1-10 産業界との連携
(1)防災経済コンソーシアム
社会全体の災害リスクマネジメント力を向上させるため、民間事業者においても大規模な自然災害に対する事前の備えを充実していく必要性がある。このための事業者の意見交換・交流の場として、平成30年に「防災経済コンソーシアム」が設立された。
「防災経済コンソーシアム」では、それぞれの業界の特性に応じた創意工夫により、事業者の災害リスクマネジメント力向上のための普及・啓発を図る等の「防災経済行動原則」を策定し、17団体のメンバーが当該原則の理念をそれぞれの下部組織まで普及・啓発しながら、事業者の防災・事業継続力強化を支援する活動を行っている。
令和6年度は、防災・事業継続力強化の課題と考えられる「サプライチェーン、地域連携の強化」等をテーマに会合を2回開催し、メンバー間での事業者支援や令和6年能登半島地震における取組事例の共有に加え、内閣府による防災や事業継続に関する施策の紹介、本テーマを専門分野とする有識者による講演等を実施した(図表1-10-1)。
(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/consortium/index.html)

(2)防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム
近年、激甚化・頻発化する災害に対して、より効果的・効率的に対応していくためには、地方公共団体等においてもデジタル技術を始めとする先進技術を積極的に活用していくことが重要である。一部の地方公共団体等では、既に先進技術の活用が進められ、災害対応において効果を発揮しているものの、先進技術に関する情報収集や技術導入の機会が限られていることから、導入が進んでいない地方公共団体等も多い。
このため、内閣府においては、災害対応に当たる地方公共団体等のニーズと民間企業等が持つ先進技術のマッチングや、地方公共団体等における先進技術の効果的な活用事例の横展開等を行う場として、「防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム」を令和3年度に設置している。
同プラットフォームでは、常設のウェブサイト(以下「マッチングサイト」という。)を運営するとともに、地方公共団体等と民間企業等が交流する場となるセミナー(以下「マッチングセミナー」という。)を開催しており、令和7年3月現在で、地方公共団体等約850件、民間企業等約1,700件がマッチングサイトに登録し、これまで200件のマッチングが生まれている。
また、令和6年6月には、令和6年能登半島地震で活用された有効な技術・サービスを企業や関係省庁が紹介するマッチングピッチを開催し、トイレカーやインターネット衛星の自治体への導入等に向けた新たなマッチングが始まっている(図表1-10-2)。
マッチングセミナーは、令和7年3月末までに計10回開催され、地方公共団体等に実際に導入されている先進技術の事例紹介、災害対策・レジリエンス強化を目的とした地方公共団体等の取組紹介、民間企業等と地方公共団体等が一対一で直接、自社の技術の紹介及び自団体の課題やニーズ等の相談ができる「個別相談会」等を実施している。
第10回セミナーにおいては、国内最大級のオープンイノベーション施設に産官学金が一堂に集結し、有識者やスタートアップ企業等による講演、パネルディスカッション、地方公共団体・企業がニーズをプレゼンするマッチングピッチや屋外展示等の新しいプログラムを通じて、「防災産業の育成」と「社会全体のレジリエンス強化」を目指す取組を紹介した。特に企業側のニーズ等については、今回初めてプレゼンを行い、一定程度の反響があったことから、防災関連市場の拡大には企業同士のマッチングも重要であることが参加者の間で共有できた。
令和6年能登半島地震対応に有効であった技術・サービスをテーマにしたマッチングピッチイベントを開催
令和6年能登半島地震では、地理的制約がある中での災害対応の難しさが浮き彫りになったところであり、災害応急対策に有効な新技術について、自治体・関係省庁等による実装・活用等の必要性が高まっているところである。
内閣府では、地方公共団体で活用することが有効と考えられる新技術等を「自治体等活用促進カタログ」として取りまとめ、令和6年6月10日に公表するとともに、6月20日、21日には、カタログに掲載した災害対応に有効な技術・サービスを紹介するマッチングピッチイベントを開催し、500を超える地方公共団体・企業が参加した。
マッチングピッチイベントでは、災害対応に当たった企業や関係省庁から、現地で活用された、水・電力・通信等のライフラインの確保・復旧や、避難者・支援者の生活・活動環境の改善等に関する技術、被災状況等の把握、情報の共有・一元化に資する技術や方策など多くの発表が行われ、参加した地方公共団体からは、特にドローンを活用した情報収集やトイレ・水・通信などライフライン確保等に係る新技術や方策に高い関心が集まっていた。
また、マッチングピッチイベント開催後、地方公共団体と民間企業との個別相談会を開催した。この相談会等を通じ、トイレカーや衛星インターネットの導入等に向けたマッチングが始まっている。
(3)「災害への備え」コラボレーション事業
内閣府では、関東大震災から100年の節目を迎える令和5年を巨大災害に対する備えを強化する重要な機会と捉えて、国民・家庭・事業所の各レベルで防災意識を高め、日常生活における「災害への備え」を促進するため、コラボレーションする民間企業等を募集し、平素の事業活動を通じて広汎な普及啓発を推進する「災害への備え」コラボレーション事業を開始した(図表1-10-3)。
本事業には、令和7年3月末現在で147の企業等が賛同しており、各企業等による「災害への備え」に関する活動の実施、イベント等への内閣府の参画のほか、令和7年1月には内閣府及び有識者と賛同企業等による南海トラフ地震臨時情報についてのセミナーを開催した。