2 被害の概要


2 被害の概要

この地震は,人的被害,住家被害をはじめ,インフラ・ライフライン等に極めて甚大な被害を発生させた。この節では,人的被害,住家被害及び浸水被害を中心に被害の概要について述べる。インフラ・ライフライン等の被害状況については, 第2章第2節を参照 されたい。

(1)人的被害

マグニチュード9.0の海溝型地震は,主に津波による死者15,270名,行方不明者8,499名(5月30日時点)という明治以降では関東大震災に次ぐ極めて深刻な被害をもたらした(表1−1−10)。死者・行方不明者は12都道県に及び,その中でも高い津波が観測された宮城県(死者9,122名,行方不明5,196名),岩手県(死者4,501名,行方不明2,888名)及び福島県(死者1,583名,行方不明411名)(いずれも5月30日時点)で多数の犠牲者が発生した。

表1−1−10 東日本大震災における都道府県別人的被害 表1−1−10 東日本大震災における都道府県別人的被害

警察庁発表資料(4月11日現在)によると,死因の90%以上が溺死となっている(図1−1−4)。なお,阪神・淡路大震災においては,死因の80%以上が建物倒壊によるものであった。

また,年齢別では60歳以上が約65%を占めており,地域の人口構成比よりも高い割合となった(図1−1−5)。

図1−1−4 東日本大震災における死因(岩手県・宮城県・福島県) 図1−1−4 東日本大震災における死因(岩手県・宮城県・福島県)
図1−1−5 東日本大震災における死者と地域人口の年齢構成比較(岩手県・宮城県・福島県) 図1−1−5 東日本大震災における死者と地域人口の年齢構成比較(岩手県・宮城県・福島県)
(2)住家被害

住家についても,全壊が約10万棟,半壊が約6万棟(5月26日時点)となる大きな被害が生じた(表1−1−11)。

表1−1−11 東日本大震災における都道府県別住家被害 表1−1−11 東日本大震災における都道府県別住家被害
(3)被害額

被災地域におけるストック(社会資本・住宅・民間企業設備)への直接的被害額は,内閣府(経済財政分析担当)によると,約16〜25兆円と分析されており,阪神・淡路大震災の直接的被害額約9.6兆円(国土庁推計)の1.6倍以上の被害額となっている。これは,被災地域全体のストック総額約175兆円に対し,阪神・淡路大震災における損壊率を参考に,被災状況を加味して設定された損壊率を用いて分析を行ったものであるが,原子力発電所の被害や,風評被害は含んでいない。

(4)津波による浸水の概要

(a) 津波による浸水範囲

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震では,地震動による津波の発生とともに,沿岸を中心に大きな地盤沈下が発生した。甚大な津波と地盤の低下が重なり,津波による浸水面積は,全国で561km (青森県24km ,岩手県58km ,宮城県327km ,福島県112km ,茨城県23km 及び千葉県17km )に達したと推計される(図1−1−6)。

図1−1−6 岩手県から福島県の浸水範囲図 図1−1−6 岩手県から福島県の浸水範囲図

(b) 農地の流失・冠水被害

農業関係では,流失・冠水等の被害を受けた農地は,宮城県15,000ha,福島県6,000ha,岩手県2,000ha 等,全体で23,600ha と推計される(表1−1−12)。

表1−1−12 津波により流失や冠水等の被害を受けた農地の推定面積 表1−1−12 津波により流失や冠水等の被害を受けた農地の推定面積

(c) 想定を上回った東日本大震災の浸水高・浸水範囲

津波被害を受けた地域の中には,想定地震による浸水高や浸水範囲の予測を大きく上回る浸水高や浸水範囲となった地域もある(図1−1−7,図1−1−8)。

図1−1−7 想定3地震の想定津波高と今回の津波による浸水高等との比較 図1−1−7 想定3地震の想定津波高と今回の津波による浸水高等との比較
図1−1−8 陸前高田市における浸水高の予測と実際の浸水高 図1−1−8 陸前高田市における浸水高の予測と実際の浸水高

これに加えて,地盤沈下による影響もあり,実際の浸水範囲が,津波ハザードマップの予測浸水範囲を大きく超えた地域もある(図1−1−9)。

図1−1−9 津波ハザードマップの予測浸水範囲と実際の浸水範囲 図1−1−9 津波ハザードマップの予測浸水範囲と実際の浸水範囲

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