令和8年版 防災白書|特集 第3章 第5節 おわりに


第5節 おわりに

本章では、大規模地震・津波災害に備え、国及び地方公共団体の施策を始め、企業や地域、NPO等との連携による取組、事前防災、発災時の応急対策から復旧・復興までの一貫した幅広い災害対策を紹介した。これらの取組は、被害の最小化と迅速な復旧・復興を図る上で重要であるが、発災直後においては、行政が即時に十分な支援を行うことには限界があり、国民一人一人の行動が被害の程度を大きく左右する。

このため、大規模災害を「いつか起こる出来事」ではなく、「自らや家族、身近な地域に起こり得る現実」として捉える、いわゆる自分ごと化が不可欠である。住宅の耐震化や家具の固定、感震ブレーカーの設置、日頃からの家庭備蓄、避難経路や避難行動の確認等は、特別な対応ではなく、日常生活の中で取り組むべき基本的な備えである。

また、避難行動や帰宅抑制への理解と協力、地域の防災訓練への参加、近隣住民との声掛けなど、個々の行動の積み重ねが、地域全体の防災力の向上につながる。行政、企業、地域、そして国民がそれぞれの役割を果たし、災害を「自分ごと」として主体的に備えることが、被害を減らし、社会全体で困難を乗り越える力となる。

【コラム】
12月8日の地震に伴う北海道・三陸沖後発地震注意情報の発表

令和7年12月8日23時15分に青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.5(モーメントマグニチュード7.4)(暫定値)の地震が発生した。この地震に伴い、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表された。令和4年12月に運用が始まって以降、初めての発表となった。

この地震では青森県八戸市で最大震度6強が観測された。また、北海道太平洋沿岸中部、青森県太平洋沿岸、岩手県に津波警報が発表され、岩手県久慈港で最大64cmの津波が観測された。気象庁は地震発生直後、震源域周辺で同程度以上の地震への注意を呼び掛けた。その後、地震の震源位置や規模を精査した結果、北海道の根室沖から東北地方の三陸沖にかけての巨大地震の想定震源域において、新たな大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていることを知らせる「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し、もし、大規模地震が発生した場合は北海道太平洋側から千葉県まで広い範囲で高い津波が到達するため、震源域周辺だけでなく、より広い範囲に対して注意を呼び掛けた。

発表に際し、内閣府及び気象庁は合同記者会見を行い、北海道から千葉県の対象地域に対して、地震発生から1週間の間、平時からの備えの再確認に加え、「すぐに逃げられる態勢の維持」、「非常持出品の常時携帯」など特別な備えを呼び掛けた。

呼び掛け期間を通じて国民、地方公共団体や事業者におかれては大きな混乱もなく冷静に対応いただいた。対象地域の観光施設、宿泊施設において施設利用者の避難誘導手順の再確認、また小中学校において防災マニュアルや避難経路、備蓄の確認などの対応がとられた。内閣府では地方公共団体や事業者において防災対応の参考となる事例について横展開を行っていく。

幸いにして、その後、大規模な後発地震は発生せずに地震発生から1週間を迎え、特別な注意を呼び掛ける期間は終了した。しかし、大規模地震発生の可能性がなくなったわけではなく、また、先発の地震がなく、突発的に大規模地震が発生する可能性もある。引き続き、避難場所の確認や家具の固定など日頃からの備えを進めることが重要である。

内閣府・気象庁合同記者会見
内閣府・気象庁合同記者会見
事業者による呼び掛け(イオン株式会社)
事業者による呼び掛け(イオン株式会社)
【コラム】
南海トラフ地震臨時情報発表に伴う防災対応事例集

令和6年8月8日の日向灘の地震に伴い、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が運用開始後初めて発表され、各地において様々な対応・反応があった。内閣府では、関係省庁、関係地方公共団体、事業者等の協力の下、このときに実際に行われた防災対応のうち、他の地方公共団体や事業者等における検討においても参考になると考えられる事例を収集・整理し、令和7年6月に「南海トラフ地震臨時情報発表に伴う防災対応事例集」(以下「事例集」という。)として公表した。

巨大地震注意の場合、「日頃からの地震への備えの再確認」及びすぐに逃げられる態勢の維持などの「特別な備え」を行った上で、社会経済活動を継続するという防災対応が基本である。令和6年8月の巨大地震注意の際にも、「来場者等の安全確保策を講じた上で、イベントを実施」、「夏休み・お盆期間を考慮した呼びかけ」、「高所という状況における作業への対応」などの事例があり、事例集では、これらを含め17事例を紹介している。

南海トラフ地震臨時情報が発表された場合に円滑・確実な対応を取るため、地方公共団体や事業者等の各主体が、地域の実情等を踏まえて平時から臨時情報発表時の防災対応の検討を進め、防災計画等としてまとめておくことが重要である。この事例集は、令和7年8月に改訂した「南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン」に別冊資料として組み込んでおり、各主体における検討に役立てていただきたい。

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表に伴う防災対応事例
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表に伴う防災対応事例
実施したイベントにおける来場者への周知状況
実施したイベントにおける来場者への周知状況

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