阪神・淡路大震災教訓情報資料集【02】被災地医療機関

教訓情報資料集

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  • 1.第1期・初動対応(初動72時間を中心として)
    • 1-04.救助・救急医療
      • 【02】被災地医療機関
        • 01.多くの医療施設が建物被害を受けたほか、建物被害を免れた医療機関も、ライフラインの寸断や医療機器破損などにより、医療機能は大きく低下した。
          • 01) 兵庫県下で4病院、101診療所が全壊又は焼失するなど、阪神地域では、多くの医療機関が建物被害を受けた。
          • 02) 建物被害が小さかった医療機関における機能低下の原因としては、水道、電気やガス、電話などライフラインの寸断が大きかった。
          • 03) 断水により、水の調達(特に、透析用に用いる大量の水の確保)に苦慮した医療機関が多かった。
          • 04) 断水の影響には、医療用水のほか、ボイラー用水や、コンプレッサー・自家用発電機等の冷却水が得られないという面もあった。
          • 05) 停電により、明かりに不自由しながらの診察・治療が行われ、手動の人工呼吸器を押し続ける姿も見られた。
          • 06) 都市ガスの供給停止により、入院患者の食事提供に影響があった病院もある。
          • 07) 医療機器の被害としては、X線撮影装置、MRIなど高度医療機器の被害が大きかった。
          • 08) 医師等医療スタッフの出勤状況は、病院医師60%弱、診療所医師65%などとされ、特に病院ではかなりの部門の診療が震災当日から可能だった。
          • 09) 兵庫県下随一の3次救急医療機関である神戸市立中央市民病院は、市街地と島を結ぶ神戸大橋の不通により震災直後の救急患者の受け入れがあまりできなかった。
          • 10) 地震発生直後は、職員も少なく、入院患者を避難させることが困難な状況であった。▲
          • 11) 被災地の医療機関は、自然発生的に避難所の機能を果さなければならなくなった。▲
          • 12) 県庁の救急医療情報システムがダウンし、医療機関情報が把握できなくなった。▼
          • 13) 医療機関と医療従事者の災害時の役割についての認識不足が指摘されている。▼
        • 02.救出現場など病院外でのトリアージ(患者選別)がほとんど行われなかったため、医療機関には死者や軽傷者、重傷者などの患者が選別されずに殺到した。
          • 01) 負傷者の大部分は、市民の手によって、日ごろから救急患者を受け入れている医療機関に運ばれた。
          • 02) 被害の大きかった地域の病院で大量の患者が殺到して大混乱となった。
          • 03) 患者が一部の医療機関に集中し、少し離れたところでは比較的少なかった例もあった。
          • 04) 患者集中の理由としては、市民自らが最寄りの救急病院に殺到したほか、医療機関に関する情報が伝達されにくかったこともある。
          • 05) 医療機関に運び込まれた患者が圧死者と治療可能な負傷者に二分されており、集中治療の必要な患者は比較的少なかったことから、災害現場でのトリアージの必要性に関する指摘がなされた。
          • 06) 神戸市内の各消防署を応急救護所とし、重傷者が連れてこられた場合にのみ病院に搬送する対応が行われた。▼
        • 03.患者の殺到した医療機関では、医師等によって慣れないトリアージ(患者選別)が行われた。
          • 01) 大量の死傷者が殺到した病院では、医師等によってトリアージ(患者選別)が行われた。
          • 02) トリアージの重要性はわかっても、被災者・遺族の前でそれを実行に移すことは難しい場面もあった。
        • 04.挫滅症候群(クラッシュシンドローム)が発生したが、救急医療関係者以外にはあまり知られておらず、適切な対処がとられなかった例もあった。
          • 01) 厚生省研究班の調査によると、挫滅症候群の患者は372例、うち50例(13%)が死亡したとされている。
          • 02) 一般医療関係者には挫滅症候群の危険性が周知されていなかったため、初期段階の全身症状が良いために見過ごされ、治療が遅れた例もあったと言われる。
        • 05.救護所など震災直後の医療体制の確立には、医療ボランティアの力も大きかったが、行政側との連携の重要性が指摘された。
          • 01) 震災直後は、救護所など公的な災害医療体制の整備はほとんど行われなかった。
          • 02) 震災初期の医療活動には、日赤やAMDAをはじめとする医療ボランティアも活躍した。
          • 03) 1月23日より、厚生省の現地対策本部が設置され、全国の自治体や国立病院、大学病院からの医療支援チームの派遣先などが一元的に管理されるようになり、常設救護所が増設された。
          • 04) 行政から医療ボランティアへの情報、活動拠点の提供など、行政とボランティアの連携の必要性が指摘された。
          • 05) 被災地に派遣される医療救護班の役割について、疑問の声もあった。▼
            • 06.被災地内の診療所が復旧するにつれて、域外からの医療ボランティアの撤退時期も問題となった。(→「第2期 被災地応急対応,IV.ボランティア,C.ボランティアの問題点」参照)
            • 07.災害時の歯科診療においても様々な課題が生じた。★
              • 01) 歯科は初期の救急医療にはあまり関わっておらず、また歯科口腔外科に係る重症例もこの震災では少なかった。★
              • 02) 歯科診療には大量の水を使用するため、上水道の復旧に左右され、復旧に時間がかかった。★
              • 03) 被災地の歯科医療需要は、被災者の約2%(1月21日時点)と予測され、巡回診療及び仮設診療所での診療が実施された。★
              • 04) 義歯の需要が増加し、ボランティアで即日義歯づくりが行われた。★
                • 08.医薬品の救護活動現場での不足、集積場所での管理、搬送等に問題が生じた。▼
                  • 01) 救援物資としての医薬品の取扱が問題となった。▼
                  • 02) 医薬品の管理、整理、分配には専門知識を持つ人材が必要であった。▼
                  • 03) 当初は医薬品が不足したが、まもなく充足し、最終的には大量に余ることとなった。▼
                  • 04) 医薬品卸業者も被災し、混乱したなかで、対応に追われた。▼
                  • 05) 向精神薬の取扱に際して、課題が指摘されている。▼

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