(4)被災者支援の強化


(4)被災者支援の強化

東日本大震災においては,岩手県,宮城県及び福島県を中心に,多くの被災者が住家を失い,長期にわたる避難所生活を余儀なくされた。

こうした実態を踏まえ,避難所における良好な生活環境の確保を図るための取組の指針や,支援の在り方等を明らかにすることが必要となった。

<1> 避難所・避難生活対策の充実

(避難所の生活環境対策)

内閣府では,今後,避難所の運営状況等について,東日本大震災において実際に避難所へ避難した被災者や地方公共団体等に対して,アンケートやヒアリングにより実態調査を行うとともに,避難所における良好な生活環境の確保を図るための取組指針を作成することとしている。

(避難所となる学校施設における防災機能の強化)

文部科学省では,非常災害時に地域住民の避難場所としての役割を果たす学校施設について,東日本大震災における被害状況を踏まえ,学校施設の安全性の確保や防災機能の強化等,重要な課題について緊急的に検討を実施するため「東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備に関する検討会」を開催し,提言を取りまとめた(平成23年7月)。

主な提言内容は,天井材や照明器具等の非構造部材を含めた学校施設の耐震化と津波対策,学校施設の防災機能の向上,電力供給減少を踏まえた省エネルギー対策等である。

提言等を踏まえ,文部科学省は,平成24年度に国庫補助事業を創設する等を通じて,学校施設の耐震化及び防災機能の強化を進めることとしている。

(男女共同参画の視点の対策)

物資の備蓄・提供や避難所の運営について,女性や子育て世帯に十分な配慮がなされず様々な段階で問題が顕在化したことから,内閣府では,女性や子育てのニーズを踏まえた災害対応を取りまとめ,避難所や仮設住宅等での生活に関する対応がなされるように関係機関に働きかけを行ってきた。

今後は,東日本大震災における男女共同参画の視点からの被災者支援,復旧・復興,防災等の各段階での必要な対策を調査・検討し,これを基にマニュアルを作成し,幅広く周知することとしている。

(災害時要援護者対策)

「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成17年3月)により,市町村に要援護者名簿の作成,要援護者の避難支援に係る全体計画や要援護者一人一人の個別計画の策定等を促してきたところであるが,東日本大震災では,障害者への情報伝達が不十分,災害時要援護者名簿等の未作成,福祉避難所の事前の設置が不十分等が明らかとなった。

これを踏まえ,内閣府では,東日本大震災における災害時要援護者の被災状況等の実態調査を通じて,災害時要援護者対策の考え方等を検討し,同ガイドラインの見直し等必要な対応を行っていくこととしている。

<2> 物資供給対策

(復旧支援ルートの早期確保のための取組)

国土交通省では,これまで各地方整備局と建設業関係団体との間で災害時協力協定の締結を進めていたことから,東日本大震災において内陸部から沿岸部に向けての迅速な道路啓開の実施(いわゆる「くしの歯作戦」)が可能となり,津波被害を受けた地域への緊急輸送に貢献した。

今後は,大規模地震の想定地域においても迅速に復旧支援ルートが確保されるように,各地方整備局が中心となり,関係地方公共団体や自衛隊等との事前調整や,資機材の備蓄等の取組を進めることとしている。

(食料等の供給における震災応急業務体制の見直し)

農林水産省においては,東日本大震災の教訓を踏まえ,1)被災地方公共団体の要請を待たずに国が直接支援(プッシュ型支援)を行う手順の整備や支援物資の品目・量・単位の統一化,2)飼料の安定供給体制の強化,3)災害復旧用木材の調達・供給体制の強化等を内容とする新たな「震災対応マニュアル」を作成した。

今後は,定期的に訓練を実施するとともに,マニュアルの点検・見直しを行っていくこととしている。

(生活必需物資等の供給における震災応急業務体制の見直し)

経済産業省においては,東日本大震災の経験を踏まえ,災害時に必要とされる生活必需物資のリストの見直しを行い,関係団体等との連絡体制を構築した。

また,必要な情報の欠落等により物資調達・輸送活動が混乱・停滞したため,問題の解決に向け,支援物資供給の効率化事業を実施した。事業者・地方公共団体へのヒアリングやデータの収集・分析を行うとともに,物流事業者・被災地方公共団体・有識者等で構成された検討会において,情報共有の在り方等について議論を重ねた。その結果として,共有すべき情報項目の整理や標準フォーマットの策定等を行い,加えて,当該フォーマットの具体的な活用方法や運用ルールについて関係府省庁において検討を行うこととしている。

(災害に強い物流システム構築に向けた取組)

東日本大震災の支援物資物流においては,早期に物流事業者・物流事業者団体が参加していなかったこと等により,円滑な輸送や物資集積拠点の運営等に支障が生じた。そのような教訓を踏まえ,国土交通省は,有識者,物流事業者・事業者団体から構成されるアドバイザリー会議を開催し,支援物資の物流に係る課題を整理・分析し,民間の物流事業者のノウハウを最大限活用すること等を内容とする「支援物資物流システムの基本的な考え方」を取りまとめた(平成23年12月)。

また,平成23年12月に,首都直下地震等の大規模な地震が想定される地域を4つのブロックに分け,学識経験者,関係地方公共団体,物流事業者等で構成される「民間の施設・ノウハウを活用した災害に強い物流システムの構築に関する協議会」を設置し,各協議会において,災害時の支援物資の物流における官民の連携・協力の構築や災害時に活用する民間物資拠点のリストアップ(4つのブロックで395か所)等を内容とする取りまとめを行った(平成24年3月)。

なお,各ブロックにおいては,今回の取りまとめを具体化していくため,平成24年度以降も検討を継続するとともに,東北地方等の他のブロックにおいても新たに協議会等を設置していく予定である。

(災害時を想定した流通サプライチェーンの強靭化)

東日本大震災においては,被災地のみならず全国で局地的に生活必需品等の商品・物資不足が発生し,大きな社会不安が発生した。このため,経済産業省においては,今後の首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害を想定し,食品や日用雑貨等生活必需品に関して,災害時であっても円滑な配送・在庫配置・店舗販売が行われ,消費者に物資が届くようにするとともに,生活必需品の需給バランスや在庫状況を政府・地方公共団体が把握できるよう,ITを活用した情報集約基盤(デジタル・インフラ)を構築していくこととしている。

また,実証事業を平成24年度から開始することとしている。

今後は,順次,参加企業等を拡大し,最終的には全国規模の情報集約基盤となることを目指し,災害時における生活必需品等消費財の流通の円滑化を図っていくこととしている。また,平成23年5月に設置した「製・配・販連携協議会」においても,生活必需品の流通の在り方の検討を行っている。

(海外支援受入れ)

外務省では,政府緊急災害対策本部において各府省庁との連絡・調整に携わった職員や,各国の救助チームに同行したリエゾンからの報告等を踏まえ,海外からの支援の受け入れに関する教訓,改善点の取りまとめを行い(平成23年10月),政府内での共有を図った。

今後は,支援の申し出から帰国までの支援活動全体について,受入れ判断や受入れ手続の明確化,外務省担当者の同行・バックアップ体制,資機材の確保,被災地のニーズ把握や調整等の課題を踏まえつつ,関係府省庁とも連携して円滑な海外支援受入れに向けた対策を推進することとしている。

<3> 生活再建支援

(被災者の生活再建支援)

被災者生活再建支援金は,住宅が全壊等の被害を受ける等一定の要件に該当した場合に,当該住宅に居住していた被災世帯に対し,住宅の被害状況に応じて,支援金が支給される制度である。

内閣府では,制度開始後初めての大規模災害となった東日本大震災における支援金の支給状況や,支援金支給世帯の生活再建実態等を調査することとしている。

(被災者支援のためのシステムの活用)

被災者支援のためのシステムを活用することで,地方公共団体における義援金の給付等の被災者支援業務が円滑化することから,総務省では,財団法人地方自治情報センターが管理運用している「被災者支援システム」の活用を含め,被災者支援のためのシステムについて,個々の地方公共団体の実情に応じた活用や,平時における導入準備が進むよう助言や周知を行っていくこととしている。

(特別行政相談活動による被災者支援)

総務省では,災害時や伝染病流行時とその復旧時に被災者支援のため特別行政相談活動を実施しており,東日本大震災に際しても,行政相談専用フリーダイヤルの開設や,被災者を支援するための特別の行政相談所の開設等の活動を展開したところである。

今後は,これまでの活動例の分析,地方公共団体を含む関係者の意識調査等を通じ,災害の類型に応じた活動の在り方を研究し,特別行政相談活動のより適切かつ効果的な展開を推進していくこととしている。


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