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阪神・淡路大震災教訓情報資料集阪神・淡路大震災教訓情報資料集の概要

はじめに

 地震後5年を経ても、被災地の復旧・復興、被災者の生活再建にはまだ多くの課題があり、震災は続いている。大災害の直後には、さまざまな議論がなされ、当面の対応策が進められる。しかし、この時期には、災害の全体像のデータが必ずしも十分ではなく、誤った状況認識、部分的事実のみに基づく議論などもしばしばなされる。また、感情論や単なる行政批判にすぎない意見も多い。
  災害の長期的影響の実態も踏まえて、発災後に発生した事態・対応・課題を再度整理・記録することで、今後、引き続き検討されるべき課題を明らかにし、議論を深める必要がある。
  「阪神・淡路大震災の教訓情報分析・活用調査」は、阪神・淡路大震災に係る初動、緊急・応急復旧から本格的な復興に至る既存情報の収集・分析を行うことにより、今後の中央・地方の防災対策の検討に際して参考となる情報を体系的に見いだし、情報発信することを目的として実施したものである。

(平成11年度「阪神・淡路大震災の教訓情報分析・活用調査報告書」より)

教訓情報の編集方針

 災害から教訓を得て今後に活かすためには、まず、実際にどのような事態が発生し、それに対してどのような対応がとられたのか、また、どのような課題があったのか等について把握し、理解することが必要である。
  一方、阪神・淡路大震災については、これまでに発災対応から復旧・復興に携わった公的機関や防災専門家をはじめジャーナリスト等のマスコミ関係者、あるいは被災者自らが多分野にわたりさまざなま情報を文献のかたちで発信している。そうした文献の数は10,000点を優に超えると言われている。
  本事業では、「震災によって発生した事態」、「それに対する対応」、「その事態や対応における課題」を教訓情報として関連文献から収集し、これらを理解しやすいかたちで整理し、とりまとめることとした。教訓情報は、客観性を極力保持する観点から、文献の該当記述部分又はその要約をベースとしてとりまとめたものである。その際、一つの項目に関してさまざまな観点から教訓情報を浮かび上がらせるように努めた。

 具体的な編集方針は以下のとおりである。

(1)教訓情報のとりまとめの範囲は、発災から復興に至る過程全般を対象とする。
(2)教訓情報は、公的記録(誌)、学術論文、専門雑誌、一般雑誌、一般書、新聞その他の文献の形をとっているものから収集する。
(3)教訓情報は次の例に示す、教訓項目−教訓詳述−文献引用又は要約からなる3層の階層式にとりまとめる。

階層式の記述例
階層 記述例
教訓情報(大項目) 1.第1期・初動対応(地震発生後初期72時間を中心として)
教訓情報(中項目) 1-02.初動体制
教訓情報(小項目) 【01】通信途絶
教訓情報 01.地震による加入者ケーブル損傷、停電による交換機ダウンなどにより、兵庫県南部地域の全回線の約2割の電話回線が使用不能となった。
教訓情報詳述 01) NTTでは、長距離系通信システムは影響を受けなかったが、各家庭と電話局を結ぶ加入回線(電話線)に大きな被害があったほか、外部電力喪失とバックアップ電源の倒壊による停電等で交換機が稼働できず、兵庫県南部地域の28万5千回線が被災した。
参考文献 ◇[参考] 兵庫県南部地方の全回線の約2割に及ぶ計28万5千の加入回線が被災した。[神戸大学工学部建設学科土木系教室 兵庫県南部地震学術調査団『神戸大学工学部兵庫県南部地震緊急被害調査報告書(第2報)』(1995/3),p.142]
◇[参考] NTTの通信施設被害の概況については、[『ライフライン地震防災シンポジウム 阪神・淡路大震災に学ぶ』関西ライフライン研究会(1997/6),p.230-237]にある。
◇[参考] NTTの被害全般については、[阪神・淡路大震災調査報告編集委員会『阪神・淡路大震災調査報告 ライフライン施設の被害と復旧』(社)土木学会(1997/9),p.468-470]にもまとめられている。これによると、交換機における商用電源停止・予備電源損壊などにより約30万回線の交換機能が停止、さらに加入者ケーブルの損傷により約20万回線のサービスが中断したとされる。
◆[引用] 例えば神戸市内の8局のNTT交換所では、施設被害は軽微であったものの商用電源の途絶とバッテリの倒壊や過放電が重なり、28.5万の加入回線が被災した。移動電源車による応急的な電源供給が確立されるまで、最長約30時間の通信機能マヒの原因となった。[阪神・淡路大震災調査報告編集委員会『阪神・淡路大震災調査報告 都市安全システムの機能と体制』土木学会・地盤工学学会・日本機械学会・日本建築学会・日本地震学会(1999/6),p.272]

◇は原文献の抄訳・紹介、◆は原文献からの引用をそれぞれ意味する。

(4)教訓情報は、大きく4つの発災後の時期区分に分け、更に適宜中区分及び小区分を設けて整理する。具体的区分は次のとおり。

教訓情報の全体構成
第1期 初動対応(地震発生後初期72時間)
  1. 被害発生
    1. 地震動と地質・地盤
    2. 人的被害
    3. 建築物の被害
    4. 火災の発生と延焼拡大
    5. 道路・鉄道・ライフラインの被害
    6. 港湾・河川・産業施設の被害
  2. 初動体制
    1. 通信途絶
    2. 自治体の非常参集・災害対策本部
    3. 政府および国の防災関係機関の初動
    4. 各種マスコミ・メディア等の対応
  3. 被災者行動
    1. 避難行動
    2. 避難所の開設
  4. 救助・救急医療
    1. 救出・救助
    2. 被災地医療機関
    3. 病院間連携・患者搬送
    4. 諸外国からの救援
  5. 火災対応
    1. 状況把握・部隊運用の決定
    2. 消防要員の確保と消防隊の出動
    3. 消防施設・資機材と水利の確保
    4. 広域応援
    5. 市民・関連組織の消防協力
  6. 緊急輸送
    1. 道路交通
    2. ヘリコプター輸送
    3. 海上輸送
  7. 緊急食糧・物資調達と配給
    1. 必要量の把握と調達
    2. 輸送網・輸送手段
    3. 物資の受入と仕分け、配送
    4. 避難所の物資調達と配給
  8. 保健衛生
    1. 遺体対応
    2. トイレの確保とし尿処理
  9. ライフライン関係の緊急対応
    1. 通信事業者の対応
    2. 電力事業者の緊急対応
    3. ガス事業者の緊急対応
    4. 水道事業者の緊急対応
  10. 企業の緊急対応
    1. 被害把握と緊急措置
    2. 社会貢献、地域貢献
  11. 二次災害・被害拡大防止
    1. 避難勧告
    2. 被災建築物の応急危険度判定
    3. 土砂災害、河川堤防等への対応
    4. 治安・金融維持対策
第2期 被災地応急対応(地震発生後4日~3週間)
  1. 避難所の運営と管理
    1. 避難所の運営
    2. 避難所の生活環境
    3. 避難所間・避難所内外の格差
  2. 被災生活の支援・平常化
    1. 食糧・物資供給体制の再構築
    2. 災害時要援護者への対応
    3. 被災者への生活情報の提供
  3. 被害把握・り災証明
    1. 被害調査
    2. り災証明書の発行
  1. ボランティア
    1. ボランティアの種類・活動内容
    2. ボランティアの受入・組織化
    3. ボランティアの問題点
  2. 都市基盤・サービスの復旧
    1. 上水道の復旧
    2. 下水道の復旧
    3. 電力の復旧
    4. ガスの復旧
    5. 電話の復旧
    6. 道路交通規制と道路復旧
    7. 鉄道の復旧
    8. 港湾施設の復旧と船舶利用
    9. 震災ゴミの処理
    10. 歴史遺産・文化施設等の復旧
    11. 測量基準点の復旧と地形図の修正・提供
    12. 学校教育の再開
第3期 本格的復旧・復興始動期(地震発生後4週間~6ヶ月)
  1. 避難所解消と応急住宅の提供
    1. 避難所の長期化
    2. 避難所の解消
    3. 公的住宅等の一時提供
    4. 応急仮設住宅の供給体制
    5. 応急仮設住宅の建設・入居
  2. 住宅と生活の再建
    1. 住宅の補修
    2. 住宅の再建
    3. 各種住宅再建支援策
    4. 義援金
    5. 公的支給・貸付制度
    6. 復興基金
  3. 復興計画の策定と計画的市街地復興
    1. 復興への国・政府の取り組み
    2. 自治体の復興計画づくりと体制
    3. 復興都市計画の決定
    4. まちづくりの始動
  4. 被災建物の解体とガレキ処理
    1. 公費負担での解体撤去・受付
    2. 災害廃棄物の処理・処分
    3. 環境対策の実施
  5. 産業の復旧・復興
    1. 産業被害と金融面の対応
    2. 製造業・地場産業
    3. 商業・小売業・観光等
    4. 港湾と貿易
第3期以降も続く課題(地震発生後6ヶ月以降)
  1. 生活の再建
    1. 仮設住宅の生活と支援
    2. 民間住宅の再建・供給
    3. 災害公営住宅の供給
    4. 恒久住宅への移行措置
    5. 雇用の確保
    6. 市外・県外被災者対応
    7. 心のケア
    8. 市民生活
  2. 産業・都市の再生
    1. 人口の回復
    2. 第2段階都市計画
    3. まちづくり
    4. 産業・経済の再生
    5. 自治体財政

(5)震災後に教訓を踏まえて講じられた防災対策については、教訓情報をとりまとめることを目的としているため、とりあげていない。

 発生した事態をもとにさまざまな対処方策が提案されているが、これをそのまま教訓とするには問題があると考えられる。対応方策については、必ずしも「正解」があるわけではなく、加えて阪神・淡路大震災は1つの災害事例であり、このことのみから普遍的な教訓を示すことはできない。一方、対応方策を検討するためには、実際にどのような状況、課題が発生したのかということが最も重要な情報であり、そうした事態の発生も踏まえて総合的な観点からの防災対策を検討することが必要と考えられる。こうしたことを勘案し、本調査では、原則として「課題とされた発生事態」、「対応の実態」を記述することを編集方針とした。つまり、「課題とされた発生事態」、「対応の実態」そのものを教訓情報ととらえ、それぞれの社会的背景に合わせた「教訓」を読みとって活かすことについては、読者に任せることとした。ただし、例えば「ヘリ消火」の是非についての問題のように、震災後にさまざまな議論がなされた課題については、「~などが指摘された。」と、議論の経過や対応の方向性を記載している部分もある。また、課題とされた事態に対しては、さまざまな震災後に対応された対策(今後の災害に向けた対策)が図られているものもある。それらは重要な情報ではあるが、その収集・整理は本調査の範囲を超えるため、記述していない。

調査の進め方

 本調査は、(財)都市防災研究所が学識経験者、行政関係者等により構成される調査委員会を設置し、その指導・助言を受けて実施した。また、調査の実施にあたり、(財)都市防災研究所のもとに地域安全学会のメンバー等で構成される委員会、ワーキンググループを編成し、作業を進めた。

「阪神・淡路大震災の教訓情報分析・活用調査」委員会
(所属・役職はいずれも当時)
委員長 伊藤 滋 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
委員 塚越 功 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
小出 治 東京大学工学部都市工学科教授
濱田政則 早稲田大学理工学部土木工学科教授
廣井 脩 東京大学社会情報研究所教授
室崎益輝 神戸大学都市安全研究センター教授
編集委員 熊谷良雄 筑波大学社会工学系教授
小出 治 東京大学工学部都市工学科教授
塚越 功 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
中林一樹 東京都立大学都市研究所大学院都市科学研究科教授
濱田政則 早稲田大学理工学部土木工学科教授
平井邦彦 長岡造形大学造形学部環境デザイン学科教授
廣井 脩 東京大学社会情報研究所教授
村上雅也 千葉大学工学部デザイン工学科建築構造設計講座教授
室崎益輝 神戸大学都市安全研究センター教授
目黒公郎 東京大学生産技術研究所国際災害軽減工学研究センター助教授
オブザーバ・関係機関 大木健一 総理府阪神・淡路復興対策本部事務局上席局員
斎藤富雄 兵庫県防災監
安藤嘉茂 神戸市建設局長
町本欣信 (財)阪神・淡路大震災記念協会専務理事

事務局 内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(災害復旧・復興担当) 〒100-8972 東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 中央合同庁舎5号館 (電話)03-3501-5191(直通)
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(財)都市防災研究所 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-17-1 第5森ビル2F (電話)03-3595-1545

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