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令和7年版 防災白書|特集 第2章 第1節 令和6年能登半島地震の課題・教訓の整理と今後に向けた検討


第2章 令和6年能登半島地震を踏まえた防災対応の見直し

第1節 令和6年能登半島地震の課題・教訓の整理と今後に向けた検討

(1)令和6年能登半島地震に係る災害応急対応の自主点検レポート

令和6年能登半島地震による被災地の復旧・復興支援はいまだ途上であり、今後も継続的に取り組んでいく必要がある。一方、今般の災害から得た経験、教訓を踏まえて、災害対応を不断に見直していくことが重要であり、令和6年能登半島地震においても、一連の災害対応を振り返る中で浮かび上がった課題を乗り越える方策や、災害対応上有効と認められる新技術等を洗い出し、初動対応・応急対策を強化するための措置等について、今後の対策に反映する必要がある。

このため、令和6年能登半島地震における地方公共団体支援、避難所運営、物資調達・輸送などの発災後の災害応急対応について、対応に当たった職員の経験を収集し、整理するため、内閣官房副長官補を座長とし、関係府省庁の幹部級職員を構成員とする「令和6年能登半島地震に係る検証チーム」を開催した。本検証チームでは、今回の災害応急対応について評価できる点と改善すべき点を抽出し、現在も復旧等に向けた取組が行われている被災地を含め、今後の災害対応に生かしていくことを目的として、点検作業を行った。点検の対象とする災害応急対応として、「令和6年能登半島地震被災者生活・生業再建支援チーム」を立ち上げて各府省庁が連携して対応した地方公共団体支援、避難所運営及び物資調達・輸送の3分野のほか、半島という地理的制約の中で、これまでの災害対応と比較しても困難な状況の下、初動対応・応急対策に大きく貢献したスタートアップの新たな技術にも焦点を当てて整理を行い、令和6年6月に「令和6年能登半島地震に係る災害応急対応の自主点検レポート」を取りまとめ、公表した6。なお、具体的な点検作業としては、分野ごとの取組の概要、現行の防災マニュアルにおける規定内容、本府省庁、現地対策本部で対応した幹部職員からの報告、実務に当たった職員からの報告レポートを素材として、評価すべき事項、改善すべき事項を抽出した。

本自主点検レポートでは、能登半島が日本海側最大の半島であり低平地が非常に乏しく金沢からも距離があるとの地理的特徴、高齢化率が高く耐震化率が低く、またアクセスルートが限られる社会的特徴、元日の夕方の発災という季節的特徴を挙げた上で、状況把握の困難性、進入・活動の困難性、過疎地域かつ高齢者等の要配慮者が多数存在、支援活動拠点の確保困難性、積雪寒冷対策の必要性、インフラ・ライフラインの復旧に時間を要したこと等に伴う影響、といった災害対応上の課題等が示された。その上で、

○被災地の情報収集及び進入方策への対応として、

  • 情報共有・一元化のため被害情報の収集・集約・分析にヘリ搭載カメラや定点カメラ、夜間のヘリ搭載赤外線カメラ等様々な手段を用いるべきこと
  • ITSスポット等の最新の機材を配備することによる効率的な交通状況の把握方法を検討するとともに、衛星データや民間カーナビ情報を用いて交通状況の把握体制を強化すること
  • 被災地への進入のため自衛隊航空機等での車両・資機材の輸送等が円滑に行えるよう、平時から、関係機関相互の連携体制構築や連携訓練を実施すること 等

○自治体支援への対応として、

  • 支援者の活動環境の確保のため自治体の受援計画の作成など、受援体制構築を促進すること
  • 派遣職員の自活に備えた寝袋、食料等の装備品等を充実すること
  • 災害支援への移動型車両・コンテナ等の活用のため、災害時に活用可能なトレーラーハウス、ムービングハウス、コンテナハウス、トイレトレーラー、トイレカー、キッチンカー、ランドリーカー等について、平時から登録・データベース化する等、ニーズに応じて迅速に提供する仕組みを検討すること 等

○避難所運営、物資調達・輸送への対応として

  • 大規模災害時は、物資調達・輸送が平時のようにできず、プッシュ型支援が届く発災後3日目までは備蓄での対応が必要であり、市町村において指定避難所や物資拠点等に最低限必要な備蓄を確保するとともに、都道府県において市町村の備蓄状況を踏まえた広域的な備蓄を確保すべきこと
  • 避難所開設時からパーティションや段ボールベッド等を設置するなど、避難所開設時に対応すべき事項を整理し、指針やガイドラインに反映すべきこと
  • 断水や避難生活の長期化に伴う避難所環境の確保のため、国の公共工事で「快適トイレ」を標準化していくとともに、災害時に調達が容易にできる環境を整備すること、また高速道路会社のトイレカーを引き続き活用するとともに、地方整備局等におけるトイレカーの導入等を検討すること、さらに、自治体による防災井戸等の分散型の生活用水確保を促進すべきこと 等

○横断的事項として、平時から専門ボランティア団体や中間支援組織であるNPO等との連携体制を構築しておく方策を検討すべきこと 等

について整理した。

なお、更なる検討が必要とした事項については、自治体、有識者等の参画を得て災害対応を総合的に検討するワーキンググループ(後述する「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループ」(令和6年6月~11月))に引き継ぐことで、更に検討を深化することとした。

くわえて、令和6年能登半島地震における一連の災害対応を振り返る中で浮かび上がった課題を乗り越えるための方策や、災害対応上有効と認められる新技術等を洗い出し、今後の初動対応・応急対策を強化するための措置等について別添資料として取りまとめたほか、今後、これらの新技術等の活用に向け、関係省庁による実装に向けた検討、カタログ化による自治体等での活用促進、課題・ニーズの提示による国や民間の技術開発等の推進などの取組を進めていくこととしており、カタログについては「令和6年能登半島地震を踏まえた有効な新技術 ~自治体等活用促進カタログ~」7として6月に公表した。

(2)令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループ報告書

今回の能登半島地震では、過去の災害の経験や教訓を生かして、迅速な災害応急物資のプッシュ型支援や大規模な対口支援が行われた。また、ドローンや衛星通信といった新技術が活用されたほか、各種情報共有システムの活用など災害対応のデジタル化が前進した。その一方で、山がちな半島という地理的特徴、高齢化の著しい地域という社会的特徴、元日の夕刻、厳冬期の発災という季節的特徴の下で発生したこともあり、災害対応上教訓とすべき様々な課題が明らかになった。

災害に強くしなやかな国づくりに向けては、今回の地震における災害対応を振り返ることで課題・教訓を整理し、南海トラフ地震や首都直下地震を始めとする、今後の地震災害における応急対策・生活支援対策に生かしていくことが極めて重要であり、このため令和6年6月21日に中央防災会議の防災対策実行会議の下に「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループ」を設置し、実際に今回の災害対応に関わられた様々な立場の関係者に参画いただきながら、検討に当たっては前述の自主点検レポートの内容も踏まえながら、各回テーマを設けて10回にわたり議論を重ね、応急対策や生活支援策の今後の方向性について検討を行い、その結果を「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」として同年11月に取りまとめ、公表した。

同報告書では、令和6年能登半島地震について、地震の概要、被害の概要、政府及び地方公共団体の主な対応等を整理した上で、今回の災害の特徴を踏まえた災害対応の方向性として、

緊急消防援助隊による被害状況確認のためのドローン活用
緊急消防援助隊による被害状況確認のためのドローン活用
ドローンによる土砂災害調査
ドローンによる土砂災害調査

○国民の防災意識の醸成

○各種計画の実効性の向上

○各種制度やマニュアルの整備・習熟、研修、訓練の実施

○防災DXの加速・新技術等の活用推進

といった防災対策強化により一層取り組んでいくことが必要不可欠とした上で、

○災害応急対応や応援体制の強化

○避難生活環境の整備等の被災者支援強化

NPOや民間企業等との連携の強化

○事前防災や事前の復興準備、復旧・復興支援の推進

といった能登半島地震の特徴を踏まえた新たな災害対応の強化にも取り組んでいくことが必要であるとされた。その上で、今般の災害における取組事例・課題、これらを踏まえた今後の災害対応の基本方針が次のとおり示された。

<1> 状況把握や進入・活動の困難性、孤立集落発生等の地理的特徴や社会的特徴を踏まえた災害応急対応や応援体制の強化

<2> 高齢化地域における災害関連死防止のための避難生活環境の整備等の被災者支援の強化

<3> 甚大な被害やリソース不足を踏まえたNPOや民間企業等との連携の強化

<4> 将来の人口動態等の社会的特徴を踏まえた事前防災や事前の復興準備、復旧・復興支援の推進

また、全国どこでも地震によって強い揺れに見舞われる可能性があるとともに、人口減少・少子高齢化の進行やニーズの多様化など社会形態が変化する中、南海トラフ地震等の大規模地震の切迫性も高まっており、ますます行政だけでは対応しきれない状況になってきていることから、より厳しい被害様相となることも想定し、防災対策を抜本的に強化し、あらゆる主体が総力戦で災害に臨む必要がある。そのため、国民は、地震は国内どこでも発生し得ることを正しく認識し、「自らの命は自らが守る」という意識の下、住宅の耐震化や家具の固定、携帯トイレや食料等の家庭での備蓄や災害時に地域での助け合いができるよう、地域で行われる訓練や準備等の取組に積極的に参加することが必要である。

福和ワーキンググループ主査から坂井内閣府特命担当大臣(防災)への報告書手交
福和ワーキンググループ主査から坂井内閣府特命担当大臣(防災)への報告書手交
令和6年度能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について【概要】
令和6年度能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について【概要】

6 令和6年能登半島地震に係る災害応急対応の自主点検レポート
https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/pdf/kensho_team_report.pdf

7 令和6年能登半島地震を踏まえた有効な新技術 ~自治体等活用促進カタログ~
https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/pdf/kensho_team_catalog.pdf


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