具体化に向けた取組(基本方針)

基本方針

国民運動展開のためのノウハウ集

本専門調査会は、国民運動を展開するに当たってのノウハウ等について様々な観点から検討を行った。その結果を以下に提示する。各団体や各地域等で運動を展開に当たっては、これを参考とすることが望まれる。

 

■防災のための投資や備えと行動に対するインセンティブの活用

企業や家庭における防災のための投資やソフト面を含む備えと行動を促進するため、優遇金利などのインセンティブの活用、ロゴ・マーク等の使用、防災関係の展示会や見本市の活用、防災の取組が優れているまちの安全性の周知などを行う。

企業や家庭が、それぞれの立場で種々のインセンティブを活用してより積極的に安全性確保のために投資し、備えをし、または行動することにより、建物、設備等の防災性が向上し、防災関連のあるいは防災性能を有する製品・サービスが普及し、社会の防災力が高まることが期待される。

(1)企業の力を生かした防災活動への貢献

A.企業自らのための防災投資・備え、行動
  1. 企業の自社の防災投資を促進する方策
     各企業の防災投資やソフト面を含む備えを促進するため、金融機関や様々な格付け主体による防災格付けをはじめ、環境の取組と同様に市場や社会での評価が進展することが望ましい。耐震補強等の防災投資、BCPの作成、様々な備えあるいは行動を行った企業が優遇金利の適用などのインセンティブを享受できることが有効である。また、講習会の開催、業種別指針の策定等により各企業におけるBCPの作成を促進することが必要である。
  2. 企業取引や地域の連携・協力を介して災害被害の波及を抑制する方策
     個別企業の対応を超えて、取引関係を通じた要請、あるいは地域・同業者間の連携や協力により災害被害の連鎖的波及を抑制する取組(BCPの普及を含む。)を促進することも有効である。
  3. 地域の経済団体等によるBCPの普及促進
     地域の経済団体、防災関連の企業、自治体等が自らのイニシアティブでセミナーの開催等を通じて各企業におけるBCPの作成を働きかけていることは、BCP普及に向けた積極的な取組として高く評価される。
B.企業の製品・サービスあるいは性能を通じた防災力向上への貢献
  1. 新たな防災技術やアイディアを組み込んだ製品・サービスの開発や性能向上の促進方策
     緊急地震速報等、新たな防災技術やアイディアを組み込んだ製品・サービスの開発や性能向上を図ることが重要である。防災用品のコンテスト、防災に関するロゴ・マーク等(後述)も一つの方法である。
  2. 防災製品・サービスの情報提供・発信にかかる工夫
     防災技術の展示会や見本市(後述)の開催が重要である。さらに住宅の種類に応じた家具固定方法の普及など、需要発掘のための取組が必要である。
C.企業の社会貢献・地域貢献としての防災の取組
  1. 企業の社会貢献・地域貢献を市場や社会で評価する方法
     企業のCSR、イメージアップ戦略と呼応するものであることが有効である。企業の取組事例の表彰・周知、前述の格付けの結果の周知、取引関係の中で調達条件に関する考慮を払う際に防災への取組を高く評価することなどが考えられる。
  2. 企業の営業活動と社会貢献活動の資金的なリンク
     企業がある営業活動の収益の一定割合を防災の社会貢献活動に役立てると宣言をする行動は、企業の防災社会貢献を営利活動とリンクさせることで活動の幅を広げる可能性を大いに含むものであり、これを促進することが有効である。また、ベルマークなど既存の公益的活動の柱の一つに防災を加えることも有効である。

(2)家庭内における安全への備えの意識の向上

  1. 家族がみんなで考える機会・場をどうやってつくるのか
     子どもの学校の宿題、学校や企業からの安否確認の方法などの指示、住宅の新築や引越し、自治会・町内会等からのお勧めなどをきっかけにすることができる。企業のBCPでは従業員の安全確保が必要であり、企業が従業員に自宅の耐震補強や家具固定を勧める方策も一つのきっかけとなる。
  2. 家庭での取組の持続性の確保
     防災の日には予防のための行動を実践するよう、自治会・町内会等、企業、学校から働きかけを行うなども有効。また、緊急地震速報が発表された場合にとるべき行動を家族間で確認する機会を設けたり、転居の多い春に転居先の耐震性の確認、家具固定のきっかけの日を設けることを呼びかけるなども一つの方法である。
  3. 家庭の取組が実施しやすい環境の整備
     住宅の種類に応じた家具固定方法の普及、高層住宅での造りつけ家具の促進などが考えられる。耐震基準に適合した居住用建物に関する地震保険料率の割引などのインセンティブも有効。防災関係者がまず自分の家庭で防災の取組を実践することも大切である。

(3)防災面の安全性をまちの魅力として周知

  1. まちの魅力として「防災」の提示
     業務市街地、商店街、住宅団地、町内等において、まちの魅力の一要素として防災が認知されることが大切である。そのため、その地域が防災に取り組んでいることを対外的にアピールする価値に気づいてもらい、また、アピールを促す工夫をし、アピールの場作りなどを行うことが重要である。
  2. 活動の持続性の確保
     まち全体、あるいは一定区域の安全性を視覚に訴えるような仕掛けを作ることが考えられる。そのために一目でわかる標識、ロゴ・マーク等によって示すことも考慮すべきである。その前提として建物耐震化率などまちの防災性の高さを簡易に測る方策、表示する方策の設定(進捗を確認しやすくし、まち自慢につなげられるようにする)も考えられる。
  3. 他の地域活動と連動し、楽しく活発なわがまちづくりの一環としての推進
     地域の安全の向上がまちの魅力作りにつながることを認識し、他の地域活動と積極的に連動して防災活動をまちぐるみで盛り上げる。地域安心安全ステーションの整備や祭り、パレード、バザーなどへの防災の担い手の楽しい参加例を紹介するなども一つの方法である。

(4)防災関係技術・アイディア、ビジネスモデルなどの活用

  1. 新技術・新製品等の普及のための広告等
     防災製品・サービス・性能のコンテスト、ホームページを活用した防災に関する新製品・サービス・性能の紹介などが考えられる。新製品等の紹介だけでなく、実際の災害に関する情報や災害被害を防ぐノウハウ等、新製品等の活用に結びつく情報も一緒に提供するとより使いやすくなる。また、新製品等の機能の客観的な評価・推薦が求められる。
  2. 活動の持続性の確保
     民間団体主体の行事や広報を支援する可能性を検討。コミュニティービジネスなど新しい手法の導入支援、別目的の展示会・見本市で防災関連コーナーを広げる工夫が必要である。

(5)防災に関するロゴ・マーク等の活用

  1. 「企業・団体の活動」に資するロゴ・マーク等
     企業として防災活動に賛助する、自社の施設が新耐震基準を満たしている、あるいは緊急地震速報の取り入れを実施しているなど、災害対策に何らかの積極的な取組を実施していることをアピールするために、ロゴ・マーク等を使用することが考えられる。
  2. 「製品の魅力」に資するロゴ・マーク等
     防災活動に賛助する製品であること、あるいは防災上の何らかの付加価値があることをアピールするためにロゴ・マーク等を使用することも考えられる。ただし製品の性能を認証するような場合には、認証基準の設定などが課題である。
  3. 「家庭・職場・学校などの空間の安全」に資するロゴ・マーク等
     建物に耐震性がある、建物等に安全に避難できる空間を設けてある、安全な部材(防災ガラス、防災瓦等)を使用していることなどを表すロゴ・マーク等の使用も考えられる。特に部材メーカーにおける新技術の開発と普及を促す効果が期待される。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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