映画「日本沈没」と地球科学に関するQ&Aコーナー【東京大学】
特徴
1. 災害を舞台とする映画に合わせ、地球科学や防災に関する基礎的な知識の普及啓発を図るための取組である。
2. 質問と回答は、広くホームページで公開されており、映画を見なかった人でも参考とすることができる。
概要
東京大学地震研究所では、2006年7月の映画「日本沈没」の公開に合わせ、映画を見た人からの地球科学や防災に関する質問に答えるQ&Aコーナーのホームページを開設した。
Q&Aコーナーには、映画に描かれた具体的な内容に関連したものから、地球科学や防災科学に関する専門的なものまで、様々な質問が寄せられた。
Q2 | 日本が沈むことはないのですか? |
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A2 | 太平洋プレートが東側から日本の下に沈みこんだり、南からフィリピン海プレートが沈み込んだりしているので、現在の日本はこれらのプレートに押されて、全体としては盛り上がっています(隆起しています)。ですから、現在の状態が続く限り日本が沈むことはありません。映画では、メガリスの沈降によって日本列島を押していたプレートが日本列島を引っ張ることになり、日本が沈没します。そのようなことになったとしても、沈むためには100万年もの時間がかかります。 |
Q10. | 映画のように日本各地で、大地震が一斉に、起こる事はあるんですか? |
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A10. | 大地震は滅多に起きません。したがって日本各地で一斉に地震が起きることは事実上ありません。しかし、プレートの沈み込みに伴う地震では隣り合う場所で発生する地震は連動する性質があります。よく知られている例は、1854年の東南海地震で、南海地震とは30時間の間隔で発生しています。北海道の太平洋側で発生する地震も数年から10年程度の間隔で連動する性質があります。ただし北海道と九州の地震というように距離的に離れた地震が連動する例は知られていませんので、ご安心下さい。 |
「日本沈没」と地球科学に関するQ&Aコーナー(東京大学地震研究所ホームページ)
目的
Q&Aコーナーのホームページには、以下のように示されている。
映画「日本沈没」は、単なる娯楽映画の枠を越え、最新の地球科学や防災科学とも密接につながり、実際に起こりうる地震・火山噴火災害も描いています。そこで、このQ&Aでは映画「日本沈没」をご覧になった方から、地球科学や防災に関するご質問を受け付け、わかりやすく回答することを意図しています。
経緯及び活動状況
1. 映画の原作となった小説「日本沈没」は、作家小松左京氏により1973年に発表された200万部の大ベストセラーであり、同年には映画化され、900万人を動員した。
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2. 小説「日本沈没」には、地球科学や防災科学において、以下のような功績があった。
(1)マントル対流やプレートテクトニクスなど、「生きている地球」を認識させた。
(2)まるで、阪神・淡路大震災を見てきたような地震災害に関する記述がされていた。
(3)地球科学者を目指す若者など、「日本沈没世代」の輩出につながった。
3. 映画「日本沈没」は、33年ぶりにリメイク版が製作され、2006年7月に全国ロードショーされた。(製作:映画「日本沈没」製作委員会、配給:東宝)
4. 映画は、東京大学地震研究所のスタッフなどの専門家が、シナリオ段階から協力したほか、防衛省(当時は防衛庁)、自衛隊、東京消防庁、海洋研究開発機構が撮影に全面協力し、製作された。
5. 東京大学地震研究所では、映画の公開に合わせ、映画を見た人からの地球科学や防災に関する質問に答えるQ&Aコーナーのホームページを開設した(ただし、映画の結末など具体的な内容に対する詳細な回答を避けるため、回答は、個別の質問に対してではなく、質問全体を包含したものとなっている)。
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6. ホームページに寄せられた質問は、映画に描かれた具体的な内容に関連したものから、地球科学や防災科学に関する専門的なものまで多岐にわたるが、主なものは以下のとおり(文章は簡略化している)。
(1)日本が沈むことはないのか。
(2)地震・噴火・津波などの自然災害に対しての予知は、どこまで進んでいるのか。
(3)富士山が噴火する可能性はあるのか。またその被害はどの程度なのか。
(4)フォッサマグナに亀裂が入ったり、破壊したりすることはありえるのか。
(5)想定される東京直下型地震は、プレートと関連性があるのか。
(6)日本沈没の時、日本列島はどのように引っ張られるのか。
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7. 東京大学地震研究所の山岡耕春教授は、災害を扱う小説・ドラマ・映画の防災意識向上への効果について、以下のように指摘している。
(1)視聴者が圧倒的に多い。
(2)主人公への感情移入や普段への影響をリアルに描写することにより、災害を身近に感じることができる。
(3)日本では、災害と無縁ではないという感情を培う。
団体名 | 東京大学地震研究所 | |
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連絡先 | 住所 | 〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1 |
担当 | アウトリーチ推進室 | |
電話番号 | 03-5841-5643 | |
outreach@eri.u-tokyo.ac.jp | ||
URL |
ssh19013