第1節 計画の主旨
地震に起因する災害は複雑多様である。火災の発生、建物の倒壊等の災害を予防し又は軽減するための対策、被災者の救出のための対策、避難地、避難路の設定及び生活保護のための措置等平常時の予防対策を定める。
第2節 火災の予防対策
東海地震発生時には、特に市街地における火災の同時多発が予想され、状況によっては大火災に進展する可能性があるところから、警戒宣言時にはもちろんのこと、日頃から火気その他出火危険のある物の取り扱いについて、管理状況等を整備し、応急対策を円滑に講ずる体制を確保する必要がある。
このため市、防災関係機関、事業所及び住民が一体となって火災予防の徹底を図るものとする。
1 消防機関における対策
(1) 危険物施設、少量危険物取扱所
「危険物製造所等の地震対策指針」により施設の安全向上の指導を行うとともに、関係事業所等を対象に地震防災応急計画の作成を指導し、警戒宣言時及び地震発生時における安全対策を徹底する。
また、市危険物安全協会の自主活動による普及徹底を図る。
(2) 不特定多数の者を収容する施設について
劇場、百貨店、雑居ビル、地下街、旅館等の不特定多数の人を収容する施設における出火防止対策について、研修会等を開催し、立入り検査によって個別指導を実施する。
(3) 雑居ビル、地下街等の都市ガス対策について
雑居ビル及び地下街等における点検の強化、ガス漏れ警報設備の設置、通報体制の整備、ガスしゃ断装置等を指導する。
(4) 病院等、災害弱者を収容する施設について
病院等、災害弱者を収容する施設における出火防止対策について、講習会や立入検査によって徹底指導する。
2 一般家庭等における対策
(1) 燃焼器具の対策
ア 石油ストーブ:対震自動しゃ断装置付き以外のものは使用しない。
イ 液体燃料器具:不使用時は、石油タンクの元バルブを閉止するとともに、タンク転倒防止のため固定の措置を講ずる。
ウ LPガス:不使用時は、LPガス容器の容器バルブを閉止するとともに、鎖等により容器の転倒防止のための措置を講ずる。
エ 都市ガス:不使用時は、元バルブを閉止する。
(2) 出火危険のある次の物品については、その保管場所を考慮し、転落、転倒、漏えい防止措置を講ずる。
缶入り灯油、ベンジン、エアゾール、卓上コンロ用ボンベ、アルコール(消毒用、燃料用)、ガソリン、塗料溶剤、農薬類等
(3) 住宅用防災機器を設置するよう指導し、一般家庭からの出火防止対策を図る。
3 工場、事業所等における対策
工場、事業所等において地震防災応急計画を作成する者は、その計画に基づき対策を講ずるほか、協会等の指針に基づき対策を講ずるものとする。またその他の工場、事業所等については、それぞれの計画に基づき対策を講ずるものとする。
第3節 建築物等の耐震対策
1 建築主等が行う耐震対策
(1) 軟弱地盤対策及び瓦等の落下物対策を講ずる。
(2) 所有する建築物等の耐震性を判断し、必要な措置を講ずる。
2 市が行う耐震対策
(1) 市民向けの「建築相談窓口」を設置する。
(2) 自主防災組織活動等と連携して耐震補強等の説明会等を実施する。
(3) 収容避難所等となる公共建築物の耐震診断及び耐震補強を促進する。
(4) 緊急輸送路、避難路及び避難地沿い建築物の看板及び外装材の落下防止指導並びにブロック塀の調査及び改善を促進する。
3 建築主、建築設計者等への啓発
(1) 新築建築物
「静岡県建築構造設計指針」、「建築設備の地震対策指針」等による設計、工事監理等の徹底を指導する。
(2) 既存建築物
ア 「わが家の耐震診断と補強」、「木造住宅の耐震診断基準及び改修設計指針」、「大規模木造建築物の耐震診断基準及び改修設計指針」、「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準、改修設計指針」、「静岡県建築構造設計指針」等による耐震診断及び耐震補強を促進する。
イ 県指針等を踏まえて、木造住宅所有の市職員は自己耐震診断を実施し、併せて耐震診断結果を踏まえた精密診断又は補強等所要の措置を行う。
(3) 建築設備
「建築設備の地震対策指針」等による既存の電気設備、空調設備、給排水設備等の耐震診断及び耐震補強を促進する。
4 被災建築物等に対する安全対策
市は、「静岡県地震対策推進条例」に基づき、応急危険度判定を円滑に実施するための体制を整備するとともに、住民に対する啓発を行う。
5 コンピュータの安全対策
本市は、自ら保有するコンピュータ・システムについて、「行政情報システムの安全対策に関するガイドライン」などの各種安全対策基準に基づき、引き続き所要の対策を推進するとともに、コンピュータを扱う企業に対し、安全対策の実施についての啓発を行う。
6 家具等の転倒防止
タンス、食器棚、ピアノ、オルガン、テレビ、冷蔵庫等の転倒による事故防止のため県の指導基準「わが家の耐震診断と補強」「家具の地震対策」に基づき、市民に対する啓発指導を行う。
市は、家庭等の転倒防止対策に関し、以下の対応を行う。
(1) 市民に対し、防災座談会の実施等を通じ、必要な指導・助言を行う。
(2) 要援護者を対象に、家具転倒防止器具を配付する。
(3) 「家具固定推進事業」の促進に努める。
7 ガラスの飛散防止
学校、保育園、集会場など多数の人が出入りする施設、及び不特定多数の人が通行する市街地の道路等に面する建築物のガラス及び家庭内のガラス戸、戸棚等の安全対策の実施を指導する。
第4節 危険地区における災害の予防
市は、県が定める東海地震対策「避難計画策定指針」に基づき、避難地及び幹線避難路を設定する。
1 避難計画の策定
(1) 要避難地区の指定
ア 静岡市の行政区域を要避難地区と任意避難地区に類別し「東海地震の危険度の試算」等による地震災害の危険度から判断して、地震防災強化計画において明らかにした津波の浸水、山、崖崩れ及び延焼火災の発生の危険が予想され、避難対策を推進する必要がある地区を要避難地区として指定する。
要避難地区には一次避難地、広域避難地、幹線避難路を設定する。
イ 任意避難地区は、比較的安全で住民の任意の判断により対処することを原則とする地区であるが、住民等の安全確保を図るため、一次避難地、広域避難地を設ける。
ウ 要避難地区に係る一次避難地、広域避難地及び任意避難地区の一次避雑地、広域避難地は情報の伝達、救護等のための防災拠点を兼ねる。
(2) 避難対象地区の指定
市は、警戒宣言発令時に避難の勧告、指示の対象とする地域として要避難地区のうち、延焼火災の危険が予想される地域を除く津波の浸水及び山、崖崩れの発生の危険が予想される地域を避難対象地区として指定する。
(3) 避難地、避難路の指定
市は、要避難地区の状況に応じ、住民の避難のための避難地、避難路等の指定を行う。
ア 避難対象地区の住民の避難のため、避難地を指定する。
イ 延焼火災発生時における避難のため、広域避難地、幹線避難路を指定する。また必要に応じて一次避難地を指定する。
(4) 要避難地区に係る施設
ア 広域避難地
地震発生後、市街地の火災等から避難者の生命を保護するものであり、かつ、防災倉庫、生命の安全確保が可能な場所とし、防災資機材、仮医療救護所等の設置により援護、情報活動等の拠点として機能し得る場所とする。
イ 一次避難地
要避難地区において広域避難地に到達するまでの間の中継拠点に位置づけ、かつ、避難に伴う不安や混乱を防ぎ、住民の避難誘導、情報伝達及び防災倉庫、仮医療救護所等の設置による援護活動を行う場所とする。
任意避難地区としては、住家の耐震性が乏しく、かつ、付近に安全な空地が確保できない場合に対処するための避難地として位置づける。
ウ 拠点避難地
拠点避難地は、災害に対し安全な小学校(防災資機材・日用品及び非常食並びに医薬材料の分散備蓄)を対象とし、市及び自主防災組織が地域内の情報伝達、応急救護活動(医療救護所設置)、緊急物資の搬送等の活動を行う地域の防災活動拠点として位置づける。
エ 収容避難所
災害により居住場所を確保できなくなった者を収容し、かつ、救護、復旧等の活動を行うための拠点となる施設をいう。
オ 要援護者等収容避難所
収容避難所において日常生活を送ることが困難と認められる高齢者・障害者等、特別の配慮を要する者を収容する施設をいう。
カ 幹線避難路
一次避難地から広域避難地へ、住民等を安全かつ迅速に避難させるための道路とする。なお、一次避難地までの経路は、住民の任意の判断又は自主防災組織ごとに定める。
(5) 市街地農地の活用等
あらかじめ所有者の同意を得た市街地農地等を「防災協力農地等」として位置づけ、避難のための集合所、仮設住宅建設用地、救援物資置場、復旧資材置場として活用する。
2 平常時の実施する災害予防措置
(1) 市は、要避難地区の住民に対し、危害の様相、情報伝達手段、情報伝達内容、避難地、避難路施設等、避難に関する留意すべき事項を周知する。
(2) 要避難地区のうち、山、崖崩れ危険予想地域については、次の予防措置を講ずる。
ア 市は県と協力して、過去の山、崖崩れ災害実例及び現況調査等を参考に、山、崖崩れ危険予想地域図を作製し、住民に適切な方法で広報するとともに、危険箇所について巡回監視に努める。
イ 市は地域の実情に即した方法により、当該地域を避難対象地区として指定するとともに、当該地域の住民に対しその危険性の周知に努める。
ウ 警戒宣言が発令された場合には、市からの指示を受けるまでもなく、直ちに危険箇所から離れ避難地等地域の実情に応じ、住民のとるべき行動について周知徹底に努める。
エ 市は、当該地域において立っていられないほどの強い地震が起こった場合には、即刻危険箇所から離れ、避難施設や避難地へ避難する等、地域の実情に応じ住民のとるべき行動について周知徹底に努める。(3) 要避難地区のうち、津波危険予想地域については、次の予防設置を講ずる。
市は、該当地域の住民に対して、立っていられないほど強い地震が起こった場合又は弱い地震であっても長い時間ゆっくりとした揺れを感じた場合には、指示を受けるまでもなく直ちに海岸から離れ、津波避難ビル、高台又は避難地等へ避難する等、住民のとるべき行動について周知徹底に努める。
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