地域における住民の防災意識の向上(災害教訓の伝承)に関する調査の結果について
総務省行政評価局評価監視官(内閣、総務等担当)室
1 はじめに
東日本大震災の教訓をいかすため、平成24年(2012年)の災害対策基本法改正で、住民は過去の災害教訓の伝承を通じて防災に寄与するよう努めることが規定され、また、国及び地方公共団体は災害の発生・拡大の予防・防止のため、住民の災害教訓の伝承活動を支援することが努力義務として明記されました。
一方で、過去の災害の記憶等が年々風化している、住民の災害教訓の伝承活動が行われなくなってきているとの指摘もあり、今回、住民の災害教訓の伝承活動の意義・重要性及び市町村による同活動への支援について調査を実施しました。
2 住民の災害教訓の伝承活動の意義・重要性
近年自然災害に遭った地区の住民から避難行動等について聞いたところ、安全な高台への再避難等、災害教訓が住民の主体的な避難行動に結び付いた例が把握され、改めて、災害教訓の伝承は、住民の主体的な防災行動につながり得る重要なものであると確認できました。
3 行政機関による災害教訓の伝承活動への支援
(1) 市町村による住民の災害教訓の伝承活動への支援について、状況を市町村に聞いたところ、どう行えばよいか分からないとする市町村がある一方、児童生徒への防災教育や住民主体の活動に災害教訓を取り入れたものなど、他の市町村の参考となり得る様々な支援例が把握できました。
(2) 自然災害伝承碑について、国土地理院は市町村による活用を促進しています。調査の結果、自然災害伝承碑をどう活用してよいか分からないとする市町村がある一方、他の市町村の参考となり得る様々な活用例が把握できました。

児童が災害教訓を学ぶ様子(大分県佐伯市)

自然災害伝承碑の地図記号のアイコン
4 おわりに
本調査で把握した、他の参考となり得る、市町村による住民の災害教訓の伝承活動への支援例・自然災害伝承碑を活用した支援例を結果報告書中に資料としてまとめました。
市町村に対し、そのような例が情報提供されるなど、災害教訓伝承・自然災害伝承碑活用の意義・重要性が改めて周知されれば、市町村が地域特性を踏まえた支援内容を検討する上で参考にしやすくなり、支援が促進されると考えられます。より多くの地域で、住民による災害教訓の伝承活動が行われ、防災意識向上と災害への備えにつながることを願います。
【文献】
総務省行政評価局,2024,地域における住民の防災意識の向上(災害教訓の伝承)に関する調査の結果.
▶https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/hyouka_kansi_n/ketsuka_nendo/hyouka_240829000175924.html