3-2 風水害・土砂災害対策
(1)首都圏等における洪水・高潮氾濫からの大規模広域避難の検討
地球温暖化に伴い、勢力がより強い台風の割合が増えること等が懸念され、今後、大規模広域避難が必要となる大規模水害が発生するおそれが予測されている。また、我が国の三大都市圏には「ゼロメートル地帯」が広く存在しており、堤防の決壊等により大規模水害が発生した場合には、多数の住民が避難することによる大混雑の発生や、逃げ遅れによる多数の孤立者の発生が予想されている(図表3-2-1)。
このことから、平成28年6月に中央防災会議防災対策実行会議の下に設置した「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難検討ワーキンググループ」において、三大都市圏における洪水や高潮氾濫からの大規模かつ広域的な避難の在り方等について検討が行われ、平成30年3月に「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難に関する基本的な考え方(報告)」が取りまとめられた。
(参照: https://www.bousai.go.jp/fusuigai/kozuiworking/)
同報告を踏まえ、内閣府では、大規模水害時の大規模広域避難の実装に向けて、特に行政機関等関係機関が連携して取り組むべき事項について整理するとともに、関係機関間の連携・役割分担のあり方について検討することを目的として、平成30年6月に東京都と共同で設置した「首都圏における大規模水害広域避難検討会」を令和3年度までに7回開催し、令和4年3月に「広域避難計画策定支援ガイドライン(報告書)」を作成した。
(参照: https://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigaiworking/suigaiworking.html)
令和4年6月には、東京都と共同で、首都圏における大規模水害時の広域避難等を円滑に実施するために、平時から各機関の関係を深めた上で、必要な取組事項等について、それぞれの行動等の具体化を図ることを目的として「首都圏における広域的な避難対策の具体化に向けた検討会」を設置し、同ガイドラインに基づき更なる取組の具体化に向けた検討を進めている。
(参照:https://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigaiworking/kouikihinan.html)
(2)盛土による災害の防止に関する検討
令和3年7月に静岡県熱海市で大雨に伴って盛土が崩落し、大規模な土石流災害が発生したことや、土地利用に関する各法律による規制が必ずしも十分でないエリアが存在していること等を踏まえ、「宅地造成等規制法」(昭和36年法律第191号)を法律名・目的も含めて抜本的に改正し、土地の用途(宅地、農地、森林等)にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制するための「宅地造成及び特定盛土等規制法」(以下「盛土規制法」という。)が令和4年5月27日に公布された(令和5年5月26日に施行)。
盛土規制法の概要は以下のとおりである(図表3-2-2)。
盛土規制法に基づく制度の施行に向けて、国土交通省と農林水産省は、盛土等の安全基準のあり方等を検討することを目的とした「盛土等防災対策検討会」を令和4年6月に設置し、令和5年3月末までに同検討会を5回開催し有識者等の意見を踏まえながら検討した。具体的には主に、<1>スキマのない規制とするため、盛土等による災害から守る保全対象である人家等の分布や地形等を踏まえた規制区域の指定の考え方、<2>盛土等の安全性を確保するための許可基準となる技術的基準の考え方、<3>既存の盛土等について安全性を把握するため行う調査の考え方、<4>違法な盛土等や危険な盛土等に対して躊躇なく行政対応をするための方策等について検討し、各種実施要領等の策定を進めている。
盛土規制法の施行後は、同法の規制が速やかに実効性をもって行われるよう、都道府県等による規制区域指定等のための基礎調査や危険な盛土等の安全対策の実施等について支援を行うなど、引き続き盛土等の安全対策を推進する。