防災の動き



鳥取県災害ケースマネジメントに関する取組み
~誰一人取り残さない被災者支援~
鳥取県危機管理局長 水中 進一

1 鳥取県中部地震における災害ケースマネジメント

 平成28年10月、県中部を中心に甚大な被害が発生した鳥取県中部地震※1では、発災から1年半が経過して、被災した屋根のブルーシートが取れないなど、自力での生活復興が難しい被災者の存在が顕在化してきました。

 県では、被災者一人ひとりの困難な状況が見られたことから①個別訪問により被災世帯の状況を把握、②実態調査を基に関係機関によるケース会議で個々の生活復興プランを作成し、③必要に応じて専門家を含む支援チームを派遣することで、専門家と連携して被災者一人ひとりに寄り添って支援する「災害ケースマネジメント」に取り組むこととし、平成30年4月、全国で初めて県防災危機管理条例※2に関連規定を設け、これを恒久的な制度としました。

 災害ケースマネジメントにより、高額な修繕費の捻出が難しく住宅修繕に未着手である高齢者世帯には建築士から簡易な修繕、負債のある世帯には弁護士が法的観点から返済状況を確認、経済状況が苦しく店舗再開を悩む自営業世帯にはFP※3による資金計画の提示、と一つひとつ着実に課題を解決して、支援の必要な世帯は条例規定時の約1,000件から令和3年度中には1桁まで減少しました。

訪問調査の様子
訪問調査の様子

2 全県展開へ

 この災害ケースマネジメントによる被災者支援の仕組みを全県に展開するため、令和3年4月、県は全国に先駆けて災害福祉支援センター(県社会福祉協議会内)を設立しました。県災害福祉支援センターには、県中部地震で災害ケースマネジメントを中心的に実践した者を中核に据えて、県の防災、福祉部局とともに、市町村の防災、福祉部局等に対して、それぞれの自治体に応じた災害ケースマネジメントに取り組めるよう、意見交換を進めています。

 その最中、令和3年7月に三朝町は、大雨による被災者に対して、個別訪問、ケース会議により課題を解決し、町独自の支援策を創設するなど、災害ケースマネジメントによる被災者支援を実施しました。

 また県中部地震の被災者支援のため、県が専門士業4団体※4と締結していた生活復興支援に関する協定を、令和3年12月に全県の被災者を対象とした協定にバージョンアップしました。さらに同月には防災顧問に被災者支援対策分野を創設するなど、体制の更なる拡充を行っています。

専門士業4団体協定締結式
専門士業4団体協定締結式

3 社会実装に向けて

 令和3年度中に手引書作成、また令和4年度は災害ケースマネジメントの社会実装※5に向けて、県災害ケースマネジメント協議会(仮称)を新設し、推進指針の策定や、県災害福祉支援センターと連携の上、実施主体となる市町村の体制を確立していきます。

 そして、これまでの取組みを発展させ、誰一人取り残さない持続可能な地域社会づくりを目指して、引き続き被災者支援に全力で取り組んでいきます。

※1 住家被害は約1万5千棟に及ぶなど、中部1市4町を中心に甚大な被害が発生した。
※2 鳥取県防災及び危機管理に関する基本条例
※3 ファイナンシャル・プランナーの略称
※4 鳥取県弁護士会、(特非)日本ファイナンシャル・プランナーズ協会、(一社)鳥取県建築士会、(公社)鳥取県宅地建物取引業協会
※5 県防災危機管理条例への規定により制度化された災害ケースマネジメントについて、市町村等による実施体制を確保すること



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