5−3 平成16年(2004年)新潟県中越地震災害の復興対策



5−3 平成16年(2004年)新潟県中越地震災害の復興対策

平成16年10月23日17時56分に発生した新潟県中越地震による被害は,死者68名,負傷者4,795名(重傷652名,軽傷4,163名)住宅の全壊3,175棟,避難民は最大10万人規模となる甚大なものであった。政府においては,平成16年10月24日に災害対策基本法に基づく非常災害対策本部(平成16年新潟県中越地震非常災害対策本部,本部長:村田防災担当大臣)を設置。同日に第1回本部会議を開催し,防災担当大臣を団長とする政府調査団を新潟県に派遣することなど,被害の状況に応じて万全の体制を期すること等の決定事項に基づいた災害応急対策に関する基本方針を決定し,平成16年11月19日までに21回にわたって本部会議が開催された。また,平成16年10月25日には現地連絡調整室を現地支援対策室に格上げし,内閣府副大臣や内閣府政務官を派遣し,平成16年12月3日に閉鎖されるまで現地支援を実施した。平成16年11月19日には,災害復旧及び災害から復興を支援するため,内閣府副大臣を議長とする「新潟県中越地震復旧・復興支援会議」を設置し,平成16年度補正予算においては約3,000億円を計上した。また,3,000億円規模で10年間に600億円程度の運用益を見込む復興基金の造成に必要な地方債の許可とその利子支払額に対する交付税措置を行った。

更に,全村避難を余儀なくされた山古志村への復旧・復興支援については,内閣府に「山古志村復旧・復興支援関係省庁連絡会議」を設置し,帰村に向けた復旧・復興支援策について検討し,平成17年3月に山古志村復旧・復興支援プログラムをとりまとめた。また,新潟県において,平成17年8月9日に「新潟県中越大震災復興計画」を取りまとめている。

なお,現在も引き続き行われている主な復興事業等については以下のとおりである。

(1)道路施設の復旧事業

地震直後,国・県道の幹線道路での全面通行止めは延べ241か所にのぼり,61集落を孤立させる大きな被害となった。更に被災地は有数の豪雪地帯であるため,冬に備えた降雪期までの1ヵ月間での道路の応急復旧が大きなテーマとなった。直轄国道は降雪期前に応急復旧を終える一方,県と市町村管理道路では重要路線に絞って応急復旧に取り組み,県管理道路の全体被災970か所のうち752か所,市町村管理道路の1,723か所のうち429か所を完了させ,冬期の道路交通を大きな混乱なく確保した。被災地は平成16,17年度の2年連続で記録的な豪雪に見舞われたが,平成18年度末において県17か所,市町村13か所を残して完了した。

その後,中越地震により被災した県管理道路の970か所,市町村管理道路の1,723か所は,平成19年12月末までに全か所の復旧工事を完了した。

(2)土砂災害対策事業

一級河川芋川流域において多数の河道閉塞をはじめとする甚大な土砂災害が発生したことから,国土交通省,新潟県,新潟大学の学識経験者等の専門家からなる「芋川河道閉塞対策検討委員会」を開催し,応急対策並びに芋川の恒久的な砂防計画の検討を行った。現在,地域の復興計画と整合を図りつつ土砂災害に対する芋川流域の安全確保を図るため,国土交通省の直轄砂防事業並びに直轄地すべり対策事業により復旧中である。

新潟県中越地震による砂防関係の公共土木施設の被災及び災害関連緊急事業等については,国,県,市町村事業併せて205か所について平成19年3月末までに工事が完了した。なお,地震によって市街地や山間地で多数発生した「がけ崩れ」対策として,災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業及び災害関連地域防災がけ崩れ対策事業に関しては激甚な被害に鑑み,がけ高や斜面種別などの補助要件を緩和した特例適用により実施した。

(3)農地・農業用施設の復旧事業

被災直後作付けに影響があった水田面積は被災地域の約4割,1万haに及んだが,農地・農業用施設災害復旧事業による復旧は平成19年11月末までに全て完了した。

(4)山地災害対策

甚大な山地災害の発生に伴い,林野庁,新潟県,近隣県及び治山ボランティアが合同で山地災害危険地区等の緊急点検を行うとともに,治山施設災害復旧事業及び災害関連緊急治山等事業等により,緊急に復旧事業を行い,平成20年3月末までに105か所において工事が完了した。また,特に被災規模の大きい12か所について林野庁の直轄地すべり防止事業等により計画的に復旧を進めている。

(5)住宅対策

災害救助法に基づく応急仮設住宅を13市町村(地震発生当時)に3,460戸建設し,平成17年3月31日時点では2,935世帯,9,649人が入居していたが,平成19年12月31日までに全ての応急仮設住宅からの退去が完了した。

特に被害の大きかった長岡市(旧山古志村,旧小国町を含む。),小千谷市,川口町及び十日町市では,住家を失った被災者のための罹災者公営住宅を合わせて336戸整備した。また,被災者向けの一般公営住宅も長岡市(旧栃尾市を含む。),小千谷市,十日町市及び魚沼市で,合わせて121戸を整備した。そのほか川口町では,被災した公営住宅の復旧事業で16戸を整備した。

また,災害により住家が全壊した世帯等に対して,被災者生活再建支援法に基づき,平成20年3月31日現在5,123世帯に対し約72億2千万円の支援金を支給したのをはじめ,生活資金の貸付や給付において各種支援を行った。

(6)集落再生事業

今回の地震による災害で,住民の居住に適当でないと認められた移転促進区域においては,新潟県中越地震で移転する住居数が10戸以上から5戸以上に採択要件が緩和された防災集団移転促進事業を活用し,長岡市,小千谷市,川口町の9地区(94戸)がコミュニティの維持・再生に取り組んでいる。

また,甚大な被害を受けた長岡市山古志地域では,最後まで継続していた避難指示も平成19年4月1日にはすべて解除され,被害の大きい6集落において,集落再生計画に基づく新しい集落づくりが進められている。

(7)特定非常災害の指定

「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき「平成十六年新潟県中越地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」により新潟県中越地震による被害を特定非常災害として指定し,行政上の権利利益の満了日の延長,期限内に履行されなかった行政上の義務の履行の免責,法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置を適用した。また,同政令の一部を改正する政令により,長岡市,柏崎市,小千谷市,十日町市,見附市,栃尾市,魚沼市,北魚沼郡川口町,刈羽郡刈羽村及び同郡西山町の10地区に係る民事調停法による調停の申立ての手数料を免除する措置を講じた。

更に,平成18年には同政令の一部を改正する政令により,応急仮設住宅の存続期間が延長できるよう,建築基準法による応急仮設住宅の存続期間の特例に関する措置を講じた。

(8)税制改正

平成18年度税制改正において,新潟県中越地震災害により滅失・損壊した家屋及び償却資産に代わるものとして一定の被災地域内で取得する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税について,最初の4年間2分の1減額する措置を,地震発生日以後,平成20年度までの間に取得したものに限り講ずることとした。


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