平成30年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-7 事業継続体制の構築


1-7 事業継続体制の構築

(1)中央省庁の業務継続体制の構築

国の行政機関である中央省庁においては、平成26年3月に「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」が閣議決定されたことを受け、本計画に基づき、省庁業務継続計画について適宜見直しを行っている。内閣府においては、本計画に基づき、省庁業務継続計画について有識者等による評価を行った。さらに、平成29年9月に「中央省庁の庁舎における燃料の模擬供給訓練」を、同年10月に「立川広域防災基地周辺における中央省庁の災害対策本部設置準備訓練」を行った。このような取組を通じて、首都直下地震発生時においても政府として業務を円滑に継続することができるよう、業務継続体制を構築していくこととしている。

(2)地方公共団体の業務継続体制の構築

地方公共団体は、災害発生時においても行政機能を確保し業務を継続しなければならない。このため、地方公共団体において業務継続計画を備えておくことは極めて重要である。地方公共団体における業務継続計画の策定状況は、都道府県で昨年度末に100%に達した。市町村では平成29年6月時点で前回調査から22ポイント上昇し、64%となっている。(図表1-7-1)。

内閣府では、市町村に対して業務継続計画の策定を支援するため、小規模な市町村であっても業務継続計画を容易に策定できるよう平成27年度に「市町村のための業務継続計画作成ガイド」を策定したほか、過去の災害事例等を踏まえて、「地震発災時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説」を「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」として改訂し、地方公共団体に通知している。また、内閣府・消防庁共催で、市町村の担当職員を対象とした業務継続計画策定研修会を平成27年度から毎年開催している。これらの取組を通じて、引き続き、地方公共団体の業務継続体制の構築を支援していく。

また、大規模災害が発生した場合、被災した市町村が膨大な災害対応業務に単独で対応することは困難な状況となる。こうしたことから内閣府では、「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」を平成29年3月に策定し、公表したところである。地方公共団体においては、業務継続体制とともに、国、地方公共団体、民間企業、ボランティア団体等からの支援を円滑かつ効果的に受け入れるための受援体制も構築する必要がある。

図表1-7-1 地方公共団体における業務継続計画の策定率
図表1-7-1 地方公共団体における業務継続計画の策定率
(3)民間企業の事業継続体制の構築状況

平成23年に東日本大震災が発生し、平常時の経営戦略に組み込まれる事業継続マネジメント(Business Continuity Management(以下「BCM」という。)の重要性が明らかとなった。このため、内閣府は、平成25年にBCMの考え方を盛り込んだ改訂版としての「事業継続ガイドライン第三版-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」を公表し、現在はその普及と、ガイドライン第三版に沿った事業継続ガイドラインの策定を推進している。

また、現在は具体的な政府目標として、「国土強靱化アクションプラン2017」において平成32年までに事業継続計画(Business Continuity Plan。以下「BCP」という。)を策定している大企業の割合をほぼ100%(全国)、中堅企業の割合は50%(全国)を目指すこととしている。このため、内閣府では、BCPの策定割合を始めとした民間企業の取組に関する実態調査を隔年度おきに継続調査しており、平成30年3月に実施した「平成29年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の調査結果(回収数:計1,985社)では、BCPを策定した企業は大企業64.0%(前回調査は60.4%)、中堅企業31.8%(前回調査は29.9%)とともに増加しており、策定中を含めると大企業は8割強、中堅企業は5割弱がBCP策定に取り組んでいる(図表1-7-2、図表1-7-3)。

図表1-7-2 大企業と中堅企業のBCP策定状況
図表1-7-2 大企業と中堅企業のBCP策定状況
図表1-7-3 企業調査(平成29年度)のアンケートの回収状況(大企業・中堅企業)
図表1-7-3 企業調査(平成29年度)のアンケートの回収状況(大企業・中堅企業)

今回調査で、「BCPを策定(予定)した最も大きなきっかけ」を聞いたところ、回答があった大企業と中堅企業(計1,306社)共に、「過去の被災経験から」よりも「近年多発する自然災害への備え」の回答結果が多数となっており、「備え」としての動機意識があると考えられる。策定後のBCPを「毎年必ず見直している」は大企業で38.0%、中堅企業は23.8%であり、「毎年ではないが定期的に見直している」は大企業36.1%、中堅企業は37.6%と、中堅企業であっても約6割が定期的に見直していることがわかる。

また、被災した大企業・中堅企業(計824社)に対し、日本で発生した自然災害時にBCPが役に立ったかどうか聞いたところ(図表1-7-4)、「とても役に立った」「少しは役に立ったと思う」が大企業59.0%、中堅企業46.1%であったのに対し、「全く役に立たなかった」は大企業が1.4%、中堅企業が0%であり、BCPの有効性を実感されていることが分かった。

図表1-7-4 自然災害時にBCPが役に立ったかについての回答状況
図表1-7-4 自然災害時にBCPが役に立ったかについての回答状況

さらに、「災害対応で今後新たに取り組みたいこと」は何か聴取したところ(図表1-7-5)、大企業、中堅企業ともに「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入・買増し」が最も高く、大企業63.4%、中堅企業は52.5%であった。なお、次いで多かった回答が大企業では「BCP策定・見直し」(62.4%)であったのに対し、中堅企業は「安否確認や相互連絡のための電子システム(含む災害用アプリ等)導入」(42.0%)であり、中堅企業の「BCP策定・見直し」の回答は上位から4番目(36.6%)であった。「BCPの策定・見直し」以外にも、BCPに関連すると想定される項目(例:「災害対応担当責任者の決定、災害対応チーム創設」「本社機能・営業所等の代替施設・建屋の確保または準備」「重要な要素(経営資源)の把握」等)の項目も、回答が多かった。

内閣府においては、今回の調査結果を参考にしながら、企業のBCP策定及びBCM推進に向け、今後とも策定率向上のための普及啓発に取り組んでいく。

図表1-7-5 災害対応で今後新たに取り組みたいこと(n=1,306)
図表1-7-5 災害対応で今後新たに取り組みたいこと(n=1,306)
【コラム】
「東京都の受援応援計画」

大規模災害が発生した場合、被災した市町村が、膨大な災害対応業務を単独で実施することは困難な状況となる。このため、地方公共団体は平時から国、地方公共団体、民間企業、ボランティア団体等からの人的・物的支援をいかに円滑に受け入れ、災害対応に有効活用していくのか検討し、受援体制を整備しておくことが重要である。

東京都は平成30年1月に「東京都災害時受援応援計画」を発表した。平成28年熊本地震の際に派遣した職員や被災自治体へのヒアリング等を通じてとりまとめた「熊本地震支援の記録(平成28年11月)」を踏まえた内容となっている。首都直下地震等の大規模災害が東京で発生した場合、過去の災害とは比較にならない規模の膨大な災害対応業務が生じることが想定される。震度6弱以上の地震(島しょを除く。)が発生した場合は、「東京都災害対策本部」が自動的に設置されるが、この計画では広域連携協定を締結している全国知事会、九都県市、21大都市との間の災害発生時の相互応援の枠組みの確保や受援応援を担う部門の手順を明確に定めている。

東京都は今後、本計画で整理した事項を図上訓練等で検証するとともに、区市町村等関係団体との意見交換を通じて見直しを随時行い、首都直下地震等発生時における都の受援応援体制の一層の強化を図ることとしている。

「東京都の受援応援計画」
「東京都の受援応援計画」

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