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平成30年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-5 住民主体の取組(地区防災計画制度の普及・啓発)


1-5 住民主体の取組(地区防災計画制度の普及・啓発)

災害時に、自分の身は自分で助ける「自助」や、近所の人等と助け合う「共助」による取組が「公助」と連携して有効に機能するためには、平常時から住民が居住地域の地域特性やリスクを把握し、近隣の人々との信頼関係を構築しておくことが必要である。このような住民の自発的な活動を促すため、内閣府は災害対策基本法の改正を行い、平成26年4月より「地区防災計画制度」を開始した。これによって、地区居住者等(居住する住民と事業所を有する事業者を含む)が、地区防災計画(素案)を作成し、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めるよう、市町村防災会議に提案できることとなった。

(1)地区における取組の推進

内閣府は、「地区防災計画制度」の普及のため、平成28年度までの3年度に渡り計44地区を対象として「モデル事業」を実施し、住民による計画策定の取組を促進してきた。3カ年度のモデル事業により、平成30年3月31日現在で44地区のうち約6割の27地区が地区防災計画(素案)を策定し、うち、16地区については市町村地域防災計画を修正し、地区防災計画として反映されることとなった。なお、市町村地域防災計画に定められた全国における地区防災計画は平成29年4月1日現在において984となっている(消防庁調べ)。

平成29年度については、モデル事業の成果と課題をまとめ、地区防災計画の策定までの知見を詳しく示した「地区防災計画モデル事業報告」(平成28年度末公表)をもとに、全国各地での説明会や「防災推進国民大会2017」におけるセッション「あの時地区防災計画があれば・・・」の場などで引き続き普及啓発を行った。(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/index.html

(2)「地区防災計画フォーラム2018」の開催

内閣府は、平成30年3月24日東京都千代田区(ホテルルポール麹町)において、近年発生した災害の特性や時代実情を踏まえ、地区防災計画の未来像を考察する「地区防災計画フォーラム2018~地区防は進化し続ける~」を開催した。同フォーラムでは、地区防災計画の策定を推進するため、全国の最新事例等を紹介し、計画策定には、策定主体、プロセス、計画内容等に様々な手法があることを示した。特に、高層マンションにおける防災の取組(仙台市や首都圏(東京都港区、中央区日本橋))の事例を紹介し、耐震性が高い住居においては、予め各家庭が必要な備蓄を行っておくことで、災害時に元の住居で生活する「在宅避難型」が推奨されるケースもあることや、企業が中心となって地区防災計画の策定に向かって取り組むことも有効であること等が提案された。また、取組の継続性を保つための参考としてもらうため、これまで行った内閣府モデル地区の現在の活動状況の報告も行われた。

地区防災計画フォーラムの様子
地区防災計画フォーラムの様子
「いちはら防災100人会議」の様子
「いちはら防災100人会議」の様子
(3)地区防災計画策定に向けた市町村の取組

各自治体においても、内閣府モデル事業を参考にしながら自発的な住民啓発への取組みを順調に進めてきている。例えば、千葉県市原市では、自主防災組織等から推薦があった住民60名と無作為抽出で選んだ市民2,000人からの応募者による「いちはら防災100人会議」を平成30年2月から開始している。同会議では、地区防災計画策定までのワークショップ等を毎月1回のペースで開催し、住民が地域の防災について考える場を提供している。

また、愛知県岡崎市は、内閣府のモデル地区である矢作北学区(平成27年度)、藤川西部地区(平成28年度)を支援した経験を活かし、同市内の他地区でも独自に地区防災計画の策定を目指すモデル事業を実施した。この結果、これまで計8地区について地区防災計画(素案)が作成された。同市は、内閣府が平成26年に作成した「地区防災計画ガイドライン」(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/index.html)を元に市の地域特性を踏まえた策定マニュアルを作成し、住民によるワークショップの開催方法等を具体的に解説し、住民が理解しやすいように啓発を行っている。
(参照:http://www.city.okazaki.lg.jp/1550/1555/262000/p019718.html

地区防災計画ガイドライン(内閣府作成)
地区防災計画ガイドライン(内閣府作成)
策定マニュアル(岡崎市作成)
策定マニュアル(岡崎市作成)

また、住民の防災意識を向上させるため、各市町村では、住民参加型の啓発セミナー等を開催している。内閣府では、地区防災計画の策定の前提となる「防災意識」を醸成するため、防災活動に関心が低い住民に対し、こうした市町村の取組と連携し、効果的な手法を検討するための実証も行っている。

平成28年度は静岡県浜松市中区を実証地区に選定し、参加住民を無作為抽出により選出する手法を用いて、分科会方式により「浜松市防災住民協議会」を開催した。この実証結果を踏まえ、平成29年3月に、「無作為抽出を活用した住民防災意識向上のための取組に関する手引き」を公表した。
(参照:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kenkyu/miraikousou/index.html

同住民協議会に参加した住民の満足度は高かった一方で、事後アンケートで「分科会の人数が多すぎて発言しにくかった」「被災経験談が聞けたら、もっと自分ごととして考えられるのでは」等の意見が寄せられた。こうした意見をもとに前年度の手法を見直し、平成29年度からは小グループの討議形式で行うこととした。

平成29年度は、神奈川県中郡二宮町において「二宮町防災ワークショップ」を開催し、引き続き無作為抽出により、初めて防災ワークショップへ参加する14名を含む20代~70代の住民(男女計30名)を集めた。同ワークショップでは、被災経験談の傍聴やクロスロードゲームの実施等、日頃防災に関わる機会が少ない住民に適した内容で実証を行った。事後アンケートでは、「学んだことを、家族や友人と共有したい」「自宅の備蓄を改めて確認したい」「家族と避難場所の確認に行きたい」等の意見があった。

このように、様々な方法ではあるが、各市町村は住民との信頼関係を構築しながら、連携して地区防災計画策定のための諸活動に取り組んでいる。各市町村はこれら地区の後方支援を行い、各市町村や都道府県がセミナー等の積極的な開催を通じて情報を地区内外へ水平展開することで、減災・予防意識が伝播的に醸成されていくと考えられる。内閣府のモデル事業やこうした各自治体の取組を参考に、各地区が自ら自発的に計画策定に着手することが望まれる。

内閣府としても、今後も本制度について周知徹底を図るべく、引き続き普及啓発に努めることとしている。


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