2−4 災害復旧・復興対策の実施



2−4 災害復旧・復興対策の実施

災害からの復旧・復興においては,災害復旧事業等による公共的施設の復旧整備等による単なる原状回復にとどまらず,より安全性に配慮した地域振興のための基礎的な条件づくりとともに,被災地復興の計画的実施,被災者の自立した生活再建の対策,被災者の住まい確保対策,地域経済の復興対策等について,法律・税制・予算措置等による様々な措置を講じることとしている。

(1)公共施設等の復旧

a 主な災害復旧事業

河川・道路・港湾等の公共的施設等が被災した場合においては,公共の福祉の確保を図る観点等から,その迅速な復旧が望まれる。国が実施する主な災害復旧事業は,表2−2−2のとおりであるが,できる限り速やかに実施されることが必要であり,原則として直轄事業については2か年,補助事業については3か年で事業を完了させることとしている。

また,国は災害復旧事業を実施するために大きな財政負担を負う被災地方公共団体に対し,災害関係地方債の同意又は許可及びこれに対する財政融資資金の貸付,普通交付税の繰上げ交付,特別交付税における災害に伴う特別の財政需要の算定等の措置を講じ,財政負担の軽減を図っている。

表2−2−2 主な災害復旧事業 表2−2−2 主な災害復旧事業の表

b 激甚災害制度

前述の措置に加えて,国民経済に著しい影響を及ぼし,かつ,当該災害による地方財政の負担を緩和し,又は被災者に対する特別の助成を行うことが特に必要と認められる災害が発生した場合には,激甚(じん)災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律により,中央防災会議が定める基準に基づき,当該災害を政令で「激甚災害」に指定し,災害復旧事業に対する国庫負担率の引上げ等,特別な助成措置を講じ,地方公共団体や被災者の負担軽減を行っている(図2−2−8)。例えば,河川や道路などの公共土木施設の災害復旧事業について過去5ヵ年の平均国庫負担率を見ると,通常の災害の場合は69%であるが,激甚災害に指定された災害の場合は82%となっている。

最近5年間の激甚災害の適用実績は, 附属資料13 のとおりである。

図2−2−8 激甚災害制度の概要 図2−2−8 激甚災害制度の概要の図
(2)地方公共団体の復興支援

大規模な災害により甚大な被害が発生した場合には,被災者の生活再建や地域の復興を迅速かつ円滑に推進するため,被災地方公共団体は早期に的確に対応する必要があるが,そのためには事前にその備えをしておくことが重要である。

このため,国においては,地方公共団体が災害の態様や地域の特性に合わせて復興対策を迅速かつ的確に検討できるよう,現状や問題点を様々な角度から調査・検討し,復興支援方策の充実を図っている。

(3)被災者の生活再建・住まいの確保対策

a 災害弔慰金の支給等

災害により被害を受けた場合に,災害により死亡した者の遺族には災害弔慰金,災害により著しい障害を受けた者には災害障害見舞金が支給される。災害により負傷又は住居,家財の損害を受けた者には生活再建に必要な資金の貸し付けが行われる。

b 被災者生活再建支援対策

被災者生活再建支援法は,平成7年に発生した阪神・淡路大震災が契機となって平成10年に制定された法律であり,自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し,被災者生活再建支援金を支給することにより,その生活の再建を支援し,もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としている。

具体的には,一定規模以上の自然災害により住宅が全壊するなどの被害を受けた世帯に対して被災者生活再建支援金(最大300万円)が支給される。平成21年度における被災者生活再建支援法の適用災害は表2−2−4のとおりである。

なお,この制度に基づく支援金の支給状況は, 附属資料14 のとおりである。

表2−2−3 被災者生活再建支援制度の概要 表2−2−3 被災者生活再建支援制度の概要の表
表2−2−4 被災者生活再建支援法の適用災害(平成21年度) 表2−2−4 被災者生活再建支援法の適用災害(平成21年度)の表

c 被災者の住まいの確保対策

被災者の住まいの確保については,まず第一に,住宅被害の軽減を図ることが重要であることから,国においては,平成18年度税制改正において住宅の耐震改修費用の一定額を税額控除する制度を創設し,耐震改修及び耐震診断にかかる費用に対する補助制度の充実を図り,次に,不幸にして災害により住宅を失った被災者の住まいの確保対策として,地震保険等への加入を促進し,国民一人一人の自覚に根ざす「自助」による災害への備えの充実を図っている。

ひとたび災害が発生した場合は,避難所の開設,応急仮設住宅の提供等に加えて,住宅を再建,補修しようとする者に対しては住宅金融支援機構等による災害復興住宅融資制度による資金の貸し付け,災害救助法に基づく住宅の応急修理,被災者生活再建支援制度による住宅の再建・補修等の支援,住宅金融支援機構等による災害復興住宅融資制度による資金の貸し付けなどを実施している。住宅を再建しない低額所得者の被災者に対しては,公営住宅を提供することによって,被災地の実情や被災者の意向等に配慮した措置を講じることとしている。

更に,被災者の住宅の再建や居住の安定に対しては,社会資本整備総合交付金の活用が可能である。社会資本整備総合交付金は,地域における住宅政策を総合的かつ計画的に推進しようとするもので,地方公共団体の提案に基づく事業も国の助成対象とする柔軟な制度であるため,被災者による住宅再建や,住情報の提供及び住宅相談などの事業について,地方公共団体を支援することも可能である。

また,個人住宅被害そのものに対する経済的支援として,所得税と地方税の雑損控除,災害減免法に基づく所得税額の軽減・免除,住宅金融支援機構の既存債務の返済猶予等を講じることとしている。

このように,被災地における住まいの確保対策については種々の施策を効果的かつ総合的に講じることとしている。

特に,地震保険や地震等による損害を対象とする各種共済の世帯加入率は徐々に高まってきているものの,なお一層の普及を図ることが必要である。とりわけ地震保険については,平成18年度税制改正において地震保険契約等に係る地震等相当部分の保険料等の全額(最高で5万円)を所得控除する制度を創設したことに加え,利用を促進するために,平成19年10月1日より建物の免震・耐震性能に関する割引制度が新たに導入されるとともに,地震保険の加入率の上昇に対応するため,平成20年4月以降,1回の地震等によって支払われる保険金の限度額を5兆円から5兆5,000億円に引き上げたところである。

d 災害に係る住家の被害認定等

災害により被災した住宅については,余震等による倒壊の危険性を判定する被災建築物応急危険度判定により,二次災害の防止が図られるとともに,全壊,半壊等の被害の程度を判定する住家被害認定により,被害規模の把握及びり災証明書の発行が行われる。り災証明書に記載される被害の程度に応じて,被災者生活再建支援法による支援金の支給をはじめとする様々な被災者支援措置が講じられる。

住家被害認定調査は,「災害の被害認定基準」(平成13年6月28日付内閣府政策統括官(防災担当)通知)(表2−2−5)により,市町村により実施される。

内閣府においては,被害認定調査の標準的な調査・判定方法を示す「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を平成21年6月に一部改定し,浸水被害,地震被害等について,より被害の実態に即した認定が行えるよう運用の見直しを行ったところである。

表2−2−5 災害の被害認定基準 表2−2−5 災害の被害認定基準の表
(4)市街地の復興対策

災害後の被災者の生活確保・再建及び地域の経済活動の継続・復興のためには,これらの活動を支える市街地の復興及び住環境整備が不可欠となる。

市街地の復興のため,土地区画整理事業,市街地再開発事業,住宅地区改良事業等が実施され,更に防災上の理由から住宅を集団で移転する場合には,防災集団移転促進事業等が行われることとなるが,国においてはこれらに対し助成措置を講じている。

また,被災者の生活と密接に関連するライフライン,道路等の都市基盤施設については,迅速な復旧を行うことが基本であるが,災害によって脆弱性が明らかにされた施設については,単なる原状復旧ではなく耐震性の強化等を含む,より安全性に配慮した都市基盤施設の復興を実施していくことが必要となる。

なお,災害によるがれき等の廃棄物の処理を市町村が行う場合は,国がその費用の一部を助成する措置を講じている。

(5)地域経済の復興対策

地域の経済状況は,その地域の住民の雇用,収入その他の生活基盤の安定の面で,非常に大きくかかわってくるものであり,また地方公共団体の復興財源の確保にも大きな影響を与える。

地域経済の復興においては,前提となる都市基盤施設の早期復旧,防災まちづくり等を計画的に推進するとともに,産業復興については,被災した中小企業に対する日本政策金融公庫,商工組合中央金庫等の災害復旧資金の貸付や,信用保証協会による信用保証の特例措置等の制度が設けられているほか,農林漁業者に対してはその経営の安定を図るため各種の支援制度がある(表2−2−6)。

その他,総合相談体制の整備,金融面での支援といった個々の事業者を対象とした施策や,イベントやプロジェクトの企画・誘致,観光・地場産業の振興等の地域全体に波及効果を及ぼすような措置を講じていくことになる。

表2−2−6 主な被災者支援措置 表2−2−6 主な被災者支援措置の表

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