2 インフラ・ライフライン等の被害への対応


2 インフラ・ライフライン等の被害への対応

発災後における各種の応急活動を迅速かつ的確に展開するための市町村機能の多くが被災するとともに,応急・復旧活動に必要不可欠な交通網が広範囲にわたり寸断され,港湾施設等のインフラ施設の損壊及び電気,ガス,水道をはじめとするライフラインへの大きな被害が発生した。また,東北から関東の広い範囲において液状化現象が発生し,ライフラインに被害が発生した。

これに対して,国,地方公共団体及び事業者がそれぞれ復旧作業に取り組んでいる。国においては,直轄事業に係る復旧に取り組むとともに,国土交通省において緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)を派遣し(5月29日現在までに延べ16,879名を被災地に派遣),被災状況の迅速な把握,通信途絶した被災地方公共団体における通信環境の確保,緊急輸送ルートの確保,湛水排除等を実施することにより,救助・救急,物資輸送等の応急活動の円滑化に努めるなど,被災地方公共団体における迅速な復旧を支援している。

(1)交通関係

広範囲における地震動及び液状化現象並びに沿岸部における津波被害により,交通関係に被害が発生した。

(a) 鉄道関係

地震直後,JR 東日本,私鉄等多くの路線で運転が休止した。

5月31日現在,被害の大きな東北地方を中心に9事業者20路線において,全線または一部区間が不通となっている。

東北地方の交通の幹線である東北新幹線は,段階的に運転を再開し,4月29日に全線で運転が再開された。

なお,首都圏の多くの路線は,3月11日夜半から翌朝にかけて運転が再開された。

(b) 道路関係

道路関係については,東北自動車道をはじめとする高速道路や直轄国道が被災により通行止めとなり,特に太平洋沿岸の国道45号は各地で寸断された。

このため,道路の復旧に当たっては,まず東北地域へのアクセスのために,南北方向の幹線である東北自動車道と国道4号の縦軸ラインについて,発災翌日の3月12日に緊急輸送ルートとしての機能を確保するとともに,内陸部の縦軸ラインから太平洋沿岸に向けて東西方向の国道を「くしの歯形」に啓開し,11ルートを確保,4日後の3月15日にはすべての15ルートを確保した(いわゆる「くしの歯」作戦)。7日後の3月18日には国道45号の啓開作業を概ね完了させた。

物流の大動脈となる東北自動車道では,13日後の3月24日に一般車両の通行が全面的に可能となり,19日後の3月30日には常磐自動車道が福島第一原子力発電所の規制区間を除き,一般車両の通行が全面的に可能となった。

国道45号・国道6号については,福島第一原子力発電所の規制区間を除き,発災から約1ヶ月後の4月10日には,迂回路の確保を含めた応急復旧を概成した。

また,福島第一原子力発電所の規制区間内の国道6号についても,一時立入に間に合うように,5月8日には迂回路を含めた応急復旧を完了した。

(c) 港湾関係

港湾関係については,地震やそれに伴う津波により,青森県八戸市から茨城県に至る太平洋岸のすべての港湾において港湾機能が停止したが,津波警報・注意報解除後の3月14日から,主要港において,航路,泊地等の障害物を取り除く啓開作業が行われ,3月15日の釜石港及び茨城港(常陸那珂港区)を皮切りに,3月24日までに,一部の岸壁が利用可能となり,緊急物資,燃料等の搬入が可能となった。

5月26日現在,水深4.5m 以深の公共岸壁として,被災港湾の暫定利用が可能な岸壁数は,373バース中148バースである。ただし,暫定利用が可能な施設の大部分において復旧工事が必要であり,吃水制限や上載加重制限が設けられている。

(d) 航空関係

空港施設については,仙台空港,百里飛行場(茨城空港)及び花巻空港で被害が発生した。このうち,仙台空港及び百里飛行場が閉鎖されたが,百里飛行場においては3月14日から運行が再開された。

津波被害を受けた仙台空港においては,3月16日から滑走路1,500m が暫定使用(救援機限定)され,多くの救援物資が輸送された。引き続き応急復旧作業を進めた結果,4月13日に民航機の就航が再開された。

(2)ライフライン関係

(a) 電力関係

電力については,延べ891万戸が停電したが,停電戸数は,5月27日現在で,家屋流出等地域を除き,東北電力管内における約300戸に減少している。

(b) ガス関係

都市ガスについては,供給停止が延べ48万戸発生したが,他地域の都市ガス事業者からの応援もあり,5月3日までに家屋流出等地域を除いた約42万戸が復旧済みである。

また,LP ガスについては,家屋流出等地域を除いて供給可能である。

(c) 水道関係

水道については,187市町村の水道施設が被災し,一時約220万戸が断水した。

このため,被災水道事業者は,全国の水道事業者等からの応援を得て復旧活動に当たり,5月20日現在では断水は3県で約65,000戸以上となっている。

(d) 下水道関係

1都12県の処理施設120箇所が被災した(稼働停止48箇所,施設損傷63箇所及び現地確認が困難なため不明9箇所)。5月30日現在,不明の9施設を除き,93施設において正常稼働とほぼ通常の処理が行われるようになり,稼働停止は18施設に減少している。このうち,13箇所では沈殿・消毒による暫定的な簡易処理等の応急対応を実施している。

ポンプ施設は7県の112箇所が被災した(稼働停止79箇所,施設損傷32箇所及び現地確認が困難なため不明1箇所)。5月30日現在,不明の1施設を除き,稼働停止は29施設に減少している。

下水管・マンホールについては,5月30日までの調査(目視による調査)で,137市町村等の下水管66,086km のうち,957km で被害が確認され,マンホールについては21,504箇所で被害が確認されている。

(e) 工業用水道関係

工業用水道については,13都県で44事業が被災し,給水停止となった。

このため,被災事業者は,一部は他事業者からの応援を得ながら,仮復旧作業を行い,5月31日までに43事業で給水を再開している(一部再開を含む)。

(f) 通信関係

電話等の固定回線(加入電話及びISDN)は,最大で約100万回線が停止し,5月30日現在での停止は約12,000回線に減少している。携帯電話の基地局の停波は,最大で約14,800局(4社計)であったが,約440局に減少している。

衛星携帯電話について最大1,269台(事業者分940台及び総務省分(今回の地震に際し,国際電気通信連合から総務省に無償供与された153台を含む。)329台),また,移動電源車最大百数十台,車載型携帯電話基地局最大約40台をそれぞれ配備するとともに,特設公衆電話最大約2,300台が設置された。

(g) 放送関係

宮城県のテレビジョン中継局は,5月31日現在56箇所中2箇所で停波中である(停電1箇所及び損壊1箇所)。

総務省では,放送手段の確保を望む被災23市町からの申請を受けて,臨時災害放送局(FM 放送)の開設を臨機に許可した(5月31日現在)。また,1万台の携帯ラジオを被災地に配布した。

(h) 石油精製施設等

地震により6箇所の製油所で操業を停止した。5月14日現在,3箇所が再稼働し,出荷設備,桟橋,貯蔵タンク等の火災が発生した2箇所を含む3箇所では操業停止が継続している。

石油流通施設については,塩釜油槽所の被災に代表される施設の損傷等で,東北地方の主要元売系列ガソリンスタンド1,137箇所が営業停止となり,ガソリン不足が発生した。その後,営業を再開したガソリンスタンドが徐々に増加した結果,5月30日現在では,東北地方の主要元売系列ガソリンスタンド3,070箇所に対し,2,937箇所が稼働し,多くの地域では,安定供給が行われている。

(3)公共建物

(a) 文教施設等

学校施設,社会教育施設等の文教施設及び文化財については,約12,000件の被害が報告されている。

公立学校施設の被害については約6,400校,社会教育施設の被害については約3,300施設となっている。

このため,教育活動に支障が生じないよう,国の現地調査を待たず早期に復旧工事に着手できる旨の通知,災害復旧事業の手続の簡素化等を行い,学校施設,社会教育施設等の早期復旧に向けた地方公共団体等への支援を実施しているところである。

(b) 医療施設等

岩手県,宮城県及び福島県の医療機関は,5月25日時点で,380病院中300病院が何らかの被害を受け,うち11病院が全壊している。また,4月19日時点で,6,531の一般診療所・歯科診療所中1,174診療所が何らかの被害を受け,うち167診療所が全壊している。また,岩手県・宮城県及び福島県の社会福祉施設は,5月31日現在,875施設が何らかの被害を受け,うち59施設が全壊している。

このため,医療関係団体等からの医療関係者の派遣により,被災地の医療機能の確保を行っている。また,仮設診療所や仮設歯科診療所の設置を進めるとともに,医療機関の早期復旧に向けた財政支援を実施することとしている。

(4)河川・海岸施設等

(a) 河川

直轄管理河川については,地震及び津波被害により北上川,利根川等では堤防崩壊,堤防クラック,護岸被災等2,115箇所の被害が発生した。また,県・市町村管理河川についても1,360箇所に同様の被害が発生した。

現在,堤防の応急復旧等の応急対策を講じるとともに,水防団出動基準等の引き下げ,住民等の広報等の警戒避難対策を講じているところである。

(b) 海岸

海岸保全施設については,岩手県,宮城県及び福島県3県の海岸堤防約300km のうち190km が全壊・半壊し,津波により561km2の浸水被害が生じた。

現在,台風等に備え,高潮位までの土のう積等の緊急対策を講じているところである。

(c) 土砂災害

この地震で,福島県他11県において,122件の土砂災害(死者19名)が発生した。

現在,台風や梅雨に備え,土のう積等の応急的な対策を講じるとともに,地震で崩壊等が発生した箇所等において緊急的に砂防堰堤等の整備に着手し,土砂災害警戒情報発表基準の引き下げ,土石流センサー等による警戒の強化を行っているところである。

(5)農業関係

農業関係では,流失・冠水等の被害を受けた農地の被害額は約4,000億円と推定される。このほかにも,農業用施設等の損壊(18,364箇所),農産物の冠水・流失,家畜の死亡,ハウス,畜舎等の損壊等,合計約7,600億円となっている。林野関係では木材加工・流通施設をはじめ合計約1,200億円,水産関係では漁港施設をはじめ合計約9,000億円の被害となっており,農林水産省関係全体では約1兆8,000億円となっている(5月30日現在)。

(6)漁業関係

全国の漁業生産量の5割を占める7道県(北海道,青森,岩手,宮城,福島,茨城及び千葉)を中心に広範な地域で大きな被害が発生した。

現在,被災した漁港施設等について,災害廃棄物の撤去を含む災害復旧事業を実施しているところである。

(7)市町村庁舎等

被災地の市町村の中には,想定を超えた津波により,庁舎の直接被害や職員の被災のため,その後の災害対応に大きな支障が生じた市町村が発生した。


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