第2章 さらなる災害対策の拡充
第1節 災害対策基本法等の一部を改正する法律
1-1 本改正の背景及び必要性について
甚大な災害をもたらした令和元年東日本台風(台風第19号)等においては、避難勧告、避難指示の区別等、行政による避難情報が分かりにくいという課題が顕在化したことに加え、避難しなかった又は避難が遅れたことによる被災、豪雨・浸水時の屋外移動中の被災、高齢者等の被災等も多数発生したため、防災対策実行会議の下に新たに「令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」(以下「令和元年台風第19号WG」という。)が設置された。
令和元年台風第19号WGの報告(令和2年3月)においては、令和2年度出水期※1までに実施すべき対策を示すとともに、令和2年度も引き続き検討を行うべき事項として、「災害対策基本法(昭和36年法律第223号)」に規定される避難勧告及び避難指示の取扱い、高齢者等の避難の実効性確保、広域避難※2等が挙げられた。
(参照:https://www.bousai.go.jp/fusuigai/typhoonworking/index.html)
このため、令和2年度も引き続き検討を行うべきものとされた事項については、令和2年6月より開催している「令和元年台風第19号等を踏まえた避難情報及び広域避難等に関するサブワーキンググループ」(以下「避難情報等SWG」という。)及び「令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難に関するサブワーキンググループ」(以下「高齢者等SWG」という。)において検討が進められ、各報告書が取りまとめられた(特集第2章第2節)ことを踏まえ、これらの検討課題に対応するため、令和3年3月に「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」を第204回国会に提出し、衆参両院の審議を経て、同年4月28日に可決・成立した(令和3年法律第30号)。
本法律では、第一に、災害時における円滑かつ迅速な避難の確保を更に促進するため、
- 避難勧告・避難指示の避難指示への一本化
- 自ら避難することが困難な高齢者・障害者等の避難行動要支援者ごとの避難支援等を実施するための計画である「個別避難計画」の作成の市町村への努力義務化
- 災害が発生するおそれ段階での国の災害対策本部の設置
- 当該本部が設置された場合における災害救助法の適用
- 広域避難に係る居住者等の受入れ等に関する規定の整備
等の措置を講じたものである。
第二に、政府への支援ニーズが高まる中、災害対策の実施体制の強化を図るため、
- 非常災害対策本部の本部長の内閣総理大臣への変更
- 非常災害に至らない規模の災害における内閣府特命担当大臣(防災)を本部長とする特定災害対策本部の設置
- 内閣府における内閣府特命担当大臣(防災)の必置化
等の措置を講じたものである。
なお、本法律の施行期日については、本法律の「公布の日から起算して1月を超えない範囲内において政令で定める日」とされ、大規模な水害等が発生する可能性のある次の梅雨の時期までに施行することとしていたところ、令和3年5月20日に施行された。
各改正事項の詳細については、以下のとおりである。