1-6 ボランティア活動の環境整備について
ボランティア元年と呼ばれる阪神・淡路大震災以降、ボランティアが被災地で行う活動が浸透し、応急対応や復興支援において重要な役割を果たすようになった。内閣府においては、ボランティアによる被災者支援の活動が円滑に行えるような環境整備に努めており、平成28年熊本地震や平成29年九州北部豪雨等において、ボランティアによる活動が定着かつ進化していることが認められている。
(1)防災ボランティア活動の環境整備に関する検討会
内閣府では、平成27年度から28年度にかけて「広く防災に資するボランティア活動の促進に関する検討会」を開催し、ボランティア活動促進のための課題を整理し提言をとりまとめた。この提言を受け、平成29年度には「防災ボランティア活動の環境整備に関する検討会」を開催した。
同検討会において、防災における行政とNPO・ボランティア等との連携・協働を促進するために、主に行政職員が行う事項を網羅的に書き下した「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック」を作成した。本ガイドブックでは、NPO・ボランティア等と行政が連携するための基本的な考え方や、連携を推進するための具体的な取組等を、平時・災害時に分けて網羅的に説明している。
本ガイドブックは、行政職員とNPO・ボランティア等との連携の基本的な考え方、平時・災害時における連携の取組事例、連携にあたっての望ましい姿を提示することで、行政職員が、より多くの防災に関わる主体と繋がり、地域ごとの防災・減災の施策を考えることができるよう作成されたものである。
本ガイドブックは、災害時には、行政のみならず、災害ボランティアセンター、民間の支援団体、中間支援組織等の多様な主体が支援に当たることから、これらの主体間の連携が重要であることを踏まえ、災害の連携体制や、平時からの顔が見える関係を構築しておくことの重要性について述べている。
○
被災者支援は行政の責務
だが、行政の負担を軽減し適切な被災者支援を行うためには、NPO・ボランティア等の
多様な支援主体との連携・協働
が必要。
○多様な支援主体による支援活動は、社会福祉協議会が設置する
災害ボランティアセンターを通じたもの
のほか、
多様な経路
で行われるようになっている。
○災害の規模が大きくなるほど、
地元(被災地内)の支援
に加えて、
外部(被災地外)からの支援
の必要性が増す。
○数多くの支援主体が多様な経路で行う
支援活動の全貌を把握
し、これらの団体間の
情報共有・活動調整
を行って、ヌケ・オチ・ムラのない適切な支援活動につなげることが重要。このためには、
中間支援組織の役割が重要
。
○多様な支援主体によって行われる支援活動の情報共有・活動調整を行う
「情報共有会議」
を通じて、「行政」「社協(災害ボランティアセンター)」「NPO等(中間支援組織)」の
「三者連携」
が深まる事例が増えており(熊本地震、九州北部豪雨)、こうした取組を進めることが重要。
○このためには、平時の段階から、地元の行政、社協、NPO等が連携する場を設け、
「顔の見える関係」を構築
し、外部支援を円滑に受け入れるための体制づくりが必要。
○
行政内
でも防災・危機管理、福祉、NPO・市民活動、まちづくり等の関係部局が平時から連携するとともに、
行政間
の広域応援・連携についても事前の取組が必要。
<本ガイドブックは、以下URLから入手できる。>
(参照:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/bousai_volunteer_kankyoseibi/index.html)
(2)行政とボランティアによる訓練等
災害時に行政とボランティアの連携・協働が円滑に行われるためには、訓練やワークショップを通じて、平時から交流や相互理解を図っておくことが必要である。内閣府では、訓練やワークショップを開催し、行政とボランティア関係者が直接顔を合わせて連携・協働における諸課題について話し合い、相互理解を深めるための取組を行っている。
平成29年度は、内閣府と広島市災害ボランティア活動連絡調整会議により「行政とボランティアによる連携ワークショップ」を開催した。広島市では、大規模災害時に円滑かつ効率的にボランティア活動が行えるように、災害ボランティア本部の設置を「広島市災害ボランティア本部運営マニュアル」に規定している。今回のワークショップでは、規定内容をもとに、発災後のボランティア本部の役割や具体的な活動のイメージを共有することを目的とした。参加者からは、本マニュアルに即してシミュレーションを行ったことにより、マニュアルの不足部分等が判明し、外部からの支援に対してどのように対応すべきか等について考察する良い機会となった旨感想が述べられた。
ボランティアツアーについて
「ボランティアツアー」という言葉が名称として誕生したのは、東日本大震災から約2ヶ月後にあたるゴールデンウィークに、バスで支援活動に行くという旅行会社の企画からである。これまでボランティア行為を行うための同ツアーについて、旅行業法上の取扱いが限定的であったため、社会福祉協議会、NPO法人から催行しにくいとの指摘が出ていた。
平成29年7月、観光庁は、旅行業法の規制目的たる旅行者の安全・利便性の確保を図りつつ、緊急性・公益性の高いボランティアツアーについては円滑かつ迅速に実施できるよう、現行の旅行業法に抵触せずに運送・宿泊サービスを提供できる方法について通知した。同通知により、ボランティアツアーの主催者は、発災を受けて組成されたボランティア団体、又は発災を受けて参加者を募集するNPO法人や自治体、大学等とすること、主催するNPO法人や大学等は、事前に参加者名簿を被災又は送り出しの自治体か社会福祉協議会等準公的団体に提出すること、主催する自治体又は準公的団体も同様に参加者を把握すること、その他責任者設置等の適用に必要な措置を確保している場合には、主催者がボランティアツアーの募集や料金収受を行った場合でも、「日常的に相互に接触のある者」として従来認めていた旅行業法の適用外(団体内部での行為)として同様に認められることとなった。なお、対象とすべき災害や適用期間については観光庁が随時示すこととしている。