平成25年版 防災白書|第2部 第3章 2 震災対策


2 震災対策

2-1 地震に関する調査研究

(1)地震調査研究の推進

文部科学省においては,地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣)において平成21年4月に策定された,「新たな地震調査研究の推進について―地震に関する観測,測量,調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策―」に基づき,強い揺れに見舞われる可能性が高い地域における重点的調査観測や,追加・補完調査を実施する等,地震調査研究を推進した。

(平成23年度決算額 1,518百万円)

独立行政法人防災科学技術研究所においては,地震観測データを活用した地殻活動の評価及び予測に関する研究並びに地震動予測・地震ハザードの評価手法の高度化に関する研究を行った。

(2)地震・津波観測監視システム

文部科学省においては,東南海地震の想定震源域である紀伊半島熊野灘沖に設置した地震計,水圧計等各種観測機器を備えたリアルタイム観測可能な高密度海底ネットワークシステムの運用を行うとともに,南海地震の想定震源域である紀伊水道沖にも,地震計,水圧計等を備えた高密度海底ネットワークシステムの構築に着手した。

(平成23年度決算額 1,290百万円)

(3)地震予知に関する基礎的研究

文部科学省においては,関係国立大学法人における地震予知に関する基礎的研究の推進を図るとともに,「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について(建議)」(平成21年度~平成25年度)の進捗状況を取りまとめた。

(4)地球内部ダイナミクス研究

独立行政法人海洋研究開発機構においては,地震・火山活動等の固体地球科学における諸現象を解明するため,海洋性プレート沈み込み帯の構造,地震活動等の調査研究を大学等と連携し,国際的・学際的視野に立った研究を実施した。平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震については,発生後速やかに震源域において反射法地震探査,測深器を用いた海底地形の調査等を実施した。

(5)海底地震総合観測システム等の運用

独立行政法人海洋研究開発機構においては,釧路・十勝沖・室戸岬沖に設置した海底地震総合観測システム並びに相模湾初島沖に設置した深海底総合観測ステーションの運用及び観測研究を行った。

(6)深海地球ドリリング計画推進

独立行政法人海洋研究開発機構においては,多国間国際協力科学プロジェクトである統合国際深海掘削計画を推進し,東南海・南海地震の震源域である南海トラフにおいて,巨大分岐断層及びプレート境界到達を目標とする超深度ライザー孔の掘削に着手するとともに,海底下約1kmの掘削孔内に地震・地殻変動等を観測する長期孔内計測装置を設置した。

(7)首都直下地震防災・減災特別プロジェクト

文部科学省においては,複雑なプレート構造の下で発生しうる首都直下地震の姿(震源域,将来の発生可能性及び揺れの強さ)の詳細を解明するとともに,高層建築物等の耐震技術の向上や地震発生直後の迅速な被害把握等と有機的な連携を図り,地震による被害の大幅な軽減に資するための調査研究プロジェクトを実施した。

(平成23年度決算額 881百万円)

(8)ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究

文部科学省においては,近年地震が頻発する「ひずみ集中帯」の活構造を明らかにし,ここで発生する地震のメカニズムを解明するとともに,震源断層モデルを構築するための調査観測・研究を実施した。

(平成23年度決算額 499百万円)

(9)東海・東南海・南海地震の連動性評価研究

文部科学省においては,将来連動して発生する可能性の高い東海・東南海・南海地震について,時間的及び空間的な連動性を評価するため,3つの地震の想定震源域における稠密広域な海底地震・津波・地殻変動観測や,シミュレーション研究,強震動予測,津波予測,被害想定研究等を実施した。

(平成23年度決算額 498百万円)

(10)地震観測データを利用した地殻活動の評価と予測に関する研究

独立行政法人防災科学技術研究所においては,基盤的地震観測網等から得られるデータを解析し,地震活動や地殻変動等の地殻活動を的確に把握するとともに,スロースリップ源の実時間特定等を可能とする観測データの処理・解析手法の高度化等を推進した。

(11)活断層評価の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては,全国の主要活断層として,陸域で5断層帯,沿岸海域で5断層帯の合計10断層帯の分布形状や活動履歴に関する調査を行った。

(12)海溝型地震評価の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては,東南海・南海地震域における地下水総合観測点における地下水等調査を行い,地震発生予測の研究を行った。また,宮城県において西暦869年の貞観津波の堆積物を認識し,シミュレーションにより日本海溝沿いの巨大地震を推定した。

(13)地震災害予測の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては,埼玉県北部の綾瀬川断層において物理探査を実施し,とう曲構造を把握するとともにその変位の定量的な解析を実施した。

(14)巨大地震・津波災害に伴う複合地質リスク評価の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては,巨大地震・津波災害に伴う地震災害リスクを総合的に評価するため,<1>津波災害,<2>誘発されて活動が予想される活断層調査,<3>地盤の液状化ポテンシャル評価を行うとともに,復旧,復興に資するため<4>土壌汚染リスクや<5>地下水汚染リスクについての調査・評価を開始した。

(15)海溝型地震評価の研究

独立行政法人産業技術総合研究所においては,東海・東南海・南海地震の短期的な予測を目標とした地下水・地殻変動の観測施設の整備を開始した。

(16)地震予知研究の推進

地震予知連絡会(事務局:国土地理院)においては,全国の地震予知観測研究に関する情報交換と学術的見地での検討を行った。また,国土地理院においては,同連絡会に報告された観測データ等を地震予知連絡会会報として編集した。

(平成23年度決算額 6百万円)

(17)測地的方法による地殻変動調査

国土地理院においては,全国を対象とした高精度三次元測量,高度地域基準点測量等を定期的に行ったほか,全国の電子基準点(GNSS連続観測施設)連続観測,高精度地盤変動測量を行い,地殻変動の監視を行った。また,地震防災対策強化地域,重点的調査観測対象地域等において,高密度で短周期の地殻変動観測を行ったほか,御前崎地方において,高精度三次元連続観測(GNSSによる高精度比高観測)を行った。さらに,機動的な地殻変動連続観測,重要活断層の地形学的調査等行い,その他,定常観測として地磁気観測,地殻変動連続観測,潮位の連続観測を行った。

(平成23年度決算額 1,304百万円)

(18)地殻活動総合解析

国土地理院においては,GNSS等の地殻変動観測データ等各種データを総合解析して,地殻活動の詳細な分析を行い,地震調査委員会等に報告した。

(平成23年度決算額 3百万円)

(19)GPS統合解析技術の高度化

国土地理院においては,ローカルな火山活動のやや大きめで急速な地殻変動の監視を目的として開発されてきた統合技術である火山統合解析技術を高度化し,広域から局所までという任意のGNSS観測点のデータをGEONET(GNSS連続観測システム)のルーチン解析と共通な基盤で評価するための効率的なデータ解析手法及び環境の開発に関する研究を行った。

(平成23年度決算額 5百万円)

(20)ひずみ集中帯の地殻変動特性に関する研究

国土地理院においては,新潟―神戸ひずみ集中帯の新潟県中部において,稠密地殻変動観測によりひずみ集中帯内部の地殻変動分布を把握し,数値シミュレーション等によるモデリングを通して,地殻構造の不均質や断層深部すべりに伴う地殻の変形過程を解明し,内陸地震の発生メカニズムに関する知見を得るための研究を行った。

(平成23年度決算額 9百万円)

(21)地震災害緊急対応のための地理的特性から想定した被害情報の提供に関する研究

国土地理院においては,地震発生時に当該地域の地理的特性と起こりうる災害の類型(斜面災害,地盤の液状化の地盤変状による建物,ライフライン,道路,河道閉塞等)を自動的に出力・伝達し,また夜間であっても地震発生後1時間を目途に,この出力に対する専門家の判断を加え,必要な部署に伝達するシステムの開発を行った。

(平成23年度決算額 14百万円)

(22)プレート境界の固着状態及びその変化の推定に関する研究

国土地理院においては,GEONETにより観測された地殻変動データからプレート間の固着域(大きさ・位置・その時間変化)を高精度かつ高い時間分解能(1日ごと)で推定する解析手法の研究を行った。

(平成23年度決算額 8百万円)

(23)測地観測に基づく地殻活動イベントの検知能力に関する研究

国土地理院においては,地震・火山噴火に先行して発生することが想定される前兆すべり等の現象によって引き起こされる地殻変動に伴う変動量を明らかにするとともに,既存のGNSS連続観測,水準測量,験潮,傾斜・ひずみ測定等の測地観測網の観測結果を総合的に分析し,これらの先行現象を含む地殻活動イベントを検知するためのソフトウェアの開発を行った。

(平成23年度決算額 7百万円)

(24)火山噴火予知に関する基礎的研究

国土地理院においては,火山噴火活動の評価及び火山噴火予知研究の基礎資料を得るため,電子基準点(GNSS連続観測施設),GNSS火山変動リモート観測装置(REGMOS),自動光波測距測角連続観測装置(APS)等により,的確に地殻変動の把握行い,あわせて火山噴火予知連絡会等の関係機関へ資料提供を行った。

(平成23年度決算額 18百万円)

(25)地震に関する調査研究

気象庁においては,気象研究所を中心に地震に関する研究を推進した。特に,東海地域に想定される地震の予知の確度を向上させるため,数値シミュレーション手法の高度化による東海地震の予測精度向上及び新たな観測・監視手法の開発による東南海・南海地震の監視体制の強化に関する研究等を行った。

(平成23年度決算額 34百万円)

(26)地震観測等

気象庁においては,全国における地震観測,地殻岩石ひずみ観測,地磁気観測,沿岸における津波観測を行った。

また,関係機関の地震に関するデータに加え,地震に関する基盤的調査観測網のデータを収集し,その成果を防災情報等に活用するとともに,地震調査研究推進本部地震調査委員会に提供した。

(平成23年度決算額 2,631百万円)

(27)海底地殻変動観測等

海上保安庁においては,巨大地震の発生が懸念されるプレート境界域における地形・活断層調査,海底基準局を用いた海底地殻変動観測,DGPS及び験潮所による地殻変動監視観測,人工衛星レーザー測距観測を実施し,プレート運動の把握等を行った。

(平成23年度決算額 418百万円)


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