具体化に向けた取組(基本方針)

基本方針

国民運動展開のためのノウハウ集

本専門調査会は、国民運動を展開するに当たってのノウハウ等について様々な観点から検討を行った。その結果を以下に提示する。各団体や各地域等で運動を展開に当たっては、これを参考とすることが望まれる。

 

■よりよいコンテンツの作成

新たに災害をイメージする能力を高める素材を整備し、優れたコンテンツの充実に努める。コンテンツ作成に当たっては、コンクール等の方式を取り入れより幅広い層の参加を求めるとともに、災害のリスクに関し知識としてだけでなく体験として理解できるような教材の充実に努める。

(1)コンテンツの作成

媒体及び用途・使用場面などを想定しながら適切なコンテンツを作成する。
A.媒体の例
  1. 映画、テレビドラマ、演劇
     災害を描いた場面では臨場感ある災害描写により災害のイメージを実感できるようにすることが重要である。また、発災後の衝撃的な映像だけでなく、それに対処する人々の努力や、事前の災害への備えについても描くと有益である。
     平時の日常生活の場面においても、たとえば小道具に防災用品を加える等、災害への備えを怠らないことを示しておくことが防災のメッセージを伝えるうえで有効である。
  2. 小説
     上記映像メディアにおける描写に加え、人々の暮らしへ影響を与えた歴史上の災害の考証を背景に、将来への教訓を引き出すような描写があると有益である。
  3. 漫画
     年代別に受け入れやすい形で情報を提供することが有益である。映像メディアに通ずる描写により災害のイメージをより豊かに伝えることができる可能性をもつ。
  4. 絵本、紙芝居
     幼児向けに、わかりやすくかつ過度に刺激的でなく災害を伝えるだけでなく、生き残るための基本的な知識を、予防的見地を含め、伝えるよう留意する。読み聞かせる際に、ストーリー外の解説を加えることにより情報を補足するなどの工夫が有効である。
  5. ゲーム
     クロスロードや防災すごろく等のゲームは、参加者が問題の共有から解決への過程を発見し体験することを通じて、一方的な知識の伝達でなく、互いに教えあう水平的な人間関係の中で現実の災害への対処能力を養うことができる効用があり、同時に楽しみながら行うことができる。
     テレビゲームのように一般に普及し、かつ映像メディアとしての要素をもつゲームもまた災害をイメージする能力を高める可能性がある。
  6. 教材
     防災に関する授業や講座などで使われる教材については、郷土の自然災害の歴史を掲載するなどの工夫が有効である。また、災害時の体験の詳しい記述資料を生かして災害状況のシミュレーションができることも有効である。
B.用途・使用場面の例
  1. 対象者
    対象者の属性別
    ・年齢別(幼児、少年、青年、成人向け)
    ・場面別(個人・家庭、地域、学校、企業、行政向け)

    ・習熟度別(一般向け、指導者向け)

  2. 目的
    コンテンツの使用目的別
    ・防災の意識付け、きっかけ作り
    ・防災知識の付与

    ・防災活動の実践

  3. 時系列
    提供する知識、技能の使われるべき時期別
    ・事前対策
    ・被災直後

    ・復旧・復興

(2)優れた素材の整備

  1. 実写やシミュレーション映像等を用いた防災教育教材の作成
     映像の使用は災害を実感させる上で有効であるが、その際あまりニュースにならないが被災者にとって重大な情報を盛り込む工夫をこらすことが必要である。
  2. 生活に密着した災害の体験談の活用
     被災状況の具体的な実情を示し、被災前日に戻れたらどのような予防措置をとるべきであったかをキーワードに、災害を我がことと感じさせるような教材の作成が必要である。家庭のみならず職場(企業、行政)などの場面別、あるいは年代別の体験談の提供など、災害を実感させるためのよりきめ細かい工夫が必要である。
  3. 地域の災害史の活用
     地域の災害史は地域の自然条件の適切な理解に役立つとともに、これに対応してきた地域の人々の将来世代への警告と知恵の蓄積を示すものであり、将来の災害に備えるために役立つ情報を多く含んでいる。たとえば地域の現在の災害危険情報の理解に役立てる、郷土史の理解とあわせて地域をより深く知る契機にする、自然条件がもたらす災害と恩恵の多様性を理解する、などの活用が考えられる。
     「稲むらの火」の逸話は津波への備えを伝えるあまりにも有名な教材であるが、これに続くような、あるいはそれぞれの地域ごとに役立つような逸話、物語などを発掘して新たな教材としていくことが必要である。

(3)コンクール・募集などを通じた裾野の拡大

コンテンツ作成に当たっては、たとえばポスターや小説・エッセーのコンクール等の方式によって、コンテンツ募集を契機とする参加者の拡大が見込まれる。

(4)災害のリスクや対策に関する体験型メニューの提供

災害のリスクや対策を知識としてのみならず体験を通じて理解するメニューが提供されるようになってきており、以下の例にみられるように災害対策を理解するうえで優れたものがあり、その一層の活用が望まれる。

  1. 子供向け
     「ぼうさい探検隊」をはじめとした「防災まち歩き」は、子どもたちが、自分たちの住むまちを探検し、発見した防災・防犯拠点の位置や写真、気づいたことなどを模造紙上の地図にまとめてオリジナルの防災マップを作成する、小学生向け実践的防災教育プログラム手法である。まちへの関心を高めることを通じて、子どもたちに防災意識が芽生えることをねらいとしている。
  2. 大人向け
    ・DIG(Disaster Imagination Game)
     災害(Disaster)のD、想像力(Imagination)のI、ゲーム(Game)のGの頭文字をとって名付けられ、誰でも企画・運営できる、参加型で簡単な災害図上訓練の手法である。参加者は大きな地図を囲み、全員が書き込みを加えながら議論をする過程で、被害の様相はより具体的に描き出され、その地域の災害に対する強さ弱さも明らかになることが期待できる。
    ・タウンウォッチング
     まちを歩いて、まちの魅力を発見するとともに、写真を撮影しながら危険箇所を発見したり、避難場所、避難経路を確認した上で大縮尺の地図に貼りつけるなど、防災の視点からコミュニティ単位で自分たちのまちの安全性を見つめ直す手法である。

(5)情報ライブラリの素材の活用

防災教材づくりを促進するために、教材を作ろうとする者が情報ライブラリに収められた素材を自由に活用できるようにすることが必要である。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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