)の下、同年9月には、同地震に係る地震防災対策を推進すべき地域等の指定を行うとともに、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」(以下本項において「基本計画」という。)を変更した。
また、千島海溝・日本海溝沿いでは、モーメントマグニチュード7.0以上の地震が発生した後、続いて発生する大規模な地震(後発地震)の事例なども確認されていることから、後発地震への備えとして、令和4年11月に「北海道・三陸沖後発地震注意情報防災対応ガイドライン」を公表するとともに、同年12月から「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用を開始した。なお、令和7年12月の青森県東方沖地震に伴い初めて北海道・三陸沖後発地震注意情報が発表された(参考「【コラム】12月8日の地震に伴う北海道・三陸沖後発地震注意情報の発表」)。
令和5年5月には、実際に発災した場合に備えて、警察・消防・自衛隊の救助部隊の活動拠点等をあらかじめ明確にし、積雪寒冷地特有の課題や地理的条件も踏まえながら、速やかに救助活動等を実施できるようタイムラインを明示した「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震における具体的な応急対策活動に関する計画」を作成した。
今後、基本計画に定められた減災目標の達成に向けた防災対策や、北海道・三陸沖後発地震注意情報の性質や内容を踏まえた適切な防災行動の普及・啓発に取り組み、関係地方公共団体等と連携しながら、防災対策を引き続き推進していく。
(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/WG/index.html)

(2)首都直下地震対策の検討
首都直下地震の防災対策については、平成26年3月に作成、平成27年3月に変更(平成27年から10年間の減災目標、施策の具体目標を設定)した「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(「首都直下地震対策特別措置法」第4条第1項に規定する「緊急対策推進基本計画」をいう。以下本項において「基本計画」という。)等に基づき、国や地方公共団体、民間事業者等が連携し、重点的に進めてきた。基本計画における減災目標等の設定から10年が経過することから、令和5年12月、中央防災会議防災対策実行会議の下に「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」(以下本項において「ワーキンググループ」という。)を設置した。ワーキンググループでは、東京圏を取り巻く状況の変化(将来の変化を含む。)や、状況の変化が首都直下地震後の社会に及ぼす影響について検討を行うとともに、これまでの防災対策の進捗状況や、平成28年熊本地震や令和6年能登半島地震の教訓等も踏まえ、新たな被害想定(被害規模や被害様相)について検討してきた。なお、被害想定の検討は、首都直下で起こる様々な地震の震度分布や津波高、これらハザードによる直接的・間接的な被害量の推計手法について、最新の科学的知見を踏まえて検討された「首都直下地震モデル・被害想定手法検討会」(以下本項において「モデル等検討会」という。)の報告書に基づいている。
そして、このワーキンググループでは、モデル等検討会による「東京圏及びその周辺地域で発生する地震」の検討結果に基づき、「地震・津波対策の対象とする地震」として、首都中枢機能への影響や人的・物的被害が甚大となる「都心南部直下地震」に加え、津波を伴う海溝型地震としては「大正関東地震タイプの地震」を被害想定の対象として選定し、新たな首都直下地震対策の基本的な考え方等について取りまとめた。このワーキンググループの報告書を受け、令和8年6月12日に基本計画が変更された。
(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/index.html)

また、大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策については、ガイドラインを策定して(平成27年3月策定、令和6年7月改定)、原則3日間の一斉帰宅抑制を基本原則とする対策に取り組んできたところである。令和7年7月に発生した「カムチャツカ半島東方沖を震源とする地震」等を受け、令和8年1月にガイドラインを改定し、遠地津波が発生した場合など様々な状況下における帰宅困難者等対策の考え方を追加した。
(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/kitakukonnan/index.html)

(3)南海トラフ地震対策の検討
南海トラフ地震の防災対策については、「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(平成14年法律第92号)の下、平成26年3月に「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(以下本項において「基本計画」という。)を作成してから10年を迎えることから、令和5年4月に「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」を設置し、令和7年3月には、最大クラスの地震・津波等による人的・物的・経済的被害想定結果及び被害想定を踏まえた防災対策を取りまとめた。このワーキンググループの報告を受け、令和7年7月には、1都2府27県723市町村を南海トラフ地震防災対策推進地域として指定するとともに、基本計画を変更した。
今般の基本計画の変更においては、「命を守る」対策と「命をつなぐ」対策を重点化して、205項目の具体目標等を設定した。南海トラフ地震については、災害が超広域かつ多分野にわたるとともに、災害に充てる人的・物的資源が限定されるという非常に厳しい状況となることを踏まえ、行政のみならず、企業、地域及び個人が巨大地震・津波が発生した際に起こり得る事象を冷静に受け止め、正しく理解するとともに、当事者意識を持って南海トラフ地震対策に主体的に取り組むことが必要である。
また、南海トラフ沿いでは、時間差をおいて大規模地震が発生した事例が知られており、大規模地震等の発生を受け、新たな大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっていることを知らせる「南海トラフ地震臨時情報」が運用されている。令和6年8月の日向灘の地震に伴い初めて発表となった「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」に伴う各地の防災対応のうち他の地方公共団体や事業者等にも参考になると考えられる事例を収集・整理し、令和7年6月に「南海トラフ地震臨時情報発表に伴う防災対応事例集」として公表した。また、同年8月には、「南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン」を改訂した。このほか、南海トラフ地震臨時情報の制度や防災対応の理解促進のため、令和8年3月にeラーニングを公開した。
今後、基本計画に定められた減災目標の達成に向けた防災対策や、南海トラフ地震臨時情報の性質や内容を踏まえた適切な防災行動の普及・啓発に取り組み、関係地方公共団体等と連携しながら、南海トラフ地震対策を引き続き推進していく。
(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/index.html)

(4)中部圏・近畿圏直下地震対策の検討
過去の地震事例によると、西日本においては、活断層の地震により甚大な被害がもたらされた事例や、南海トラフ地震の前後に活動が活発化した事例があり、府県を越えて市街地が広がっている中部圏・近畿圏で大規模地震が発生した場合の被害は甚大かつ広域にわたると想定される。
この中部圏・近畿圏直下地震については、平成16年から平成20年にかけて、中央防災会議の下、被害想定や防災対策の検討・取りまとめが行われたが、その後に発生した平成23年の東日本大震災の教訓や最新の知見を踏まえ、見直しを行う必要がある。
このため、令和4年11月に地震学や地震工学等の有識者で構成される「中部圏・近畿圏直下地震モデル検討会」を内閣府で開催し、現時点の最新の科学的知見を踏まえ、従来の中部圏・近畿圏直下地震モデルを見直し、あらゆる可能性を考慮した新たな地震モデルを構築するための検討を進めている。本検討会で、中部圏・近畿圏直下地震が発生した場合に想定される震度分布等の推計を行った後、被害想定や防災対策の検討を行う予定である。
(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/chubu_kinki/kentokai/index.html)

