阪神・淡路大震災教訓情報資料集【02】災害時要援護者への対応

教訓情報資料集

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  • 2.第2期・被災地応急対応(地震発生後4日~3週間)
    • 2-02.被災生活の支援・平常化
      • 【02】災害時要援護者への対応
        • 01.福祉担当職員が震災対応業務に追われ、在宅高齢者などの安否確認は困難だった。このため、在宅者の状況を把握するためのローラー作戦が実施された。
          • 01) 震災直後から、各自治体の福祉担当部署は遺体対応などの震災対応業務に追われ、在宅援護者などの安否確認・状況把握は困難だった。
          • 02) 一部では、比較的早期から、ボランティアなどの協力を得つつ、避難所や在宅の要援護者の生活状況に関する調査が行われた。
          • 03) 2月半ばには、県が被災市町に対して「要援護者生活状況把握ローラー作戦」を実施するよう呼びかけて実施され、3月末までに2,875件の要措置者が把握された。
        • 02.在宅、あるいは避難所で衰弱した高齢者は、緊急入所やショートステイによって老人福祉施設等で介護された。
          • 01) 1月20日、厚生省は各都道府県・指定都市に対して、緊急一時入所措置等の弾力的な取扱について通知が出され、定員枠の超過や事務手続き簡略化などが認められた。
          • 02) 2月5日、神戸市長田区では、「高齢者ケアセンターながた」を中心に組織された「ながた支援ネットワーク」により、長田在宅福祉センターに高齢者専用避難所が設置され、延べ26人の高齢者が保護された。
          • 03) 援護の必要な高齢者に対しては、老人ホームへの緊急ショートステイ、国民宿舎等公共施設を利用した二次避難所への緊急入所が行われた。
          • 04) 一時入所をする高齢者の中には、当初は住み慣れた自宅近くから離れることをいやがり、施設入所を拒否する高齢者もいた。
          • 05)  3月時点で、緊急一時入所した高齢者の約3分の1が引き続き入所を希望したため、定員の10%等を限度に定員外措置をとって入所措置をとった。
        • 03.高齢者の間では、従来もっていた慢性疾患の悪化、ストレスや生活環境の悪化による疾患の増加が起こった。これらによる死亡等は、震災関連死として位置づけられた。
          • 01) 震災から数日たつと、特に高齢者の間で、胃潰瘍などのストレス病、心血管系疾患、高血圧や肺炎などの呼吸器系感染症が増加し、「震災後関連疾患」と呼ばれた。
          • 02) 「震災後関連疾患」による死亡は数百~千名とも言われ、その多くは各自治体により「震災関連死」として位置づけられた。(→「第1期 初動対応,I.被害発生,B.人的被害」参照)
        • 04.外国人は、情報入手や避難所生活、高額医療費負担など様々な面で苦労も多かった。不法就労者に対する特例措置、外国人支援ボランティアなどの対応がはかられた。
          • 01) 外国人に対する情報提供の不足が指摘され、外国語の情報誌発行、外国語での生活相談などが行われた。
          • 02) 震災前からの居住が確認されれば、外国人に対してもり災証明等が発行されたが、観光ビザなどによる不法就労者、在留期限切れの外国人は対象外だった。
          • 03) 不法就労者に対する配慮として、県警本部に設けられた外国人相談窓口では身分証明を求めず、また不法滞在者のうち帰国希望者には領事館等を通じて合法的出国が可能となるよう取り計らわれた。
          • 04) 外国人死傷者の中には、健康保険に加入していないため高額医療費が自己負担となった例もある。医療機関が回収不能になった場合には「阪神・淡路大震災復興基金」より補助を行うという措置がとられた。
          • 05) 外国人の支援に携わる人材が震災前から県内におり、さらに関東から支援に駆けつけた人々の存在が、外国人被災者の支援活動を可能にした。▼
          • 06) 外国人団体や外国人学校は、国籍や民族の区別無しに被災者支援を行った。▼
          • 07) 一部の避難所では外国人に対する差別や暴力事件が起きた。▼
          • 08) 外国人の安否確認はボランティアらの手作業により行われた。▼
        • 05.視覚障害者にとっては、市街地の変容や慣れない避難所、仮設住宅により移動困難となった。また、避難所における詳細情報は張り出されることが多かったため、視覚障害者は情報入手が困難だったとも言われる。ト
          • 01) 視覚障害者は、市街地の変化、避難所・仮設住宅などの新しい生活により、認知地図の再構築が必要となり、移動は困難だった。
          • 02) 避難所での詳細情報は掲示板などだったため、地域の詳細な情報が得られず、避難先を変えたり自宅へ戻った障害者がいた。
          • 03) 視覚障害者向けに生活情報を載せた点字新聞が発行され、無料で配布された。
            • 06.聴覚障害者は、音声による情報が入手困難だった。これに対して、手話通訳放送や文字放送、手話通訳配置、ファックスによる情報提供などが行われた。
              • 01) 避難所では、初期の情報伝達がほとんど音声情報だったため、聴覚障害者は物資配給などの情報を得ることが困難だった。
              • 02) 聴覚障害者の多くは、避難所へ避難せず、友人・親戚宅などへ避難したとも言われている。
              • 03) 聴覚障害者に対する支援として、手話ニュースの放送や、相談窓口への手話通訳者の配置、ファックスによる情報提供などが行われた。
                • 07.肢体障害者の場合には、避難もままならず、また避難所や仮設住宅での車椅子生活にも困難があった。
                  • 01) 車椅子利用者は避難そのものが困難だった。また避難所となった学校などは、階段や段差が多く仮設トイレが狭いなど、車椅子利用者などは利用しにくかった。
                  • 02) 身体障害者は、エレベータ停止による水汲み等の困難、自宅屋根等の修理困難、仮設住宅申込みなど一連の手続き困難などを訴えた。
                    • 08.精神障害者・知的障害者は、環境の激変への対応が困難だった。精神科救護所の設置などの対応がはかられた。
                      • 01) 精神障害者のうち特に通院患者は、通院先医療機関が被害を受けたことなどにより、薬の確保に困難が生じ、また震災や避難所生活による急性ストレス反応を示す者もいた。
                      • 02) 知的障害者・児は、震災による環境変化が大きなストレスとなった。
                      • 03) 震災直後から精神病院への入院患者は増加し、特に避難所からの入院者が増加した。
                      • 04) 1月22日から、被災地内の保健所に計10カ所の精神科救護所が開設され、また夜間対応窓口の設置、夜間往診チームの配置などが行われた。
                      • 05) 精神科救護対策は、既存の関係者のネットワークの存在により、直後から稼働することができた。▼
                      • 06) 精神科救護所は、もともとの精神障害者への医療提供を目指したが、結果的に被災者の反応性の症状(不眠、不安、恐怖あるいはPTSD症状など)を多数扱った。▼
                      • 07) 精神科救護所は3月末まで設置されたが、地域によってはさらに継続された。▼
                      • 08) 精神科救護活動には、コーディネーターの存在が強く求められた。精神科以外の問題への対応、避難所管理者等へのコンサルテーション等も重要な機能となった。▼
                    • 09. 1月22日、兵庫県福祉センターに「障害者支援センター」が開設され、障害者への対応が図られた。障害者のため、施設への緊急入所(二次避難所)なども行われた。
                      • 01) 1月22日、兵庫県福祉センターに障害者施設・団体等で構成された「障害者支援センター」が開設され、養護施設被災状況の訪問調査、避難所訪問、地域ローラー活動、電話相談などにより障害者ニーズが把握された。
                      • 02) 障害者のため、障害者施設への緊急入所も行われたり、二次避難所が開設されたりした。
                    • 10.各社会福祉施設においても、入所者への緊急対応とともに、施設の復旧活動、被災者の受け入れ等の対応に追われた。★
                      • 01) 高齢者や心身障害者の福祉施設でも、入所者への対応や、避難所としての対応を行った。★
                      • 02) 保育所は、直ちに休所措置を取った。一方、避難所としての対応、緊急仮入所、仮設・臨時保育室の設置等の対応を実施した。★
                      • 03) 建物の被害は比較的軽微であり、災害時の要援護者の保護、福祉活動拠点として優れていることが明らかになった。▼
                    • 11.被災した子どもたちへの様々な支援が行われた。▼
                      • 01) 支援グループが保護や支援を必要とする遺児を探すために、多大な時間を要すこととなった。▼
                      • 02) 被災児童の一時保育が行われたが、調整が上手くいかないケースもあった。▼
                    • 12.難病患者は治療の継続が大きな課題となり、関係者を中心に支援が行われた。▼
                      • 01) 透析患者は、受け入れられる医療機関を探すことに苦労した。日頃と異なる医療機関では、日頃の治療内容がわからない患者への対応が問題となった。▼
                      • 02) 慢性疾患患者に対し、医療機関や在宅療法資機材業者等が支援を行った例がある。▼

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