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令和元年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-3 平成30年台風第21号による災害


1-3 平成30年台風第21号による災害

(1)台風の概要

平成30年8月28日にマーシャル諸島近海で発生した台風第21号は、日本の南を北西に進み、9月4日12時前に徳島県南部に上陸し、平成5年(1993年)の第13号以来25年振りに非常に強い勢力で上陸した台風となった。同日14時前には兵庫県神戸市付近に再び上陸し、速度を上げながら近畿地方を縦断、日本海を北上して温帯低気圧に変わった。台風の接近や通過により、西日本から北日本にかけて非常に強い風が吹くとともに非常に激しい雨が降った。特に同年6月大阪府北部地震により被害を受けていた地域にとっては、災害が連続したため被害は拡大し、経済的損失も大きなものとなった。

台風第21号の経路図
台風第21号の経路図

四国や近畿地方では猛烈な風雨や高潮が発生した。最大風速の全国1位は、高知県の室戸市室戸岬(最大風速48.2m/s)であり、大阪府田尻町関空島(関西空港)の最大風速46.5m/s(最大瞬間風速58.1m/s)、和歌山県和歌山市和歌山の最大風速39.7m/s(最大瞬間風速57.4m/s)など観測史上第1位を更新したところが全国で53地点あった。

最大風速の大きい方から上位5位(9月3日0時~9月5日24時)
最大風速の大きい方から上位5位(9月3日0時~9月5日24時)

また、大阪府、和歌山県、兵庫県、徳島県の各地点において過去の最高潮位を超える値を観測した地点があった。

過去の最高潮位を超える値を観測した地点
過去の最高潮位を超える値を観測した地点
[コラム]
高潮の発生原因と被害について

高潮について
高潮について
(2)被害状況

台風の影響により、全国で土砂災害が12件発生(国土交通省情報、平成30年10月2日現在。参照:https://www.bousai.go.jp/updates/h30typhoon21/index.html)し、記録的な暴風等により死者14名(大阪府8名、愛知県2名、滋賀県2名、三重県1名、和歌山県1名)、重傷者46名の人的被害のほか、近畿圏を中心に8万棟を超える家屋の被害が発生(消防庁情報、平成31年2月12日現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/2018/)した。大阪府では全壊28棟、半壊436棟、一部破損が約6.5万棟と全国で最大の被害となっている。

台風第21号による電柱倒壊(大阪府泉南市)
台風第21号による電柱倒壊(大阪府泉南市)

ライフライン被害も大きく、医療施設では最大で157医療機関の停電と23医療機関の断水が発生(厚生労働省情報、平成30年10月2日現在。参照:https://www.bousai.go.jp/updates/h30typhoon21/index.html)、特に近畿地方では大規模な停電やこれに伴う供給ポンプ停止による断水(地域により、最大1週間程度)が発生したため、飲料水やトイレが使用不可になるなど住民生活に多大な支障が発生した。

関西国際空港においては、強風に伴う高波により浸水被害が生じ、滑走路の機能停止や旅客ターミナル一部の停電等の被害が発生した。また、強風により、大阪湾内に停泊中であったタンカー「宝運丸(ほううんまる)(全長89m、2,591トン)」が流され、同空港と対岸を結ぶ連絡橋に衝突、中圧導管が損傷し、ガスの供給支障が生じた。空路と陸路が遮断されたため、空港内の乗客等が孤立した。

関西国際空港の被害状況の様子
関西国際空港の被害状況の様子
連絡橋に衝突したタンカー
連絡橋に衝突したタンカー

神戸港等においては、高潮により電源が浸水したことで、コンテナクレーンや管理棟が機能しなくなった。結果、ターミナルが休止し、産業活動・経済活動に支障をきたした。また、風によりコンテナの荷崩れや飛散が発生し、岸壁からコンテナが航路・泊地に流出し、船舶の航行に支障をきたした。

なお、大阪湾高潮対策や、淀川防潮堤鉄扉(陸閘(りっこう))、大阪府三大水門(安治川(あじがわ)水門、尻無川水門、木津川水門)等の適切な開閉操作により、大阪市街地は高潮による浸水被害を回避した。

淀川大堰、毛馬排水機場、大阪府三大水門の操作
淀川大堰、毛馬排水機場、大阪府三大水門の操作
(3)政府等の対応

政府は、平成30年9月3日に「関係省庁災害警戒会議」を開催し、同月11日に小此木内閣府特命担当大臣(防災)(当時)を団長とする政府調査団を兵庫県及び大阪府へ派遣した。

関西国際空港は、排水作業及び路面清掃を行い、同月7日には国内線、翌8日に国際線を一部再開し、同月21日にほぼ従前の水準に復旧した。

激甚災害の指定については、台風第19号、第20号及び第21号等による一連の災害として、平成30年9月21日に指定見込の公表を行い、同月28日に指定政令の閣議決定を行った(附属資料14-4「平成30年台風第21号」(附-29~30)参照)。

(4)今後の課題と対策

平成30年の台風第21号等による空港への被害を契機に、国土交通省は「全国主要空港における大規模自然災害対策に関する検討委員会」を設置し、大規模な自然災害が発生した場合においても航空ネットワークを維持し続けることができるよう、大規模自然災害への取組の方向性や、緊急に着手すべき課題等についてとりまとめを行った。今後、空港全体の維持・復旧を目的とした空港BCP(事業継続計画)の再構築や浸水対策等、主要空港の機能確保等に向けた取組を推進していく。なお、関西国際空港においては、空港運営事業者が実施する護岸の嵩(かさ)上げ・排水機能の強化や電源設備等の浸水対策等の短期・中長期の総合的な対策について事業費の1/2を負担する関西国際空港の設置管理者に対し、現下の低金利状況を活かし、財政融資を活用した支援を行うことで、防災機能の強化を推進する。

また、台風第21号による教訓を踏まえた高潮・暴風対策を全国の港湾で展開するため、国土交通省は有識者による検討委員会を設置し、「港湾の堤外地等における高潮リスク低減方策ガイドライン」の充実を図った。また、港湾における主要な外貿コンテナターミナル等の重要インフラの緊急点検により、全国の主要な港湾において、高潮等に対してコンテナ流出リスク、電源浸水リスク等の課題があることが判明したため、ターミナルの浸水対策や港湾BCP(事業継続計画)の充実化に取り組んでいる。

タンカー事故を受け、海上保安庁は、有識者を交え再発防止策を検討するため、「荒天時の走錨(そうびょう)等に起因する事故の再発防止に係る有識者検討会」を平成30年10月に設置し、同年12月末、中間報告において「関西国際空港周辺海域における荒天時の走錨等については、法規制をもって再発防止にあたるべき」との提言を踏まえ、平成31年1月31日から同空港周辺海域での法規制の運用を開始した。同年3月19日の報告において「海域を取り巻く環境等を勘案しつつ、海事関係者及び関係地方公共団体等とともに、検討が必要な海域の事故防止対策を進めていくべき」との提言を受け、関西国際空港周辺海域以外を含めた海域における再発防止のための対策を検討することとしている。


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