全国初!寒冷地仕様の避難タワーが完成
北海道釧路町防災安全課防災対策係
1 はじめに
釧路町は、北海道の南東方に位置し、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による津波の影響を受ける地域として、30年以内に大地震の発生が予想されております。特に、太平洋に繋がる釧路川沿いの本地区は、昭和50年代に建築された戸建木造住宅により構成され、津波から身を守る高く強固な建物が存在しておらず、大きな被害が想定されておりました。
このことから、緊急避難施設の整備が急がれておりましたが、建設可能な空地は、都市公園しかなく、これらの公園に複数棟の津波タワーを建設することになりました。多くの制約もありましたが、避難時間の短縮には、効果が高くなりました。
2 周辺インフラに頼らない強固な避難施設
設計に際し、第一には、町民が迅速かつ安全に避難できる場所でなければならないことと、避難者は48時間程度はここで過ごすこととなり、周辺インフラが崩壊していても最低限の生活機能は確保される建物でなければなりませんでした。
鉄骨造3階建て、1階部分は円柱ピロティ形式により波を逃がし、2階3階を避難スペースとしました。避難室へのアプローチはスロープが1か所、階段が2か所の計3方向からとしました。平時は、ゲートが施錠されていますが、J−アラート防災行政無線による避難指示発令と連動した自動解錠システムとし、有事の際に、誰かが鍵を開けることを待つ必要はなく、迅速な避難を可能としています。
設備としては、太陽光発電・蓄電設備や、災害時に有効なプロパンガスを熱源とする発電機を設置し、無停電化を実現しました。公共上水道や公共下水道にも接続せず、循環式汚水再利用装置によりトイレ問題をクリアする等、高い耐久性と安全性を誇れる施設となりました。
3 寒冷地仕様としては全国初となる避難タワー
災害はいつ起こるかわかりません。それが厳寒期であったなら、雪や寒さから身を守ることは、絶対に必要です。東日本大震災のあの映像は忘れられません。そこで思い切ってタワーを壁、窓及びネットにより雪の侵入を止めて、室温低下を防げるようにしました。プロパンガスを主熱源とする暖房機も準備し、津波から逃れた後の対策にも考慮しています。
4 その他の配慮
防災行政無線の放送は、室内に流れますが、最大の情報収集手段は、個人のスマホとなることから、USB充電ポートを設置しました。また、防災備蓄庫は設けず、避難室壁面に可能な限り収納棚を設け、備蓄品を収納することで、避難スペースを確保するとともに、備蓄品が取り出しやすくなるように工夫しています。
屋上は、物資供給や緊急搬送のためのヘリコプターのホバリングスペースとしています。また、ペット同伴での避難も可能なスペースとなっています。

いづみ公園避難タワー(外観)

いづみ公園避難タワー(避難室)