平成30年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-1 国民の防災意識の向上


第1部 我が国の災害対策の取組の状況等

我が国は、その自然的条件から、各種の災害が発生しやすい特性を有しており、平成29年1年間でも、7月に発生した九州北部豪雨をはじめとして各種の災害が発生した。第1部では、最近の災害対策の施策、特に平成29年度に重点的に実施した施策の取組状況を中心に記載するものとする。

第1章 災害対策に関する施策の取組状況

第1節 自助・共助による事前防災と多様な主体の連携による防災活動の推進

1-1 国民の防災意識の向上

我が国は自然災害が多いことから、平常時には堤防等のハード整備やハザードマップの作成等のソフト対策を実施し、災害時には救急救命、平成28年(2016年)4月の熊本地震で活用したプッシュ型物資支援、職員の現地派遣による人的支援、激甚災害指定や被災者生活再建支援法等による資金的支援等、「公助」による取組を絶え間なく続けているところである。

しかし、現在想定されている南海トラフ地震のような広域的な大規模災害が発生した場合には、公助の限界についての懸念も指摘されている。事実、阪神・淡路大震災では、7割弱が家族も含む「自助」、3割が隣人等の「共助」により救出されており、「公助」である救助隊による救出は数%に過ぎなかったという調査結果がある(図表1-1-1)。今後、人口減少により過疎化が進み、自主防災組織や消防団も減少傾向にあるなか、災害を「他人事」ではなく「自分事」として捉え、国民一人一人が減災意識を高め、具体的な行動を起こすことが重要である。

図表1-1-1 阪神・淡路大震災における生き埋めや閉じ込められた際の救助主体等
図表1-1-1 阪神・淡路大震災における生き埋めや閉じ込められた際の救助主体等

減災のための具体的な行動とは、地域の災害リスクを理解し、家具の固定や食料の備蓄等による事前の「備え」を行うこと、機会を活用して避難訓練に参加し、適切な避難行動を行えるように準備すること等が考えられる。また、発災時には近所の人と助け合う等、「自助・共助」による災害被害軽減のための努力も必要である。

「自助・共助」の重要性は、特に東日本大震災以降国民にも認識されるようになっている。内閣府が実施した世論調査結果によれば、「自助・共助・公助」のうち重点を置くべき防災対策としては、平成14年調査時には「公助」に重点を置くべきと考えている方の割合は24.9%であったが、平成29年調査時では「公助」は6.2%に減少する一方、「自助」は平成14年の18.6%から平成29年の39.8%に、「共助」は平成14年の14.0%から平成29年の24.5%にそれぞれ増加しており、「公助」よりも「自助」「共助」に重点を置くべきとする方の割合が高まっている(図表1-1-2)。また、年齢別に見ると、平成29年調査時において、「18~29歳」では「自助」が25.0%、「共助」が31.0%と「共助」の割合が高いのに対し、「70歳以上」では「自助」が51.2%、「共助」が22.3%と「自助」の割合が高くなっており、高い年齢層ほど「共助」より「自助」を重視する傾向にある(図表1-1-3)。

図表1-1-2 重点をおくべき防災対策(自助・共助・公助の調査時点別比較)
図表1-1-2 重点をおくべき防災対策(自助・共助・公助の調査時点別比較)
図表1-1-3 重点をおくべき防災対策(自助・共助・公助の年齢別比較)
図表1-1-3 重点をおくべき防災対策(自助・共助・公助の年齢別比較)

「自助・共助」を考える上では、家族や身近な人と話し合いを持つことも重要である。ここ1~2年ぐらいの間に、家族や身近な人と、災害が起きたらどうするかなどについて話し合ったことがある方の割合は、平成29年調査時において57.7%と大半の方が話し合いをしており、平成14年調査時の34.9%に比べると大きく増加したが、東日本大震災からまだ間もない平成25年調査時の62.8%と比べるとやや減少している。これを男女別に見ると、平成29年調査時において、男性の50.4%、女性の64.1%が家族や身近な人との話し合いを持つことが「ある」と答えている(図表1-1-4)。年齢別では、「40~49歳」が69.3%と最も高く、次いで「30~39歳」の66.3%、一方で最も低いのは「70歳以上」の49.4%、次いで「18~29歳」の53.6%となっており、30歳代、40歳代のいわゆる子育て世代において家族との話し合いをしている割合が高い傾向にある(図表1-1-5)。

図表1-1-4 災害についての家族や身近な人との話し合い(男女別)
図表1-1-4 災害についての家族や身近な人との話し合い(男女別)
図表1-1-5 災害についての家族や身近な人との話し合い(年齢別)
図表1-1-5 災害についての家族や身近な人との話し合い(年齢別)

なお、「自助・共助」による防災の取組を行う際、各人が自ら情報を入手できることが重要である。防災に関して活用したい情報の入手方法を調査したところ、平成29年調査では「テレビ」が81.3%と最も高く、次いで「ラジオ」47.9%、「新聞」32.6%、「防災情報のホームページ・アプリなどの情報」30.5%、「ツイッター・フェイスブックなどの情報」22.8%などとなっている。これを年齢別にみると、全年齢で「テレビ」が最も高くなっているものの、「テレビ」に次いで多い情報の入手手段は、29歳以下の若い世代では「ツイッター・フェイスブックなどの情報」「ホームページ」、60歳以上の世代は「ラジオ」「新聞」であるなど、年齢層により活用したい情報媒体は大きく異なっている(図表1-1-6)。いずれにしても、年代による情報源の違いはあるも、様々な情報手段をもって防災に関する情報を入手しようとしていることが分かる。

今後、内閣府や関係省庁においては、こうした調査データを参考に「意識」を「備え」(具体的行動)に結び付けるための周知活動や施策等を検討する必要があるが、本節では、自助・共助のうち、「事前防災」に焦点を当て、多様な主体との連携による様々な施策を紹介することとする。

図表1-1-6 防災に関して活用したい情報の入手方法
図表1-1-6 防災に関して活用したい情報の入手方法
【コラム】
「大規模災害団員」

平成25年に「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が成立し、本法律の趣旨を踏まえ、消防団の充実強化に向けた様々な取組が行われてきている。今後、首都直下地震等の大規模災害の発生が危惧されているため、消防庁は、大規模災害時のマンパワー確保等のために必要な消防団員のあり方や多様な人材の確保方策等について検討を行い、平成30年1月に「消防団員の確保方策等に関する検討会報告書」を公表した。

同報告書において、「大規模災害団員」は、大規模災害時に新たに業務が発生したり、人手不足となる場合に限り出動するものとされ、その具体的な活動内容としては、災害情報の収集・報告や避難誘導・安否確認等を担うことを想定しており、また、そのなり手として、消防職団員OBや自主防災組織の構成員等が考えられる。

この他、各地域の事業所の従業員等が「大規模災害団員」として、重機を所有する建設会社等が重機を活用した道路啓開を実施することや、ドローンやバイク等を所有する事業所・団体が情報収集活動を実施すること等も考えられる。

消防庁は、当該報告書を踏まえ、平成30年1月19日に、都道府県知事及び市町村長に対して、「大規模災害団員」制度の導入促進を含めた消防団員の確保に向けた取組に関する通知と総務大臣書簡を発出したところであり、今後も、様々な機会を捉えて地方公共団体などに働きかけを行うなど、消防団の充実強化に取り組むこととしている。

大規模災害団員の活動内容例
大規模災害団員の活動内容例

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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