第3章 科学技術の研究 1 災害一般共通事項



第3章 科学技術の研究

1 災害一般共通事項

(1)防災科学技術の推進

総合科学技術会議においては,第3期科学技術基本計画(平成18年度〜22年度)の分野別推進戦略等に基づき,防災科学技術,危機管理に関する技術等の研究開発の着実な推進を図った。

(2)情報セキュリティ技術の研究開発

独立行政法人情報通信研究機構においては,サイバーテロを未然に防ぐための情報通信技術や,大規模災害時における非常時重要通信の確保並びに防災に寄与する情報通信技術の研究開発を実施した。

(3)防災リモートセンシング技術の研究開発

独立行政法人情報通信研究機構においては,航空機等からの先端リモートセンシング技術の高性能化を進めるとともに,これらを用いた災害把握のための地上面変動の把握技術及び迅速なデータ提供技術の開発を実施した。また,煙霧や火災下での負傷者発見や,有害物質等の検出等を非破壊・非接触で行い,災害時の被災者救援や二次災害防止等に貢献するテラヘルツ波によるイメージング/センシング技術を実現するための要素技術に関する研究開発を実施した。

(4)高度衛星通信技術の研究開発

独立行政法人情報通信研究機構においては,災害時の地上系システム不通時の通信サービス等を実現する利便性の高い衛星ネットワークの構築に資するため,技術試験衛星VIII型(ETS−VIII)による300g程度の携帯端末で音声通信が可能な移動体衛星通信技術や,超高速インターネット衛星(WINDS)による高速衛星通信技術,災害時のトラフィック集中等にも対応可能な衛星上での再構成中継技術等の研究開発を実施した。

(5)消防防災対策に関する研究

災害時における消防防災ヘリ映像等を活用した被災状況把握システムに関する調査検討

消防庁においては,初動時における被災地情報収集のあり方について検討を行い,ヘリコプターから直接衛星へ映像を伝送するシステムの実用化に向け,実証実験を行うとともに,夜間のヘリコプターでの被災地映像についての品質等についての検証を行った。

(国費 70,163千円)

(6)衛星等による自然災害観測・監視技術

文部科学省においては,平成18年10月から陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の定常運用を開始し,関係機関と連携して発災時の緊急観測等の防災利用実証実験を行い,災害状況の把握に貢献した。また,準天頂高精度測位実験について,平成18年11月に宇宙開発委員会における事前評価を得て,開発に着手した。

(7)防災科学技術の総合的推進

a 防災分野の研究開発の調整及び連携

文部科学省においては,科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)等に基づき,「防災に関する研究開発の推進方策について」(平成15年3月)を平成18年7月に改訂した。同方策においては,2004年新潟県中越地震や同年スマトラ島沖大地震及び津波の発生等を踏まえ,災害時要援護者救援策の充実や国際的枠組みの下での研究開発を新たに重視した。これらに基づき科学技術に関する経費の見積もり方針の調整,研究開発ニーズの的確な把握,成果の普及を図るとともに,組織,災害の分野,科学技術の分野を越えた研究機関及び研究者間の連携を推進した。

(国費 1,889千円)

b 防災科学技術研究所における総合的,共通的研究等

独立行政法人防災科学技術研究所においては,防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発を行うとともに,内外の防災科学技術資料の収集・整理及び提供を行った。

c 防災科学技術研究所における施設整備

独立行政法人防災科学技術研究所においては,防災科学技術に関する総合的,共通的研究に資するため,実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)及び地震観測網等の施設整備を行った。

(8)農作物及び農業用施設等の災害防止等に関する研究

a 農作物の災害防止に関する研究

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構,独立行政法人農業環境技術研究所においては,耐冷性,耐寒性,耐湿性,耐干性品種の育成,冷害,雪害,風害,凍霜害,湿害,干害等への作物の気象災害防止技術に関する研究を行った。

b 農業用施設等に関する研究

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構においては,農地の地すべり防止に関する研究,異常降雨・大規模地震による災害の軽減対策に関する研究を行った。また,農業用施設等の災害に伴う周辺地域への影響予測に関する調査を行った。

(9)社会資本の管理技術の開発

国土交通省においては,社会資本の管理の高度化・効率化を図ることにより,自然災害への迅速な対応と社会資本の老朽化に的確に対応することを目的として,地震発生から短時間で緊急輸送ネットワークを推定する技術,土砂災害の初期の変動を検知する技術,構造物の損傷・変状進行度を計測する技術に関する検討を行った。

(国費 158,494千円)

(10)港湾・海岸及び空港における防災技術の研究

独立行政法人港湾空港技術研究所においては,港湾・海岸,空港等における災害を防止するために,次の研究を行った。

a 津波,高潮,高波に対する防災技術に関する研究

東海等地震に伴って想定される巨大津波による被害を軽減するため,津波によって沿岸の構造物が破壊される危険性や津波力の算定法についての研究など,沿岸域の防災に関する研究を行った。

また,津波防災への取組みに関し,津波防災研究センターを中心に,災害の脅威に対してグローバルな視点や地域,国レベルの視点からの対処を促進した。平成18年度には,GPS波浪計の全国展開(波浪計の設置)の着手に対応し,観測情報を収集・分析・配信するための沖合波浪観測センターの構築を実施した。

b 港湾,海岸及び空港施設に係わる耐震性能の向上と国際標準化を目指した新たな設計法に関する研究

港湾,空港地域において強震観測を実施し,その記録を基に大地震による地震の揺れを精度良く予測する手法の開発などを行い,施設の耐震性能の向上,基礎の安定性及び地盤改良に関する地盤調査法等の技術について,国際標準化を目指した新たな設計法に関する研究を行った。

c 沿岸域の流出油対策技術に関する研究

海面清掃船に搭載させる小型油回収機の開発や工事用作業船による迅速な油回収システムの研究を行った。

d 海中ロボットによる作業と監視に関する研究

海中における港湾工事の施工の無人化を目指し,海中での遠隔操作を可能とする技術や点検・診断技術に関する研究を行った。

(11)北海道における港湾・海岸防災に関する研究

独立行政法人土木研究所においては,冬期における港湾・漁港の安全確保のため,流氷障害・港内結氷等の対策及び高波による施設被害や護岸の背後における利用障害を防止するための技術開発を行った。

(12)船舶における防災技術の研究

独立行政法人海上技術安全研究所においては,リスクベースの安全性評価手法の構築のための研究,船舶の事故を再現することによる事故原因分析手法の構築のための研究等を行った。

(13)災害緊急撮影に関する研究

国土交通省国土地理院においては,関係機関の迅速な災害対応に資することを目的に,被災地の状況を広域的かつ詳細に把握できる空中写真画像をより早く提供可能となるデジタル航空カメラ撮影を実施した。

(国費 39,243千円)

(14)緊急・代替輸送支援システムの開発

国土交通省においては,公共交通機関の被災状況等を想定した輸送シミュレーションにより必要な公共輸送需要,代替公共交通機関を推計し,計画的な輸送力増強や必要な防災訓練等を公共交通機関で連携して実施するとともに,災害発生時には,リアルタイムに公共交通機関の被災・復旧状況に応じた迅速かつ適切な公共輸送計画を地方自治体等が策定・実施できるよう支援するシステムの開発を行った。

(国費 34,083千円)

(15)災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発

国土交通省国土技術政策総合研究所においては,震災や水害などの災害時に,老人や身体障害者等の要援護者に向け,災害情報を迅速・確実・的確に伝達するために,テレビ,携帯電話などの様々なプラットフォームを利用した複合的な情報伝達を実現するための情報共有機能の検討を行った。

(国費 21,398千円)

(16)気象・水象に関する研究

気象庁においては,気象研究所を中心に気象業務に関する技術の基礎及びその応用に関する研究を推進した。特に気象観測・予報に関する研究については,防災情報として重要な局地的豪雨等をより精度良く予測するため,数値予報モデルの高度化等を行った。また,我が国の地球温暖化対策の推進に資するため,日本付近の詳細な気候変化予測を行う数値モデルの開発を行った。

(国費 996,567千円)


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