阪神・淡路大震災教訓情報資料集【03】建築物の被害

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  • 1.第1期・初動対応(初動72時間を中心として)
    • 1-01.被害発生
      • 【03】建築物の被害
        • 01.多数の建物が被災した。住宅被害の多さと、公共建物被害の多さが際だった。
          • 01) 建物被害(損壊・焼損計)は、住家約52万棟、非住家約5,800棟にのぼった。
          • 02) 行政の庁舎や学校など、公共建物被害の多さも際だち、全半壊した住宅以外の建物の15%が公共施設だった。安全性が確認できないままに避難所として使われているものも見られた。
          • 03) 病院、銀行、放送局等公共的に重要な建物が被災したり、機能に障害が出るなど、救援・援助や復旧に支障を来したものもある。
          • 04) 多くの歴史的建造物が被災し、優れた町並みの景観が失われた。
          • 05) 学校園施設の被害は、建物本体の被害は比較的軽微であったが、設備や天井などの被害で利用者の安全確保には問題が生じた。▲
          • 06) 被災直後に都市計画学会等により被災地全域の建築物被害調査が実施された。☆
          • 07) 淡路島では、北淡町の被害が著しく大きかった。☆
          • 08) 建築物、特に住宅の被害が、復旧/復興期の諸問題を引き起こした。▼
          • 09) この震災での地震動と被害データに基づいて構築された被害関数が、必ずしもほかの地震被害の特性を正確に推計するものではない、との指摘がある。●
          • 10) 2006年5月、消防庁は、再調査結果等に基づきこの震災の被害状況を確定した。住家の一部損壊棟数は大幅に増加した。●
        • 02.建物の被害は主として現行の建築基準法・同施行令の基準を満たしていない建物(既存不適格建物)に起こった。これらのうち特に老朽化した古い建物が崩壊などの甚大な被害を受けた。
          • 01) 被害は1981年以前の建物に大きく、現行の建築基準法・同施行令が改正された1981年を境として建物の耐震性に大きな差のあることがが指摘された。
          • 02) 1981年改正の新耐震設計以降に建築された建物の被害は少なかった。ただし、少数であるが大破したものがある。
          • 03) インナーシティでは、狭小な敷地の借家等が、権利関係の輻輳や家主の高齢化などによって建て替えが進まないまま、被害を受けた。
          • 04) インナーシティへの被害集中が指摘される一方で、芦屋市などの高所得層での被害も大きく、特定の居住者特性を有した地域だけが甚大な被害を受けたわけではないとの指摘もある。
          • 05) 地震被害を受けやすい脆弱な建物は、様々な理由から特定の場所に固まって立地しており、建物被害の総体が地域性と関連して現れてくる、との指摘がある。●
        • 03.比較的高層の建物での中間層の崩壊、鋼材の高速荷重下での脆性破壊など、これまで我が国では経験していない被害も発生した。
          • 01) 鉄筋コンクリート造建築物では、現行建築基準法・同施行令を満足していない、いわゆる既存不適格建物に被害が多かった。
          • 02) 全体的にピロティ構造と壁の配置の悪い構造の建築に崩壊したものが多く、これらの中には現行法に適合している建物もあった。
          • 03) 鉄骨鉄筋コンクリート造構造物では、中間層の崩壊というこれまで経験していない被害が多数発生した。
          • 04) 鉄骨造建築物では、ペンシルビル等の柱の脚部被害が目立ち、欠陥溶接が被害を拡大させたとの指摘もある。従来の災害では見られなかった被害として、柱・梁接合部、母材の破壊などが見られた。また新たな被害原因として鋼材の高速荷重下での脆性破壊が指摘された。
          • 05) 基礎構造の被害は、直接基礎のものは少なく、杭基礎(特に既製の支持杭)に多い。場所打ち杭は調査が特に困難のためか調査事例が少ない。被害は、基礎、基礎梁、杭に見られる。被害原因としては、液状化、側方流動、がけ崩れ、過大な地震力などが挙げられている。
        • 04.木造建物は、断層からの距離が6-7km程度の範囲で大きな被害が出ており、古い構法で建てられた在来構法の建物に被害が発生。老朽による性能劣化が被害を拡大させた。
          • 01) 木造建物の被害は、断層からの距離が6~7km程度以内の範囲で大きく、10kmを超えると被害は非常に少ない。
          • 02) 古い構法で建てられた在来構法の建物に被害が発生しており、蟻害、腐食など老朽による劣化が被害を拡大させた。
          • 03) 木造住宅の中では、アパート、長屋の被害が大きく、関西地方に特有の「文化住宅」が大きな被害を受けた。
          • 04) 地域固有の家屋構造の問題として、台風対策として屋根に土をのせる屋根葺きが主として取り入れられてきたことも原因の一つと指摘された。
          • 05) ツーバイフォー、プレハブ工法の住宅の被害は少なかった。その原因については、これらの住宅が新しいためであるとの見方もあるが、むしろ厳格な設計基準があるためとされている。
          • 06) 住宅金融公庫の融資物件であった住宅の被害が少なかったことから、工事監理の重要性が改めて指摘された。
          • 07) 倒壊の最大の原因は、住宅の持続的な補修や新陳代謝が行なわれていない、との指摘がある。●
        • 05.その他の被害原因としては、液状化や崖崩れ等の地盤に起因する被害や、施工不良による被害も指摘された。
          • 01) 液状化や崖崩れ等の地盤に起因するものも多く、特に大阪市域における被害はほとんどが液状化によるものであった。西宮市の百合野や仁川では斜面崩壊による住宅の被害が見られた。
          • 02) 手抜き工事・欠陥工事による施工不良も指摘されているが、これらについては十分な統計データが得られていない。
        • 06.建物内における各種設備にも多数の被害が発生した。設備被害のため、本体は被害の軽微な建築物でも機能しないという問題も発生した。
          • 01) 床上設置設備等では、固定が不完全なために設備本体の転倒・移動による被害が発生し、特に水槽や配管などの衛生設備に被害発生例が多かった。
          • 02) 近畿地区全体で約5,600台のエレベータに被害が発生し、閉じ込め件数も156件あった。新耐震基準に対応した対策の有効性が確認された一方で、一部には今後の対応の必要性も指摘されている。
          • 03) 蓄電池、自家用発電機の被害もあったが、本体には被害がなくとも冷却水不足などにより運転が継続できず機能を果たせなかった例も少なくないとされる。
          • 04) 建物自体の被災度の軽い場合でも、設備の被害やそれに伴う水損などにより建築物が機能しない例があった。
        • 07.建物内部における家具の転倒や天井落下が負傷者を出すとともに避難を困難にし、また、被害者は少なかったものの建物外装材やブロック塀など転倒物・落下物も多く発生した。
          • 01) 建物内部における家具・物品等の移動、転倒、飛散等や、屋根を含む天井の落下により負傷者が発生し、また人々の避難が困難となった。
          • 02) 建物の外装材の剥離、剥落も数多く発生したが、その分析結果からは、現行基準に準拠した設計、施工を行うことの重要性が確認された。
          • 03) ブロック塀の被害発生状況は過去の地震を上回るものであったが、被害は法令や学会の基準に適合していないものに集中していた。
          • 04) 路上における人的被害は少なかったものの、そのほとんどが即死であったことから、発災時刻によっては路上での家屋等の転倒や落下による被害の可能性があったと指摘されている。

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