2−2 災害予防の強化



2−2 災害予防の強化

災害による被害の発生を未然に防止し,あるいは軽減するため,災害に強い国づくり,地域づくりを進めるとともに,国民一人一人の防災意識の高揚のための施策の実施,防災訓練の実施等が重要である。

(1)災害に強い国づくり,地域づくり

地域の特性に配慮しつつ,災害に強い国土とまちの形成を目指して国土保全,地域づくりを推進するとともに,主要交通・通信機能の強化,構造物・施設,ライフライン機能の安全性の確保に関する施策等を実施している。

また,災害発生時に災害応急活動を円滑かつ効果的に実施するための施設・設備の整備等各般の施策を実施している。

a 国土保全事業の推進

水害,土砂災害,震災,火山災害等の自然災害から国土並びに国民の生命,身体及び財産を保護するための国土保全事業を,分野別に長期的な計画を策定し進めてきたが,国土保全事業を含む社会資本の整備について,より低コストで質の高い事業を実施するといった時代の要請に応じ,従来の分野別の長期計画を統合した「社会資本整備重点計画」を平成15年10月に策定し,平成20年度から平成24年度までの5箇年の社会資本整備の方向性を示す次期重点計画が平成21年3月に閣議決定された。また,森林整備事業と治山事業を総合的かつ効果的に推進していくため,「森林整備保全事業計画」を平成16年6月に策定し,平成21年度から平成25年度までの5箇年の次期計画が平成21年4月に閣議決定された。更に,平成17年度から,国土交通省は,洪水,豪雨,高潮,地震,津波等の自然現象による災害を受けた地域等において,災害対策緊急事業を年度途中に迅速に立ち上げ実施する災害対策等緊急事業推進費を創設し,施設管理者からの要求に基づき配分している。

国土保全事業に係る予算の推移をみると 附属資料10 のとおりである。平成22年度では,国土保全事業の国費は約6,464億円(当初予算)となっている。

また,国土保全事業予算額が一般公共事業予算額に占める割合は,平成20年度は17.6%となっている。

b 災害に強いまちづくり

都市再生本部においては,都市再生プロジェクト第三次決定(平成13年12月)として,地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地について,特に大火の可能性の高い危険な市街地(東京,大阪各約2,000ha,全国で約8,000ha)について平成13年から10年間で重点地区として整備することにより,市街地の大規模な延焼を防止し,最低限の安全性を確保することとしている。また,住生活基本計画(全国計画)では「密集住宅市街地の整備を推進する」旨,経済成長戦略大綱(18年7月)では「密集市街地のリノベーションを戦略的に推進する」ことと位置づけられており,更に,都市再生プロジェクト第十二次決定(平成19年1月)では,第三次決定の目標達成に向けた取り組みの一層の強化を内容とする「密集市街地の緊急整備」が再度プロジェクト決定されている。それらを受けて,平成19年3月に「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」の一部改正を行ったほか,密集市街地の改善に資する各種事業制度の創設・拡充,建替計画認定制度(特定防災機能向上型)に係る税制上の特例措置を創設するなど,道路等の基盤整備を推進しつつ,老朽化した建築物の建替えの促進を図ることにより危険な密集市街地のリノベーションを戦略的に推進している。

c 災害に強い農山漁村づくり

決壊時に甚大な被害を及ぼすおそれのあるため池の整備等のハード整備と防災情報提供システムの整備等のソフト対策の一体的な実施による農用地及び農業用施設等の防災・減災対策を実施している。

また,避難路としても機能する林道,災害時の避難地や災害対策拠点として活用するための漁村広場や公園,緊急物資輸送に資する漁港の耐震岸壁,災害対策上必要な施設の整備を実施している。

d 広域防災拠点等の整備

大規模災害時において,広域的に連携し,応急対策,復旧・復興活動を迅速・円滑に進めるためには,情報収集や指揮,物資の集配機能等を備えた広域的・中核的施設の整備と地域防災拠点や輸送拠点等とのネットワークの形成が必要である。

こうした背景を踏まえ,稠密な市街地が連たんする大都市圏における防災安全性の向上を図るため,都市再生プロジェクト第一次決定(平成13年6月)に基づき,東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備及び京阪神都市圏における広域防災拠点の適正配置等に関する検討が進められている。また名古屋圏においても広域防災ネットワークの整備・連携に関する検討が進められている(詳細については,3−1 (8)「首都直下地震対策」(9)「中部圏・近畿圏直下地震対策」 参照)。

(a) 立川広域防災基地

広域的な災害が発生した場合においては情報の収集・伝達,救難・救助等の災害応急対策の拠点となり,平常時においては地域の行政サービスの充実,国民に対する防災知識の普及等を図るため,東京都立川市に立川広域防災基地が整備されており,災害対策本部予備施設のほか,警察防災,海上防災,消防防災,自衛隊航空及び医療に関係する施設が整備されている。

(b) 東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点

都市再生本部における都市再生プロジェクト第1次決定(平成13年6月)では,東京圏において大規模かつ広域的な災害が発生した際に災害対策活動の核となる現地対策本部機能を確保するため,東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備を行うこととされている。

平成18年3月に,有明の丘地区(東京都江東区)の本部棟及び東扇島地区(神奈川県川崎市)の施設整備に着手し,東扇島地区については,平成20年6月に施設棟を含め地区全体の供用を開始し,有明の丘地区については,平成20年6月より本部棟(防災機能を備えた施設部分)の供用を開始し,平成22年夏に東京臨海広域防災公園が供用される予定である。

有明の丘地区においては,首都直下地震等の発生時は,政府の現地対策本部が設置され,首都圏の広域防災のヘッドクォーターとして機能するとともに,広域支援部隊等のベースキャンプや災害時医療の支援基地等となり,平常時は,関係機関による防災情報の交換や各種訓練など,発災時に備えた活動の場として機能する。

東扇島地区においては,首都直下地震が発生した場合,国内外からの支援物資輸送のコントロールを行うとともに,海上輸送,河川輸送,陸上輸送等への中継基地や広域支援部隊等の一時集結地・ベースキャンプとして機能する(図2−2−1)。

(c) 首都圏におけるその他の広域防災拠点

首都圏においては,災害発生時に広域的な防災活動を行う施設として,「さいたま広域防災拠点」が,また,関東地域の大規模海上災害発生時における海上保安庁の防災活動を行う施設として,「横浜海上防災基地」が整備されている。

(d) 京阪神都市圏における広域防災拠点

都市再生本部による都市再生プロジェクト第一次決定において,京阪神都市圏においても基幹的広域防災拠点の必要性も含め,広域防災拠点の適正配置を検討することとされた。

これを受け,有識者,関係省庁と関係府県市による「京阪神都市圏広域防災拠点整備検討委員会」を開催し,基幹的広域防災拠点の必要性,広域防災拠点の適正配置等を含めた広域防災ネットワークの形成について検討を進め,平成15年6月,「京阪神都市圏広域防災拠点整備基本構想」を策定した。その中で,広域防災拠点及び基幹的広域防災拠点の配置ゾーンの提示を行った。

平成16年3月から,国土交通省近畿地方整備局が事務局となり,関係省庁及び関係府県市等による「京阪神都市圏広域防災拠点整備協議会」を立ち上げ,基幹的広域防災拠点の具体的な整備に向けての検討を行っており,平成19年7月の協議会で早急に整備することが合意された堺泉北港堺2区において平成20年度より整備を進めている。

(e) 名古屋圏における広域防災拠点

稠密な市街地が連たんしている名古屋圏において,広域あるいは甚大な災害が発生した場合,国・地方公共団体等が連携・協力して広域的な災害対策活動を行う必要がある。

このため,有識者,関係省庁と関係県市等による「名古屋圏広域防災ネットワーク整備・連携方策検討委員会」を開催し,中核的な広域防災拠点の必要性・広域防災拠点の適正配置等を含む広域防災ネットワークの整備・連携に向けた検討を行い,平成16年7月,「名古屋圏広域防災ネットワーク整備基本構想」を策定した。その中で,広域防災拠点及び中核的広域防災拠点の配置ゾーンの提示を行った。

e 地域の防災拠点の整備

災害時には応急対策活動の拠点として機能し,平常時には防災に関する普及啓発,教育,訓練等の場として機能する地域防災拠点施設や水防資機材の備蓄や水防活動の指揮所となる河川防災ステーションの整備を推進している。

災害時に避難場所となる学校については,改築,耐震補強や,備蓄倉庫,耐震性貯水槽等の整備を推進している。官庁施設についても耐震安全性の向上等を実施している。病院については,災害時の患者受入機能(ヘリポート等),水,医薬品,医療材料の備蓄機能等を持ち耐震機能が強化された災害拠点病院の整備を推進している。

また,災害に強いまちづくりの一環として,避難地・避難路の機能と延焼遮断帯の機能を併せ持つ都市公園の整備を推進している。

この他,港湾における緊急物資輸送用の耐震強化岸壁や避難緑地等と一体となった臨海部防災拠点の整備,空港における液状化対策等を行っている。

また,地域における災害対策活動の拠点となる防災拠点の質的・量的向上を図るため,内閣府において,地方公共団体による優良な防災拠点施設の整備を地域防災拠点施設整備モデル事業により支援し,こうした施設整備の普及を推進している。平成8年度の事業創設以来,平成21年度までに東京都目黒区など43箇所において施設が完成し,現在,徳島県等において事業を実施している( 附属資料11 )。

図2−2−1 有明の丘・東扇島基幹的広域防災拠点施設 図2−2−1 有明の丘・東扇島基幹的広域防災拠点施設の図

f 災害現地対策本部の設置

大規模地震発災時の各地域における医療搬送や緊急輸送等の行動を,現地レベルで的確に調整・実施するため,政府の現地災害対策本部を,東海地震応急対策活動要領(H15年12月策定)において,原則として静岡県に,東南海・南海地震応急対策活動要領(H18年4月策定)において,原則として愛知県,大阪府,香川県に,首都直下地震応急対策活動要領(H18年4月策定)において,原則として有明の丘地区に,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震応急対策活動要領(H19年6月策定)において,原則として北海道,岩手県,宮城県に設置することとしている。

なお,具体的には,東海地震においては静岡県庁に,首都直下地震においては有明の丘を災害現地対策本部の設置場所とすることとしている。また,東南海・南海地震における大阪地区については,大阪合同庁舎第4号館を暫定候補として選定し,京阪神都市圏広域防災拠点整備協議会(第4回)(H22年2月12日)において報告している。

(2)防災訓練

大規模地震の発災時等には,政府,地方公共団体をはじめとする防災関係機関,地域住民等が緊密な連携のもと,情報の収集・伝達,救急・救助,医療,消火等の災害応急活動を迅速かつ適切に実施する必要がある。

災害は多くの場合,その発生を予測できず,しかも防災に係わる関係機関は多岐にわたっていることから,防災体制の実効性を確認・検証し,多くの関係職員に防災業務を習得させるためには,常日頃から実践的な防災訓練が不可欠となる。

防災体制を実効性のあるものとし,地域全体の災害対応力を高めるためには,防災関係機関だけでなく,事業所・ボランティア等も連携・協力し一体となって防災訓練を実施することが求められている。また,防災訓練の実施に当たっては,テレビ,広報誌等を通じた事前広報を行い,国民一人一人が,日常及び災害発生時において「自らが何をするべきか」を考え,災害に対して十分な準備を行えるよう,その意識の高揚と知識の向上を図る絶好の機会とすることが重要である。

このような防災訓練の重要性にかんがみ,災害対策基本法第48条では指定行政機関の長,地方公共団体の長等の災害予防責任者は,法令又は防災計画の定めるところにより,それぞれ又は他の災害予防責任者と共同して,防災訓練を行わなければならない旨規定している。

中央防災会議では,毎年度,訓練を実施する際の基本的な考え方と,政府,地方公共団体等が連携・協力して行う総合防災訓練の概要等を示した「総合防災訓練大綱」を決定し,政府,地方公共団体等の各防災関係機関は,この大綱に基づいて各種訓練の推進を図っている。

平成21年度において実施された主な防災訓練の概要は,以下のとおりである。

a 政府における総合防災訓練

政府においては,毎年9月1日の「防災の日」に,災害発生時の応急対策に関する検証・確認と,国民の防災意識の高揚を図ることなどを目的として,関係地方公共団体等との連携により,総合防災訓練を実施している。

(a) 防災の日における総合防災訓練

<1> 政府本部運営訓練

首都直下地震を想定し,内閣総理大臣を始めとする全閣僚が参加して,地震災害応急対策の実施体制の確保等を図る訓練を実施した。

官邸においては,緊急参集チームの参集・協議,内閣官房長官会見,閣僚協議,臨時閣議,内閣総理大臣会見,緊急災害対策本部会議(内閣総理大臣と川崎市長,内閣府大臣政務官とのテレビ会議を含む),防災担当大臣会見の一連の訓練を実施した。

さらに,有明の丘基幹的広域防災拠点施設(東京都江東区)に内閣府大臣政務官(防災担当)を本部長とする緊急災害現地対策本部を設置し,緊急災害現地対策本部合同会議等の訓練を実施した。

<2> 現地訓練

・八都県市合同防災訓練と連携した訓練

首都直下地震を想定した八都県市合同防災訓練と連携して,自衛隊,警察庁(警察広域緊急援助隊),消防庁(緊急消防援助隊)及び海上保安庁(以下「実動省庁」という。)等による地震災害応急対策訓練に加え,災害派遣医療チーム(DMAT)が参加した航空機等による広域医療搬送訓練を実施するとともに,現地訓練会場である神奈川県川崎市の東扇島基幹的広域防災拠点に内閣総理大臣を団長として,防災担当大臣・国家公安委員会委員長,総務大臣,防衛大臣他からなる政府調査団を派遣した。

・静岡県総合防災訓練と連携した訓練

東海地震を想定した静岡県総合防災訓練と連携して,実動省庁等による地震防災応急対策・地震災害応急対策訓練を実施するとともに,現地訓練会場である静岡県袋井市に内閣府政策統括官(防災担当)を団長とする政府調査団を派遣した。

・近畿府県合同防災訓練と連携した訓練

直下型地震を想定した近畿府県合同防災訓練と連携して,実動省庁等による地震災害応急対策訓練に,現地訓練会場である福井県袋井市テクノポート福井に内閣府大臣政務官(防災担当)を団長とする政府調査団を派遣した。

(b) 政府総合図上訓練

平成22年1月15日,官邸危機管理センターで,東海地震を想定した政府総合図上訓練を実施した。本訓練は,平成22年1月15日の午前5時00分に,静岡県西部の震源域でマグニチュード8.0の地震が発生し,山梨県中・西部及び静岡県西部で最大震度7の揺れを観測したという想定で行った。この訓練に,内閣官房,内閣府と災害対策関係省庁17省庁から210名の職員が参加した。

図上訓練は,平成13年度から毎年実施しており,訓練を統括するコントローラーが時間を追って与える状況に対応して訓練対象者(プレーヤー)自身が情報の収集,状況判断,対応策等の検討を行い,災害対応に関する業務遂行能力の向上を図る実践型の防災訓練である。

東海地震のような大規模な震災の発生時には,政府は直ちに内閣総理大臣を長とし,全閣僚で構成される緊急災害対策本部を設置し,被災地への救助部隊の派遣などの対応に総力をあげることとしている。今回の訓練の実施にあたっては,東海地震応急対策活動要領(平成15年12月 平成18年4月修正 中央防災会議)に基づき緊急災害対策本部の業務を効率的に遂行するために設置する緊急災害対策本部事務局の業務について訓練を実施して,その業務遂行能力の向上を図るとともに関係地方公共団体との連携,応急対策活動要領等の改訂等に係る検証を行った。

今後は,訓練結果を踏まえ,緊急災害対策本部事務局の体制等について必要な改善を図り,災害への備えを更に確かなものにしていくこととしている。

(c) 津波防災訓練

平成21年7月4日(土)に,静岡県静岡市(清水港)を中心に,東海地震を想定した大規模津波防災総合訓練を実施した。この訓練に,国,地方自治体,公共機関等約51機関,参加人数は各地域の避難者を含め約1万人が参加し,津波情報の伝達,水門等閉鎖,海上漂流者等救助,港湾啓開訓練など多岐にわたり,地震発生後の時間経過に合わせた訓練を実施した。

また,内閣府大臣官房審議官(防災担当)を団長とする政府調査団を派遣した。

(d) 水害対処訓練

平成21年10月29日(木),官邸危機管理センターで,台風等により利根川の堤防が決壊し,大規模な浸水被害が発生したことを想定した図上訓練を実施した。この訓練に,内閣官房,内閣府をはじめ9機関から約100名の職員が参加し,被害状況及び初動対応に係る情報集約等を実施した。

(e) 原子力防災訓練

原子力災害対策特別措置法に基づき,平成21年12月21日(月)及び22日(火)に,日本原子力発電株式会社東海第二発電所を対象として,国,地方公共団体,指定公共機関,原子力事業者等関係者約3,100人(住民約230人を含む。)が参加して,平成21年度原子力総合防災訓練を実施した。

この訓練では,特にトラブル発生時における迅速・的確な初動対応の充実,広報活動の充実,災害時要援護者の避難支援対策等の充実,緊急被ばく医療活動の充実,人口の多い地域における住民避難の充実を図った。また,内閣総理大臣をはじめとする関係閣僚が参加した官邸における原子力災害対策本部会議運営訓練,経済産業省緊急時対応センターにおける国の関係省庁職員による原子力災害対策本部事務局の各機能班運営訓練,現地の緊急事態応急対策拠点施設(茨城県原子力オフサイトセンター)における国,地方公共団体,原子力事業者等の関係者による原子力災害合同対策協議会の運営訓練や,地域住民も参加する住民避難訓練等,原子力災害が発生した場合における事故発生の通報から原子力災害対策本部等の解散までの応急対策の一連の流れについて総合的な訓練を実施した。

 

b 地方公共団体等における防災訓練

大規模地震に係る訓練をはじめ,台風等風水害,原子力災害,火山災害など地域の実情に即して各種の災害を想定した防災訓練が実施され,平成21年度においては防災週間中(8月30日〜9月5日)に47都道府県,約212万人が参加して地震災害等を想定した総合防災訓練が計画・実施された(消防庁調べ)。

また,後述のような都道府県の区域を越えたブロック単位の広域防災訓練も積極的に取組みをされており,広域的な応援体制や防災関係機関相互の連携協力体制の強化を図るとともに,地域住民の防災意識,連帯意識の醸成に寄与した。

(a) 八都県市合同防災訓練

首都圏にあって政治・経済などの中枢機能が集積し,各般において広域的に関わり合う八都県市(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,横浜市,川崎市,さいたま市,千葉市)が,国,防災関係機関等と連携し,一体となった訓練を実施している。

平成21年9月1日,30回目となる本訓練は,幹事市の川崎市東扇島東公園において川崎市直下を震源とする地震を想定して,「八都県市災害時相互応援に関する協定」等に基づく広域的な協力応援体制をいかした合同防災訓練を実施した。

(b) 近畿府県合同防災訓練

阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ,平成7年度から実施されている近畿府県合同防災訓練が,平成21年10月18日,「近畿2府7県(京都府,福井県,三重県,滋賀県,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県及び徳島県)震災時等の相互応援に関する協定」等に基づき,福井県坂井市テクノポート福井を中心に実施された。

この訓練では,多数の防災関係機関の参加を得て,災害対応の要員や物資等に係る広域応援を中心とした本格的な図上訓練が行われるとともに,防災関係機関の情報共有,火災,救助・救急活動,医療活動等の実動訓練が行われた。

c 平成22年度における防災訓練

平成22年度総合防災訓練大綱(平成22年4月21日中央防災会議決定)では,訓練の目的を防災関係機関の災害発生時の応急対策に関する検証・確認と国民に対する防災意識の高揚とし,訓練を実施する際の基本方針として,

<1> 実践的,効果的な訓練の推進と訓練の評価

<2> 国の積極的訓練支援等

<3> 災害被害を軽減する国民運動に寄与する防災訓練の工夫・充実

<4> 年度を通じた計画的訓練の推進

を掲げている。

政府においては,9月1日の「防災の日」に,政府本部運営訓練として,東海地震と東南海・南海地震が連動して発生した場合を想定し,関係地方公共団体及び指定公共機関等と連携して,災害発生時の地震災害応急対策の実施体制の確保等を図る訓練を実施する。

また,平成23年1月に,首都直下地震を想定し,緊急災害現地対策本部の業務について政府総合図上訓練を実施してその業務遂行能力の向上を図るとともに,関係地方公共団体との連携等に係る検証を行う。

このほか,東海地震,東南海・南海地震の各応急対策活動要領等に基づき設置される緊急災害現地対策本部等について,本部開設等の訓練,台風等により,利根川の堤防が決壊し,大規模な浸水被害が発生したことを想定した水害対処訓練や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による津波を想定した津波防災総合訓練,原子力災害を想定した原子力防災訓練をそれぞれ実施する予定としている。

(3)災害時要援護者対策

平成16年に発生した一連の風水害等における高齢者等の被災状況等を踏まえ,災害時要援護者の避難支援についての課題が明らかとなった。

このため,平成17年3月に「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定し(平成18年3月改訂),平成19年3月にはその手引きとなる先進事例を盛り込んだ「災害時要援護者対策の進め方について」を作成した。

また,平成20年度には「災害時要援護者に関する全国キャラバン」を全国8箇所(北海道,宮城,東京,愛知,大阪,広島,香川,福岡)で開催し,平成21年度には「災害時要援護者対策意見交換会」を全国13箇所(北海道,岩手,宮城,秋田,栃木,群馬,埼玉,千葉,新潟,奈良,高知,福岡,沖縄)で実施するとともに「災害時要援護者の避難対策に関する検討会」を開催し,全国における先進的な取組を集めた事例集を作成した。

今後も,市区町村を中心とした災害時要援護者の避難対策の取組を,関係省庁・都道府県が連携して支援することとしている。


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