平成30年版 防災白書|特集 第3章 第3節 地域による対応


第3節 地域による対応

平成29年7月九州北部豪雨において、行政からの情報を待たない自主的な避難や近隣住民等からの避難を促す声かけ等による避難がみられるなど、今回得られた教訓の一つとして「地域による対応」に着目すべき行動があったことを最後に紹介したい。

福岡県朝倉市では、行政と住民の協力による市内全地区の「自主防災マップ」が平成26年度までに作成・全戸配布されていたこと、住民による地域の危険箇所等の確認や避難場所の周知ができていたことにより、避難場所への避難行動がとられていた。

福岡県東峰村では、各地区で平常時に自治体から提供された避難行動要支援者名簿の情報を基に、避難行動要支援者支援計画が作成されており、今回の災害時に当該支援計画による避難支援等が行われた。また、平成27年度から年1回(平成28年度からは毎年6月)、村民を対象とした避難訓練が実施されており、村民の約半数が参加していた。今回の災害の直前にこの避難訓練が実施されていたことも住民の円滑かつ迅速な避難につながったと考えられる。

大分県日田市では、過去の災害事例を踏まえて河川監視カメラを設置していたことにより、現地状況を確認し、避難勧告等の発令の際に参考とすることができていた。また、平成24年7月に発生した九州北部豪雨災害の教訓を踏まえ、地域の防災力の強化に向け、自主防災組織等の地域防災の要となる組織やリーダーの育成に取り組んでいた。今回の災害では、こうした組織やリーダーにより、行政からの情報を待たずに地域の住民への避難の呼びかけがなされ、住民の避難行動につながった。

全国どこでも近年経験した災害を超える想定外の災害が起こりうる。その際には、住民がこうした自助・共助の取組を平時から行なっておく習慣(心がけ)が必要である。「自主防災組織の手引-コミュニティと安心・安全なまちづくり-(消防庁)」、「地区防災計画ガイドライン(内閣府)」、「地区防災計画モデル事業報告-平成26~28年度の成果と課題-(内閣府)」(参照:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/index.html)等を参考として、住民自ら防災知識の普及・啓発に努め、地域で協力して自主防災マップの作成、ハザードマップの確認や街歩きなどによる地域の災害危険箇所の把握、防災訓練の定期的な実施、住民・行政・専門家等が一体となったワークショップ等を通じた地区防災計画策定への取組が今後ますます重要となっていくと考えられる(第1部第1章第1節1-5参照)。

また、行政側も、避難場所及び避難経路について、自主防災マップ等の作成過程や配布等を通じて住民への周知・啓発を図るとともに、行政からの情報を入手できない場合に備え、これらや防災ツール等を活用し、避難場所・避難経路等の状況を踏まえて住民自らの判断で早期に避難する重要性や必要性について住民の理解を平時から深めていくことが必要である。


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