Disaster Management NEWS— 防災の動き

「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」の改定について

見直しの経緯等

 地震や風水害等の災害による住宅の被害については、国が定めた「災害の被害認定基準」(以下「被害認定基準」という)等に基づき、市町村が当該住宅の被害の程度(全壊、 半壊等)を認定(以下「被害認定」という)しています。これにより、被災者に対して、被災者生活再建支援金の支給等の判断材料となるり災証明書が発行されます。
 被害認定基準は、災害時の被害状況の報告のため、関係各省庁がそれぞれの通達等により定めていたものが、昭和43年6月に統一され、平成13年6月に改正されています。また、 住宅の被害認定の具体的な調査・判定方法としては、平成13年の被害認定基準の改正にあわせ内閣府が作成した「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(以下「運用指針」という)が活用されてきました。
 しかしながら、平成19年11月の被災者生活再建支援法改正の際に、衆議院において「浸水被害、地震被害の特性にかんがみ、被害実態に即して適切な運用が確保されるよう検討 を加えること」との附帯決議がなされるなど、近年、災害による住宅の被害の実態に即した判定ができるよう、調査・判定方法の見直しが求められてきました。
 このような経緯を踏まえ、内閣府では、平成20年10月3日に「被害の実態に即した適切な住家被害認定の運用確保方策に関する検討会」(座長 坂本 功 東京大学名誉教授)を 設置し、住宅の被害認定の調査・判定方法に関する検討を行い、パブリックコメントも実施した上で、運用指針を改定しました。

運用指針見直しのポイント

1.災害による被害の実態を考慮した判定方法の追加

(水害)  水害による住宅の被害の実態に即した被害認定ができるように、浸水した住宅の悪臭、カビの原因ともなる被害や2階建の住宅の中で1階が果たしている機能の重要性を考慮し た判定を導入しました。

  1. 水害により床下に堆積した汚泥や吸水した断熱材等は、適切な補修等を行わないと住宅の悪臭、カビの原因となります。このような実態を踏まえ、床下への汚泥堆積と 汚泥除去のための床板の取り外し(写真1)や浸水した壁内部の断熱材等の取り外しに伴う他の部材の取り外し(写真2)を損害として算定することとしました。
  2. 水害等により専ら1階が被害を受けた住宅については、原則として当該住宅の損害を1・25倍できることとする等、2以上の階を有する住宅における1階等の価値を考慮した判 定方法を定めることとしました。
写真1 床下への汚泥堆積と汚泥除去のための床板の取り外し
写真2 浸水した壁内部の部材取り外しに伴う他の部材の取り外

(地盤被害)  改定前の運用指針では、地盤被害の影響で生ずることが多いと考えられる住宅の傾斜や基礎の損傷の程度が甚だしい場合に、全壊と判定でき ることとしていました。今回の見直しにおいては、従来の取扱いに加え、基礎の直下の地盤の流出、陥没等(写真3)を基礎の損害として算定する等、地盤被害の実態に即した調査・ 判定方法を追加しました。

写真3 基礎の直下の地盤の流出

(風害)  改定前の運用指針は、基本的に地震被害及び浸水被害を想定して作成したものであり、風害による住宅の被害の特殊性を考慮した調査・判定 方法を定めていませんでした。今回の見直しにより、風害に伴う飛来物による屋根、外壁等の損傷(写真4)を損害として算定する等、風害による住宅の被害の特殊性を考慮した判定方法を定めました。

写真4 風害に伴う飛来物による 損傷(写真提供:延岡市)

2.災害ごとの被害認定方法の明確化

 改定前の運用指針が、「地震等」及び「浸水」の2編構成となっており、水害による住宅被害については、両方を参照する必要があるなど、わかりにくいという指摘がありました。
 このため、運用指針を「地震」、「水害」、「風害」の3編構成に改め、災害の種類に応じて被害認定の流れ(下図)を明確化し、各編を参照すれば被害認定を行えるようにしました。

住家被害会場の様子

3.被災建築物応急危険度判定との 連携

 改定前の運用指針においては、被災建築物応急危険度判定との連携の詳細について、具体的に定めていませんでしたので、今回の見直しにおいて、応急危険度判定の判定結果で、 被害認定調査の際に参考にできる点を明確化しました。

おわりに

 内閣府では、改定された運用指針を6月16日付で、都道府県を通じて市区町村に周知を図ったところです。今後発生する災害の際の被害認定にあたり、適切に活用していただきた いと考えております。
 また、平成21年度には、今回の見直しを踏まえた調査票の様式の見直しについて検討する等、内閣府は今後も、必要に応じて参考資料を整備していくとともに、被害認定の適切 な運用確保のため地方公共団体に対し助言を行っていくこととしています。

「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」の詳細 https://www.bousai.go.jp//taisaku/unyou.html

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