1-9 事業継続体制の構築
(1)中央省庁の業務継続体制の構築
中央省庁においては、これまで、首都直下地震等の発災時に首都中枢機能の継続性を確保する観点から、中央省庁ごとに業務継続計画を策定し、業務継続のための取組を進めてきた。平成26年3月には、首都直下地震対策特別措置法(平成25年法律第88号)に基づき「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」(以下「政府業務継続計画」という。)が閣議決定されたことを受け、中央省庁はこれまでの業務継続計画について見直しを行った。
内閣府においては、中央省庁の業務継続計画の策定を支援するため、平成19年6月にガイドラインを策定した。その後、近年の災害の激甚化・頻発化や社会情勢の変化などを踏まえて同ガイドラインの見直しを行っており、最近では令和4年4月に改定を行った。また、政府業務継続計画に基づき、中央省庁の業務継続計画の実効性について、有識者等による評価を行っており、これを受けて中央省庁は、必要に応じて業務継続計画の見直しや取組の改善等を行っている。
政府としては、このような取組を通じて、首都直下地震等の発生時においても業務を円滑に継続することができるよう、業務継続体制を構築していくこととしている。
(2)地方公共団体の業務継続体制の構築
地方公共団体は、災害発生時においても行政機能を確保し業務を継続しなければならない。このため、地方公共団体において業務継続計画を策定し、業務継続体制を構築しておくことは極めて重要である。地方公共団体における業務継続計画の策定状況は、都道府県においては平成28年4月現在で100%に達し、市町村においても令和5年6月現在で100%に達した。
また、被災地方公共団体は、自らの体制だけで膨大な災害対応業務を行うことは困難であることから、国や他の地方公共団体等からの応援職員等を迅速・的確に受け入れて情報共有や各種調整等を行うため、受援計画を策定し、受援体制の整備を図ることが重要である。地方公共団体における受援計画の策定状況は、都道府県においては令和5年6月現在で100%に達し、市町村においては令和6年4月現在で78.5%となっている(図表1-9-1)。
内閣府では、「市町村のための業務継続計画作成ガイド」(平成27年5月策定)、「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」(令和5年5月改訂)及び「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き」(令和7年4月改訂)を策定し、周知しているほか、地方公共団体における業務継続体制や受援体制の構築を支援するため、消防庁と連携し、都道府県・市町村の担当職員を対象とした研修会・説明会を平成27年度から毎年度開催している。
(3)民間企業の事業継続体制の構築
大規模災害等が発生して企業の事業活動が停滞した場合、その影響は自社にとどまらず、サプライチェーンの途絶などにより、関係取引先や地域の経済社会、ひいては我が国全体に多大な影響を与えることとなる。そのため、大規模災害等の発生時における企業の事業活動の継続を図ることは、極めて重要である。
内閣府では、企業の事業継続計画(BCP)の策定を促進するため、平成17年にガイドラインを策定し、本ガイドラインに沿ったBCPの策定を推奨している。ガイドラインの内容は、社会情勢の変化等を踏まえて見直しを行ってきており、最近では、令和5年3月に改定版を公表した。また、企業における取組をより一層促進するため、BCP策定のポイントを分かりやすくまとめた簡易パンフレットや、参考となる取組事例集を作成・周知するなど、業界団体等と連携して事業継続に係る取組の普及を進めている。
内閣府では、BCPの策定率を始めとした民間企業の取組に関する実態調査を隔年度で継続して実施しており、「令和5年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、BCPを策定した企業は大企業76.4%(前回調査(令和3年度)では70.8%)、中堅企業45.5%(前回調査では40.2%)と、ともに増加しており、策定中を含めると大企業は85.6%、中堅企業は57.6%となっている(図表1-9-2)。