特集 降積雪期の災害に備える



特集 降積雪期の災害に備える:2018年福井県県道燃料ルート タンクローリー渋滞(左)グレーダーによる除雪状況(右)

2018年福井県県道燃料ルート タンクローリー渋滞(左)グレーダーによる除雪状況(右)
写真提供:国土交通省近畿地方整備局

市町村のための降雪対応の手引きについて
〈内閣府(防災担当)防災計画担当〉

1 はじめに

近年では、平成29年度冬期(平成29年11月~平成30年3月)において、福井県や新潟県を中心に記録的な大雪となりました。この大雪により、各地で住家被害や、電力、水道等ライフラインの被害、交通障害、農林水産業への被害等が発生し、人的被害の合計は死者116名、重傷者624名に及ぶなど、深刻な被害となりました。

これらの事例でも見られるように、降雪による災害は交通機能や都市機能の麻痺を引き起こし、地域の経済活動に影響を与えます。

一方、豪雪地帯では、高齢化及び過疎化の進展、除雪の担い手となる建設業者等の減少が課題となっています。加えて、特に普段雪害が少ない地域においては、平成26年2月の大雪で教訓となった初動体制や除雪体制の整備、住民やドライバー等への的確な情報提供、要配慮者への対応、孤立のおそれがある地域に対する対策等に十分留意する必要があります。

こうした状況を踏まえると、地域住民の安全・安心を担うとともに、実際の災害対応の主体となる市町村が降雪時に的確かつ迅速に対応することが、降雪による災害を防止し、または最小限に留める上で極めて重要です。市町村が実施すべき降雪対応については、国をはじめとした関係機関等から、これまでも公表・周知されていますが、これらを改めて整理して取りまとめることで、市町村がより一層的確かつ迅速に降雪時の対応を実施する上での一助となるものと考えます。

そこで、内閣府(防災担当)では、降雪による被災経験が少ない市町村であっても迅速かつ的確な降雪時の対応を実施できるよう、市町村における降雪対応の参考に資する取組み等に関して、新たな取組みなども踏まえながら、平成31年1月に「市町村のための降雪対応の手引き」を取りまとめ、各地方公共団体へ周知を行いました。

2 手引きの構成と特徴

本手引きは、「本編」「予防編」の2冊で構成され、災害時の対応や平時の備えを掲載するだけでなく、これまでに公表・周知された災害対応に関する各種ガイドライン等の入手先、参考となる取組み事例を掲載し、市町村の防災担当者向けのポータルとして活用できるように工夫しています。今回は、本手引きに沿って、市町村の主な降雪対応等について紹介します。

市町村のための除雪対応の手引き<本編>(左)市町村のための除雪対応の手引き<予防編>(右)

3 本編について

「本編」では、過去の大雪における災害事例のほか、「降雪の予報が出たとき」、「降雪のとき」、「著しい降雪のとき」、「雪が止んだあと」等のそれぞれのフェーズに応じて市町村が実施すべき災害対応を時系列で整理しています。

まず、「降雪の予報が出たとき」においては、適宜、気象情報を入手し、市町村庁内へ情報共有を図ることが、対応の第一歩となります。その上で、降雪により職員の参集が困難となる場合も想定して、防災体制を強化し、応急活動等に備える必要があります。また、不要不急の外出抑制や早期帰宅といった呼びかけ、要配慮者の避難準備等の注意喚起、孤立の恐れのある地域との通信手段の確認といった地域住民の安全確保に関しては、早めの対応を心掛けることが重要です。

災害対応の表

次に「降雪のとき」には、こまめに気象情報を入手し、大雪に関する注意報・警報や積雪の状況等によって、速やかに応急活動が実施できる防災体制へ速やかに移行していくことが重要です。また、防災行政無線等を活用し、住民に対して雪害に対する警報等を行うことや、必要に応じた避難勧告等の発令や避難施設の開放といった業務も発生します。更に、道路除雪が必要となりますが、市民生活や経済活動などを考慮して、あらかじめ定めておいた優先的に除雪を行うべき区間を基本として、除雪業者へ依頼します。

また、「著しい降雪のとき」において、積雪による道路の通行止めや鉄道の運休等といった社会生活への支障や、ライフラインや住家の被害が発生し得る場合には、速やかに災害対策本部を立ち上げ、災害対応を強化していくことが必要です。また、地域住民に対しては、人命確保を優先した対応策を実施することが重要であり、孤立地域の救助活動や消防・医療機関への道路の除雪状況に関する情報提供等を関係機関と密に連携しながら対応にあたります。その中でも要配慮者には十分配慮し、避難誘導や避難の受け入れ等を実施することが重要です。一方、市町村単独で災害対応が困難な場合も考えられるため、国や都道府県、自衛隊等への応援要請を行うことも早めに検討すべきです。

更に、「雪が止んだあと」には、二次災害を防止するために様々な注意喚起が必要となります。例えば、住民による除雪活動における事故防止の呼びかけや、歩行中の転倒や水道管の凍結といった日常生活に対する注意喚起等です。また、高齢者等で自ら除雪することが困難な世帯への屋根の雪下ろし等の支援も行うことも重要です。

ドライバー支援のためのパンを運び出し(出典:坂井市HP)

ドライバー支援のためのパンを運び出し(出典:坂井市HP)

4 予防編について

「予防編」では、防災体制の整備等の「平時の備え」や大雪に関する気象情報などの「基礎知識」を掲載しています。

災害対応においては、平時の備えが非常に重要となりますが、まずは災害対応の主体となる市町村の防災体制を事前に整備しておくことが必要不可欠です。例えば、土日や夜間の参集について、対象者の明確化や連絡体制の整備、参集手段といった内容をまとめておき、定期的な見直しを行うことが迅速かつ的確な初動対応を行う上で重要となります。

さらに、特に自団体のみでの災害対応が困難な場合に備えて、雪害の少ない市町村では、経験豊富な市町村と協定を事前に締結しておくことも事前の備えとなります。また、応援を受け入れる際に、応援を必要とする災害対応業務を洗い出し、応援職員に依頼する業務や派遣を要請する職種等もあらかじめ定めておくと、実災害時により円滑な受け入れと的確な災害対応が可能となります。

新潟県長岡市から群馬県伊勢崎市への除雪応援(出典:平成26年2月大雪検証報告)(群馬県伊勢崎市)

新潟県長岡市から群馬県伊勢崎市への除雪応援
(出典:平成26年2月大雪検証報告)(群馬県伊勢崎市)

5 さいごに

今回紹介した手引きについては、降雪時における市町村の対応について記載していますが、企業やその他団体等でも参考になる内容も充実しています。内閣府のHPで公表していますので、是非一読し、災害対応の一助として下さい。


●市町村のための降雪対応の手引き

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