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令和元年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-4 平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震


1-4 平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震

(1)地震の概要

平成30年9月6日3時7分、北海道胆振(いぶり)地方中東部においてマグニチュード6.7の地震が発生し、厚真町(あつまちょう)で震度7、安平町(あびらちょう)とむかわ町で震度6強、札幌市東区で震度6弱を観測したほか、北海道から中部地方の一部にかけて広い範囲において震度6弱から1を観測した。気象庁は同日「平成30年北海道胆振東部地震」と名称を定めた(参照:https://www.jma.go.jp/jma/press/1809/06h/201809061730_4.html)。

震度7を観測するのは北海道で初めてのことであり、国内では平成28年(2016年)熊本地震以来となる(観測史上6回目)。その後、平成31年3月末までに震度1以上を観測した地震が344回発生した(震度6弱が1回、震度5弱が2回、震度4が21回、震度3が38回、震度2が89回、震度1が193回)。

平成30年北海道胆振東部地震
平成30年北海道胆振東部地震
「平成30年北海道胆振東部地震」の日別地震回数
「平成30年北海道胆振東部地震」の日別地震回数

政府の地震調査研究推進本部下に設置されている地震調査委員会により、今回の地震は「石狩低地東縁断層帯」で発生したものではなく、別断層が最長南北約30kmにずれ動いた「逆断層(片方の岩盤がもう片方に乗り上げる)」型の内陸直下型地震であると評価された。震源付近の道中央南部では東西から押し合う力がかかって地震を起こすひずみが蓄積しやすく、こうした地震が発生しやすいと言われており、同地域では過去にもマグニチュード5~6級の地震が発生している。

南北約30kmの断層のずれが発生したことによる山腹滑落(北海道中央南部)
南北約30kmの断層のずれが発生したことによる山腹滑落(北海道中央南部)
土砂崩れの様子(北海道厚真町(あつまちょう))
土砂崩れの様子(北海道厚真町)
(2)被害状況

地震による死者は42名(厚真町36名、苫小牧市2名、むかわ町1名、新ひだか町1名、札幌市2名)、重軽傷者762名となった。死者を多く出した主な原因は土砂災害(がけ崩れや土石流等)によるもので、主に厚真町で山腹から大規模に土砂が崩れたことにより、民家において多数の死者と重軽症者が発生した。土砂災害の発生状況は227件(全て道内)、うち、がけ崩れは133件(厚真町111件、むかわ町3件等)、土石流等は94件(厚真町90件)となっている(消防庁及び国土交通省情報、平成31年1月28日現在。参照:https://www.bousai.go.jp/updates/index.html#h30)。

住家被害については、震源地周辺や人口が多い札幌市を中心に全壊が462棟(厚真町222棟、札幌市95棟、安平町(あびらちょう)93棟等)、半壊1,570棟(札幌市684棟、安平町351棟、厚真町308棟等)、一部破損が12,600棟(札幌市4,352棟、むかわ町3,147棟、安平町2,412棟、厚真町1,045棟等)であった(消防庁情報、平成31年1月28日現在。参照:https://www.bousai.go.jp/updates/index.html)。

商店街等の家屋被害(むかわ町、安平町(あびらちょう))
商店街等の家屋被害(むかわ町、安平町)

地震の影響で札幌市内の各地で多数の水道管の破裂や地盤沈下が発生し、特に札幌市南東部の丘陵地帯に位置する清田区等の住宅街で数十の民家が損壊した。特に同区内の里塚地区は、火山灰質の砂質土により谷を埋め立てた盛土造成地で、台風第21号の影響により地下水位が高かったところ、地震動により地下水位以下の土の層が液状化し、標高の低い箇所から噴出したことにより住宅被害が大きかった。

水道管が破裂し浸水(札幌市清田区)
水道管が破裂し浸水(札幌市清田区)
地盤沈下により道路が陥没(清田区平岡地区)
地盤沈下により道路が陥没(清田区平岡地区)

また、室蘭市の石油コンビナート施設で火災1件、厚真町の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所施設で火災1件が発生したが、地震発生日の午前中に全て鎮火し、火災による死者はいなかった。(消防庁情報、平成31年1月28日現在。参照:https://www.bousai.go.jp/updates/index.html)。

同発電所(道内発電力の約4割を占める主力発電所)の発電設備は全3基中2基(2号機、4号機)が地震直後に自動的に緊急停止し、残りの1基(1号機)についてはボイラー管の損傷により徐々に出力が低下し、最終的に停止に至った。同発電所の停止や3ルート四回線の送電線事故に伴う水力発電所の停止等により電力供給(送電量)を需要(使用量)が大きく上回り、周波数を調整するための電源の不足等の結果、日本で初めてとなるエリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生した。道内全域において最大約295万戸が停電、ブラックアウトから概ね全域に供給できるまで45時間程度を要した。

また、道内において、水道管破裂の影響等により道内44市町村において最大約6万8千戸の断水が発生したが、電力の復旧や水道管の復旧等により、約1ヶ月後に全地域の断水は解消した。

ライフライン被害
ライフライン被害

なお、道内で10ヶ所の避難所が開設され、最大避難者数は約1万7千名となった。

1ヶ月後には500名を切り、同年12月6日には厚真町の避難所が閉鎖され、同月21日にむかわ町で道内最後の避難所が閉鎖された。

[コラム]
ブラックアウトの発生理由

北海道胆振東部地震では、ブラックアウトによる経済的損失が発生した。「ブラックアウト」はなぜ発生したのだろうか。

電力は「需要」と「供給」のバランスで成り立っており、電力会社は発電量を需要者が使用する量に常時調節しながら送電を行っている。送電の交流周波数(Hz)が大きく上下すると送電に支障が発生する。その理由は、電力供給が需要を上回ると周波数は上がり、需要が供給を上回ると周波数が下がり、発電機のモーターの回転数も連動して遅くなるためで、モーターの異常回転は発電機に大きな負荷がかかることになる。発電機の故障防止のため、一定範囲より遅くなると自動停止するように設計・運営が行われている。震源地付近の苫東厚真火力発電所の1、2、4号機の停止や3ルート四回線の送電線事故に伴う水力発電所の停止等により電力供給(送電量)を需要(使用量)が大きく上回り、周波数を調整するための電源の不足等の結果、日本で初めてとなるエリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生することとなった。

得られた重要な教訓の一つは、企業や病院等においては発電設備を備えておくことが事業継続の観点から重要であったことである。なお、一般家庭においては小型発電機を購入することや、ガス供給等も断絶した際に備え、カセットコンロ及びカセットボンベ等を事前に準備することが重要である。

北海道胆振東部地震による電力供給インフラの被災
北海道胆振東部地震による電力供給インフラの被災

各医療機関にも大きな混乱が生じた。道内の349の病院が停電したため、酸素吸入器や透析治療ができなくなった病院が別病院に患者を搬送するなどの対応に追われた。水や医療用ガスが使用不可となった病院も存在し、多くの病院で外来患者の受入れを中止した。なお、道内に34ヶ所ある災害拠点病院(災害時に24時間体制で初期救急医療が可能な指定病院)は、通常の6割程度の能力をもつ発電設備(非常用電源)があり、3日分程度の燃料備蓄が行われていたため、停電区域内でも自家発電に切り替え、医療業務を継続することができた。

新千歳空港は、地震直後から航空の運航を停止した。結果、札幌市の中心街では外国人観光客を中心に帰宅困難者が多数発生し、宿泊先を確保できない旅行者等は、道庁の庁舎内や札幌市の地下歩道等で数日を明かすこととなった。なお、地震翌日には国内線が半数近く再開し、2日後に国際線の運航も再開した。

また、多くの地域で停電により信号機が稼働せず、道内の長距離トラック運送が停止することとなったため、札幌市などの都市部を中心に道内各地において、食料や日用品、石油燃料等の必要物資が不足する事態となった。道内の貨物列車も地震直後から運行停止となり、収穫期を向かえたジャガイモや玉ねぎ等の農作物の出荷が一時できなくなる事態となったが、即日トラックによる代替輸送を行った。

全域停電により、製造業各社は工場の操業を停止するところが相次ぎ、本州から空路や海路で商品や部品供給を行った企業もあった。停電の影響等から、全国生産量の約5割を占める生乳(牛乳やバターの原料)の生産(搾乳や冷却等)が滞ったことや、道内39ある乳業工場のうち自家発電設備のある2つの工場を除き、全ての乳業工場が稼働を停止したこと等により、全国的に牛乳が品薄の状況となった。

このように、日本の社会活動全てが「電力」に大きく依存していることを国民の誰もが痛感し、災害時の電力問題を解決することが今後の大きな課題として明らかとなった。

[コラム]
農業分野における事業継続の重要性

事業継続体制の整備は、農業分野においても重要な課題である。内閣府が実施した「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の調査結果では、農業・林業・漁業におけるBCP(事業継続計画)策定率は約6%であり、全業種(大企業64%、中堅企業32%)と比べると低い。

北海道胆振東部地震による北海道全域に及んだ大規模停電(ブラックアウト)は、農業分野においても深刻な被害を発生させた。特に、集出荷不可能となった生乳は全道で約2万トン、被害額は約24億円となった。これは、停電により乳業工場の稼働が停止したこと、多くの農場において自動搾乳機の停止や冷却装置(バルククーラー)が使用出来なくなったこと等により生乳を廃棄せざるを得なくなったことや、乳牛の乳房炎が発生したこと等によるものである。

ブラックアウトに対し地域全体の事業継続に向けた取組は、日本全国を見ても進んでいるとは言えない。内閣府は、平成30年度の災害で被災した北海道や大阪府、岡山県、広島県、愛媛県の民間企業を対象に「平成30年度に発生した自然災害に対する企業等の取組に関する実態調査」を行い、近隣企業等とのブラックアウトに対する協力体制について調査を行ったところ、「検討を行いたいが行えていない」が最も多く、多くの企業が意識はあるものの行動に移せていない状況下にあることを確認した。企業の連携した取組の促進が望まれている。

ブラックアウト発生を受け、近隣の企業等との協力体制について検討を行っているか
ブラックアウト発生を受け、近隣の企業等との協力体制について検討を行っているか
体力が低下し、横たわる牛(北海道標茶町(しべちゃちょう))
体力が低下し、横たわる牛(北海道標茶町)
(3)政府等の対応と対策

政府は、平成30年9月6日に官邸対策室を設置し、「胆振地方中東部を震源とする地震に関する関係閣僚会議」を実施した(第2回からは「平成30年北海道胆振東部地震に関する関係閣僚会議」)。同月9日に安倍内閣総理大臣が被災地を訪問、被災状況を確認するとともに、被災者を激励した。同月19日には小此木内閣府特命担当大臣(防災)(当時)を団長とする政府調査団を派遣し、各省庁等においても現地調査を行った。

道内の物流に大きな混乱と障害が生じている中、関係省庁が協力して、指定公共機関等と連携を取り、プッシュ型物資支援を行った。また、石油燃料については、関係省庁や石油企業等が連携し、病院など重要施設からの緊急要請への対応を行った。

総務省においては、被災市区町村応援職員確保システムにより、7県が被災3町に対し、同年10月7日の派遣終了まで延べ2,951名の応援職員を派遣した。

土砂災害の現地調査の様子(北海道勇払郡厚真町)
土砂災害の現地調査の様子(北海道勇払郡厚真町)
調査団として情報確認を行う小此木内閣府特命担当大臣(防災)(当時)
調査団として情報確認を行う小此木内閣府特命担当大臣(防災)(当時)
平成30年北海道胆振東部地震への対応
平成30年北海道胆振東部地震への対応

<物資支援>

<発災直後・初期>官民連携:緊急支援物資対応
<発災直後・初期>官民連携:緊急支援物資対応

農林水産省は、プッシュ型支援により食料・飲料支援を行うとともに、被災された農林漁業者の方々が営農意欲を失わず一日も早く経営再建できるよう、平成30年9月28日に支援対策を決定・公表した(参照:http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/bunsyo/saigai/180928_5.html)。

本対策に基づき、災害復旧事業による農地・農業用施設、漁港施設の早期復旧、森林関係の早期災害復旧や森林内における被害木の伐採・搬出支援、農業用ハウス・機械等の再建や修繕等の営農再開に向けた支援のほか、延べ千人を超える国の職員(水土里(みどり)災害派遣隊)による農地の復旧等に係る技術支援や、停電による二次被害に対する支援などのきめ細かい支援を行った。これらの支援に加え、停電時における生乳の持続可能な生産・流通体制の強化を図るため、農林水産省は酪農家、乳業施設、貯乳施設を対象に緊急点検を実施した。その結果、停電時の対応計画を作成していない施設等の存在が判明したことから、全国10の各ブロックにおいて、指定生乳生産者団体、乳業者等が地域の関係者と連携し、都道府県の区域を越えて広域流通する生乳の実態を踏まえた、停電時の対応計画を作成すること等により、停電時における生乳の生産・流通を確保する体制を整備することとなった。

国土交通省は、全国から延べ3千人を超えるテックフォースを派遣し、被災状況の迅速な把握、被害の発生及び拡大防止、被災地の早期復旧その他災害応急対策に対する技術的な支援・指導にあたった。また、被災自治体が行う公営住宅の空室提供や応急仮設住宅等の供与について支援することにより、被災者の応急的な住まいの確保に取り組んだ。液状化等による宅地被害については、恒久的な地盤強化対策に向け、札幌市等による調査・対策の検討を支援した。厚真町で発生した大規模山腹崩壊等については、砂防災害関連緊急事業等により砂防堰堤(えんてい)等の整備に着手した。また、観光支援として官民を挙げた観光キャンペーン等を行った。

<災害救助法、被災者生活再建支援法、激甚災害の指定>

本災害では、北海道内全域179市町村に災害救助法及び被災者生活再建支援法が適用された。また、激甚災害の指定については、平成30年北海道胆振東部地震による災害として、平成30年9月13日及び21日に指定見込の公表を行い、同月28日に指定政令の閣議決定を行った(附属資料14-5「平成30年北海道胆振東部地震」(附-30~32)参照)。

政府は、引き続き、関係省庁とともに被災地の復旧・復興に全力で取り組んでいく。

[コラム]
建設型応急住宅の多様化~トレーラーハウス・モバイルハウスの活用~

平成30年は7月豪雨や北海道胆振東部地震など、各地で大規模な災害が相次いで発生した。

このため、各災害においては、災害救助法が適用され、災害のため住家を失った被災者のうち、全壊等の自らの資力では住宅を確保することができない方に対して、応急仮設住宅を供与している。

平成30年7月豪雨災害では、岡山県、広島県、愛媛県の3県で賃貸型応急住宅4,406戸に加え、建設型応急住宅は697戸、北海道胆振東部地震では、賃貸型応急住宅173戸に加え、413戸の応急住宅を建設しており、具体的には下表のとおりである。

〇平成30年7月豪雨災害における建設型応急住宅の建設戸数
平成30年7月豪雨災害における建設型応急住宅の建設戸数
〇北海道胆振東部地震における建設型応急住宅の建設戸数
北海道胆振東部地震における建設型応急住宅の建設戸数

このうち、平成30年7月豪雨災害や北海道胆振東部地震において、新たにトレーラーハウスやモバイルハウスについても仮設住宅の一形態として岡山県倉敷市、北海道厚真町、安平町、むかわ町にそれぞれ導入を行った。

導入した自治体にその理由をきいたところ、内装・設備が一体となっており、耐震性に優れていること、断熱性や気密性に優れていること、また、被災者の事情に合わせて、1戸単位で住戸整備ができることなど、有効性が挙げられている。

内閣府では、今後、災害時の応急住宅を多様化する方向で、今回の取り組みについて、迅速性、使い勝手、暮らし易さ、耐久性能等について検証するなど、引き続き、被災者に寄り添ったきめ細かな支援を図っていく。

岡山県倉敷市柳井原仮設団地(51戸)トレーラーハウス・モバイルハウスを供与(写真提供:岡山県倉敷市)
岡山県倉敷市柳井原仮設団地(51戸)トレーラーハウス・モバイルハウスを供与(写真提供:岡山県倉敷市)
北海道むかわ町学生用仮設住宅(36名用)モバイルハウスを供与(写真提供:北海道むかわ町)
北海道むかわ町学生用仮設住宅(36名用)モバイルハウスを供与(写真提供:北海道むかわ町)

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