第2章 九州北部豪雨災害について
第1節 概要と被害状況
平成29年7月5日から6日にかけ、対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んだ影響等により、線状降水帯が形成・維持され、同じ場所に猛烈な雨を継続して降らせたことから、九州北部地方で記録的な大雨となった。
九州北部地方の5日から6日までの総降水量は、多いところで500mm(ミリ)を超え、同月の月降水量平年値を超える大雨となったところがあった。また、24時間降水量の値が朝倉(福岡県朝倉市)で545.5mm、日田(大分県日田市)で370.0mmとなり、観測史上1位の値を更新するなど、これまでの観測記録を更新する大雨となった。
この記録的な大雨により、福岡県、大分県の両県では、死者40名、行方不明者2名の人的被害のほか、1,600棟を超える家屋の全半壊や床上浸水など、甚大な被害が発生した(消防庁情報、平成30年2月22日現在(参照:http://www.fdma.go.jp/bn/2017/detail/1007.html)、附属資料15(附-26)参照)。なお、この地域では平成24年7月にも記録的な大雨により大きな被害が発生しており、北部九州5県で死者30名、行方不明者2名の被害を出している。
また、水道、電気等のライフラインのほか、道路や鉄道、地域の基幹産業である農林業にも甚大な被害が生じた。また、発災直後には2,000名を超える方々が避難生活を送ることになった。
特に福岡県朝倉市内の筑後川右岸の支川において堤防の決壊、大量の土砂や流木による河道埋塞等により浸水被害が発生した。中でも大きな被害となったのが朝倉市杷木松末地区・杷木星丸地区・杷木林田地区などの赤谷川流域であり、流域に急激に激しい雨が降ったために山地部で斜面崩壊や土石流が発生し、これにより大量の土砂や流木が中下流部まで流れたことにより、河道閉塞と相まって多くの人的被害・家屋被害が発生したものと考えられる。死者・行方不明者のうち、半数以上の22名が同市内の赤谷川流域内で被災したものと推定され、また、遭難場所として「屋内」が多かったことなどが被害の特徴と考えられる。