1-8 ボランティア活動の環境整備について
発災時には、ボランティア、NPOその他多様な団体が被災地に駆けつけ、きめ細やかな被災者支援を行い、重要な役割を果たしている。内閣府においては、ボランティア・NPO等による被災者支援の活動が円滑に行われるよう環境整備に努めており、近年、大規模災害時には、行政・ボランティア・NPO等の多様な被災者支援主体が連携し、情報の共有、活動の調整をしながら、被災者支援の活動を行うことが定着してきている。
(1)官民連携による被災者支援体制整備の推進
内閣府が令和7年2月に実施した「被災者支援に関するアンケート調査」によると、22都道府県において、官民連携による被災者支援体制(災害中間支援組織等)が整備されていることが確認できた。官民連携による被災者支援体制の育成に向けた動きがないと回答した県では、その理由について、「連携先となるNPO(災害中間支援組織を含む。)が定まっていない」、「連携を推進する予算を確保できていない」という回答が多く見られた。本調査から都道府県域レベルでの災害中間支援組織の設置を促進する上で、官民連携の重要性の発信・普及啓発や先行的な事例の横展開が引き続き求められることが分かった。
内閣府では、行政、社会福祉協議会等の災害ボランティアセンター関係者、NPO等が平時から顔を合わせ、連携・協働する時の諸課題について議論し、相互理解を深められるよう、研修会を実施している。令和6年度は、「多様な主体間における連携促進のための研修会」をオンライン配信により実施し、多様な主体間の連携の必要性について行政、社会福祉協議会、災害中間支援組織等それぞれの立場から説明を行い、40都道府県から約540人が受講した。
(2)官民連携による被災者支援体制整備モデル事業
専門性を有するNPO、企業等の多様な民間主体が、被災者支援の担い手としてその能力を有効に発揮できる環境を整備するためには、都道府県域レベルで、多様な担い手間の活動調整や情報共有等のコーディネーションを行う災害中間支援組織の設置や機能強化を進めていくことが重要である。このため、内閣府ではモデル事業により、災害中間支援組織を設置・機能強化しようとしている都道府県に対する支援を行い、取組の更なる加速化を図った。具体的には、官民連携による被災者支援人材育成・訓練や県域の民間団体のネットワーク化などの取組を進めた。
また、本モデル事業で得た知見やノウハウについて、他の都道府県に対して広く共有し、全国において都道府県域での災害中間支援組織の設置等に向けた取組が進むよう支援した。
(3)避難生活支援リーダー/サポーターモデル研修・避難生活支援コーディネーター育成OJTに向けた検討
近年、自然災害が激甚化・頻発化しているとともに、避難生活が長期化する場合もあり、避難所の設置期間が数週間から数箇月に及ぶ場合もあり、避難生活環境の向上が課題となっている。発災後、様々な業務を抱える中で、避難所の開設後、その運営を市町村等の自治体職員が中心となって担い続けることには限界があり、被災者の避難生活支援に当たっては自助・共助の視点を欠かすことはできない。また、長期化する避難所の運営には専門の知識とスキルが必要となる。
このため、内閣府では、令和3年5月に取りまとめられた「防災教育・周知啓発ワーキンググループ(災害ボランティアチーム)」の提言を踏まえ、意欲のある地域の人材に、体系的なスキルアップの機会を提供し、避難生活支援の担い手となる人材を各地に増やし、地域の防災力強化につなげていく「避難生活支援・防災人材育成エコシステム」の実現に向けた取組を進めている。
令和6年度は、避難生活支援を担う人材である「避難生活支援リーダー/サポーター」の育成を進めるためのモデル研修を全国9地区(青森県八戸市、群馬県館林市、石川県穴水町、長野県箕輪町、愛知県豊明市、三重県いなべ市、岡山県倉敷市、福岡県嘉麻市及び熊本県宇土市)で実施した。モデル研修は事前のオンデマンド学習(1単位20分程度×8単位)と2日間の演習で構成され、演習では、避難所の様子を再現した会場での環境改善演習やロールプレイによる対人コミュニケーション演習等を行った。
また、「避難生活支援コーディネーター」の育成に向けたカリキュラム検討の一環として、モデル研修の受講者や研修の講師候補者を、令和6年能登半島地震の被災地において避難生活の長期化が懸念される避難所に、1週間程度派遣するOJT派遣を実施し、コーディネーターに必要とされる実際の避難所運営支援や避難所の生活環境改善に関する知見やスキルに関する理解を深めた。
(4)被災者支援団体への交通費補助事業
近年、災害が激甚化・頻発化しており、また、首都直下地震や南海トラフ地震等の切迫性も高まっている。我が国においては大規模災害が発生した際に、行政のみでは十分な被災者支援を担うことは困難であり、また、高齢化・過疎化が進む中で被災者支援を量・質ともに充実させることが求められている。例えば、令和6年能登半島地震においては、多くの特定非営利活動法人や災害ボランティア団体等が被災地に駆けつけ、これらの被災者支援団体による避難所の運営支援や炊き出し、家屋保全、被災家屋の片付けなどの支援が実質的に公助の役割を担っていた事例が報告されている。
このような背景を踏まえ、被災地に支援に駆けつけるNPOや災害ボランティア団体等の交通費について支援する「特定非営利活動法人等被災者支援活動費補助金(被災者支援団体への交通費補助事業)」を開始した。本事業については、被災者支援活動を行うボランティア団体等が被災地に駆けつける際に必要となる交通費を補助する事業で、申請1件あたり上限50万円とし、令和6年度(対象期間:令和7年1月10日から3月31日まで)は200件を超える活動を支援した。
(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/kotsuhojyojigyo.html)
