いなべ市の防災の取組と平時からの防災への意識向上
三重県いなべ市防災課 大月浩靖
1 はじめに
三重県いなべ市は岐阜県、滋賀県の県境にあり三重県の北の玄関口となります。いなべ市は、ものづくり日本を象徴する中部圏の一画として、自動車関連メーカーをはじめ多くの企業に進出していただいております。現在整備中の東海環状自動車道が通り、令和7年(2025年)3月には、市内に2つ目となるいなべICが開通し、これによりいなべ市の魅力と可能性は益々高まり、より多くの交流や更なる投資が期待される街でもあります。
2 これまでの被災地での課題を意識したハード整備
当市ではこれまで、東日本大震災をはじめ、熊本地震、令和6年(2024年)能登半島地震等多くの被災地へ職員を派遣し、被災地より多くの知見を得てきました。このことを踏まえ、いなべ市役所新庁舎建設時には、その知見を活かした庁舎の整備を目的として、令和元年(2019年)5月にいなべ市役所庁舎が完成いたしました。市役所は災害時の拠点となることから、迅速な災害対応への移行を行うため、防災担当課(以下「防災課」と記述します。)が、平時よりオペレーションルーム内の一部で執務を行っており、執務室の両サイドにパーテーションを用いることにより、平時は庁議室や会議室として使用し、災害時にはパーテーションを開放することにより、ワンルームのフロアーとなり、オペレーションルームとして使用することが可能となっております。また、応援職員のオペレーションルームへの導線やDMAT等の保健医療福祉調整本部の設置場所等様々な点を検討した庁舎及び保健センターが完成しました。
庁舎建設に続き、大規模災害時に必ず災害対応で重要となる物資の備蓄倉庫建設を検討し、令和2年(2020年)にいなべ市防災拠点倉庫(地域内輸送拠点)を新たに整備しました。防災拠点倉庫についても、東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨等の被災地での課題を建設時に検討し、備蓄倉庫ではなく物流倉庫として整備を行いました。
これまで全国各地の自治体職員の皆様が庁舎及び防災拠点倉庫の視察に来られており、災害対応を意識した施設の建設が全国に広まることを望んでおります。

オペレーションルーム兼執務室

いなべ市防災拠点倉庫
3 地域の利点を活かした防災への取組
平成24年(2012年)から三重県北部の桑員地域(桑名市、いなべ市、東員町、木曽岬町)との連携強化を図っています。この礎となったのは、東日本大震災での遠野市の役割です。桑員地域はいなべ市・東員町が内陸部にあり、桑名市・木曽岬町は沿岸部にあり、内陸部自治体が沿岸部自治体を迅速に支援できる枠組みが必要であると考え、平成28年(2016年)に広域避難に関する協定を締結し、これまでに定例会やタイムラインの検討及び広域避難の実働訓練を実施してきました。特に国難級とされている南海トラフ地震では、西日本半分で大きな被害が出ると想定されており、隣接する自治体同士が、まず助け合うことが大切だと思っています。三重県北部の桑員地域は愛知県とも隣接することから、県域を越えた対応も必要となるため、定例会には、愛知県の職員も出席していただきました。県内だけではなく、隣接する府県と連携し浸水0m地域の自治体支援を今後も継続して実施していかなくてはならないと考えています。
4 プライベートからのつながりの重要性
防災は、「平時からの繫がり・連携」が重要とよく言われます。令和6年(2024年)能登半島地震での輪島市への支援の際には、平時から繫がりのある多くの防災関係者から支援や協力を得て、迅速な対応に繋げることができ、特に、チーム防災ジャパン関係者の御協力のおかげで、輪島市へのスムーズな設備の導入、被災者支援を実施することができました。
チーム防災ジャパンとは、内閣府と連携して全国各地で活躍する多様な防災の担い手を育成・応援するための人材ネットワークです。このチーム防災ジャパンには、お世話係として、内閣府やアドバイザーの先生方と一緒に「災害被害を軽減するため、防災を国民運動として実施」することを目的として、様々な行事を実施しています。その中でも、毎年国内で開催されているぼうさいこくたい(防災推進国民大会)では、オンライン中継や、セッションの企画・運営を行うと共に、自ら登壇し、防災の取組等を紹介しています。
また、東海圏域の防災に関わる人の繋ぎ役として、チーム防災ジャパンのアドバイザーである名古屋大学名誉教授の福和伸夫先生と一緒に、東海圏域の産官学の中心的な役割を担う方々(お世話役)と一緒に定期的に勉強会を開催し、東海圏域の防災の歴史や防災への取組情報等を学ぶ機会としています。
チーム防災ジャパンの活動の1つである「つながる・つなげる」を目的として、東海圏域の人と人を繋ぎ、更に全国各地の人と人を繋ぐ役割を担っていき、今後は関西圏域等全国様々な地域で活動を実施し、産官学を超えた繫がりを作っていきたいと思っています。


TEAM防災ジャパン 東海ローカルチームミーティング