「NIPPON防災資産」の深化を考える会
国土交通省水管理・国土保全局河川環境課水防企画室

1 はじめに
内閣府、国土交通省では、令和6年5月に、地域で発生した災害の状況を分かりやすく伝える施設や災害の教訓を伝承する活動等を「NIPPON防災資産」として認定する制度を新たに創設しました。また、同年9月には、本制度の創設後初めて、22件(優良認定:11件、認定11件)を認定しました。
その後、第一線で活躍されている優良認定の関係者による意見交換・議論を通じて、災害による犠牲者を一人でも減らすための視点、要素、取組等を洗い出し、整理することを目的とした“「NIPPON防災資産」の深化を考える会”を令和7年2月に開催しました。本稿では、その内容について紹介させていただきます。
2 開催概要
◆開催日時:令和7年2月21日(金)15時00分~17時15分
◆主催者:内閣府・国土交通省
◆参加者:優良認定(11件)関係者、NIPPON防災資産選定委員会委員、内閣府、国土交通省
◆Web傍聴者:認定関係者、行政関係者、災害の自分事化協議会委員等 約140名
◆会場:国営東京臨海広域防災公園 そなエリア東京

意見交換の様子
3 意見交換のテーマと重点的に議論を行ったキーワード
前半は、5つのテーマに沿って、各優良認定の皆さまから発表していただき、得られたテーマ毎のキーワードから重点的に議論を行うキーワードを抽出しました。後半は、重点的に議論を行うキーワードごとに優良認定者の皆さまを中心に活発な意見交換がなされました。出された意見の抜粋になりますが、以下に紹介させていただきます。
<意見交換の5つのテーマ>

<重点的に議論を行ったキーワードと出された意見>
□語り部・ガイド・地域防災リーダーの育成(高齢化への対応)
- 語り部等の活動従事に志願する皆さんを受け入れられる場所があることが大事。
- 直接的な被災経験がない方等も一緒に巻き込んで活動している。
□事業継続(調達、お金かけない)
- 持続的な活動を可能にするために料金設定しており、地域の学校であってもお金をいただくことを原則としている。
- 専門が防災ではない、他分野の専門家に関心を持っていただき、先方のアイディアに基づく主体的な関わりの延長で、民間企業からの協賛金の話も出ている。
□学校教育との連携
- 学校による教育旅行の誘致に向け、旅行会社、学校の教育旅行担当者向けの商談会等に参加し、施設の役割、紹介等を行っている。
- 自治体の教育委員会、防災部局を含めた継続的な体制を構築している。
- 地元教育委員会に対する働きかけにより、小学校三、四年用の社会科の副読本に災害伝承施設について掲載されたことから、小学校からの来館者が増えた。
- 地元の有名中学校の入試予想問題に、災害伝承の対象としている自然災害が取り上げられ、多くの教育関係者に周知された。
- 年度初めに赴任してきた先生方を対象に防災の話をする機会を設け、繰り返し実施することにより、赴任地周辺の自治体だけでなく、新たな転勤先でも口コミが広がり、結果として、周辺地域の全校で活動するようになった。
- ターゲット毎にカリキュラムツールを用意してあげると、教諭側も受け入れやすい。
4 最後に
本会での意見交換・議論を通じて得られた知見は、優良認定の関係者による取組への深化に反映されるだけでなく、広く全国の取組に共有されることで、それぞれの施設の利用者、活動への参加者が、災害リスクを自分事化し、災害に備える行動を起こすことにつながっていくことを期待しています。
引き続き、内閣府、国土交通省では、それぞれの関係者の知見の共有を通じた相乗効果等により、「NIPPON防災資産」の制度の一層の発展・活性化に繋げていく所存です。
NIPPON防災資産ホームページ:https://www.mlit.go.jp/river/bousai/bousai-shisan/index.html 「NIPPON防災資産」の深化を考える会(令和7年2月21日)開催結果概要:https://www.mlit.go.jp/river/bousai/bousai-shisan/shinka_r7.html