2−3 災害応急対策の実施



2−3 災害応急対策の実施

(1)災害発生時の措置,応急対策

災害発生時においては,発災直後の情報の収集・連絡,活動体制の確立と並行して,人命の救助・救急,医療,消火等の初動の応急対策活動を迅速かつ的確に講ずることが求められる。

災害応急対策は,災害対策基本法上も,一次的には基礎的な地方公共団体である市町村において災害対策本部を設置して対応することとなる。風水害,津波,火山の噴火のような場合であって予測できるときは,市町村長が避難勧告や避難指示を発令して災害に備えることとなる。また,地震のように突発的に災害が発生した場合には,直ちに,被害の把握,人命救助等の初動の応急対策活動を実施するとともに,災害の状況に応じて,避難所の開設,水・食料等の確保,応急仮設住宅の建設等の応急対策活動を実施することとなる。

これらの活動に対して,都道府県知事が災害救助法を適用して支援する( 附属資料12 )など,災害の状況に応じて,国,地方公共団体,公共機関がそれぞれ相互に密接な連携のもとに協力して実施することとなる。

国においては,以下のとおり体制を整備し,災害応急対策を講ずることとしている。

a 情報収集・連絡等体制

応急対策を講ずるうえで最も重要となる情報収集・連絡体制に関しては,官邸の内閣情報集約センターが窓口となり,24時間体制で情報の収集・伝達等の対応に当たることとし,関係省庁における情報の共有化を図っている。

大規模災害や社会的影響の大きい災害が発生した場合,緊急参集チームが官邸危機管理センターに緊急参集し,政府としての初動措置に関する情報の集約等を行うこととしている。

また,内閣府においては,被害規模の早期把握に関して,地震発生後,地震規模により異なるものの概ね10分で被害を推計する「地震防災情報システム(DIS)」を整備し稼働させている。一方,被害規模の早期把握のため,各省庁はそれぞれの立場において現地の関係者からの情報を集約するほか,警察庁,消防庁,海上保安庁,防衛省においては,一定規模以上の地震の場合における航空機,船舶等を活用した情報収集体制の整備を行っている。

更に,被災地のより詳しい状況把握と的確な災害応急対策を講ずるため,状況により,防災担当大臣又は内閣府副大臣を団長とし,関係省庁の要員で構成する政府調査団を派遣することとしている(緊急災害対策本部が設置されている場合等は,内閣総理大臣が団長となることがある( 附属資料7参照 ))。

b 災害応急対策の広域活動体制

地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害の場合,警察,消防,海上保安庁及び自衛隊の実動部隊を広域的に派遣し,災害応急対策活動を行う。

警察庁及び都道府県警察においては,都道府県の枠を越えた広域的な災害対策の専門部隊として,警察広域緊急援助隊(規模:約4,700人(警備部隊約2,600人,交通部隊約1,500人,刑事部隊約600人))を確立している。

消防庁においては,大規模な災害に出動し効果的な消防応援活動を行うための部隊である緊急消防援助隊(平成22年4月1日現在の登録部隊数4,264隊(消火部隊1,571隊,救助部隊388隊,救急部隊981隊,その他1,324隊)約51,600人規模)を的確かつ迅速に出動可能とし,被災地の消防の応援を行う体制を構築するため,緊急消防援助隊の編成及び資機材の充実強化を図っている。

また,緊急消防援助隊の機動力の強化等を図るため,平成20年5月に消防組織法の一部が改正され,緊急消防援助隊の出動に関する消防庁長官による指示の要件の見直し,消防応援活動調整本部の設置,災害が発生した市町村で既に行動している緊急消防援助隊に対する都道府県知事による出動の指示権の創設等,所要の整備がなされた。

また,防衛省・自衛隊においては,都道府県知事等の要請に基づく災害派遣により,救出・救助等の災害応急対策活動を行うこととしている。

なお,平成21年度の自衛隊の災害派遣は559件に上り(救急患者の搬送件数も含む。),延べ約3万4千人の人員が派遣された。

これらの機関の職員の総数は,以下のとおりである(表2−2−1)。

表2−2−1 実動部隊の派遣体制 表2−2−1 実動部隊の派遣体制の表

c 広域医療搬送等

(a) 広域医療搬送の目的と概要

広域医療搬送は,重傷者のうち,被災地内での治療が困難であって,被災地外の医療施設において緊急に手術や処置などを行うことにより,生命・機能予後の改善が十分期待され,かつ搬送中に生命の危険の少ない病態の患者を,被災地外の医療施設まで迅速に搬送し治療することを目的としている。

広域医療搬送の概要は,<1>地震発生後速やかに被災地外の拠点に参集した災害派遣医療チーム(DMAT)が,航空機等により被災地内の広域搬送拠点へ移動<2>被災地内の広域搬送拠点に到着したDMATの一部は,被災地内の災害拠点病院等で広域医療搬送対象患者を選出(トリアージ)し,被災地内広域搬送拠点まで搬送<3>広域搬送拠点の臨時医療施設(SCU)にて,搬送した患者の広域搬送の順位を決定するための再トリアージ及び必要な追加医療処置を実施<4>搬送順位にしたがって,被災地外の広域搬送拠点へ航空搬送し,広域搬送拠点から救急車等により被災地外の医療施設へ搬送して治療,という流れになっている。

SCU内で処置を行うDMAT(平成21年9月1日広域医療搬送実動訓練) SCU内で処置を行うDMAT(平成21年9月1日広域医療搬送実動訓練)の写真

(b) 広域医療搬送計画

大規模災害発生後,速やかに広域医療搬送を実施できるよう,事前計画を策定している。

現状においては,「東海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画,「東南海・南海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画及び「首都直下地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画における,広域医療搬送計画が策定されている。

また,広域医療搬送の体制などに関する検討を関係省庁などが連携して行っており,その結果は図上訓練,総合防災訓練などを活用して検証し,改善に努めている。

図2−2−2 広域医療搬送概要図 図2−2−2 広域医療搬送概要図の図

(c) 人工透析の提供体制の確保等

災害時における人工透析の提供体制の確保等については,厚生労働省において,「厚生労働省防災業務計画」(平成13年2月14日厚生労働省発総第11号)に定めるとともに,都道府県及び社団法人日本透析医会に対し,人工透析の提供体制の確保を図るよう要請してきている。今後も,都道府県及び社団法人日本透析医会と連携して,大規模な災害発生時にも対処できる人工透析の提供体制の確立に向けた取組を行う。

d 災害対策本部の設置

災害の規模その他の状況により,国が災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは,災害対策基本法第24条第1項の規定に基づき,防災担当大臣を本部長とする「非常災害対策本部」を,また,著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては,同法第28条の2第1項の規定に基づき,内閣総理大臣を本部長とし,全閣僚等を本部員とする「緊急災害対策本部」を内閣府に設置することとしている( 附属資料6参照 )。

非常災害対策本部又は緊急災害対策本部は,政府の災害対策本部と被災地方公共団体との連絡調整等を行い,災害応急対策の円滑な実施の支援・協力を行う。

このため,必要に応じ,被災地等に内閣府副大臣を本部長とする現地災害対策本部を設置し,迅速な災害応急対策を講ずることとしている。

平成22年4月1日現在において,災害対策基本法に基づく非常災害対策本部は,設置されていない。

e 防災に関する人材の育成・活用について

災害発生時に迅速・的確な対応ができるかどうかは,災害対応に携わる人材によるところが大きい。特に,国,地方公共団体の防災担当職員は,災害発生時においては,想定外の事態へも即座に対処する能力や,様々な関係機関との調整・連携能力等,平常時と異なる状況下での対応が求められる。

このような防災に関する人材の育成・活用方策全般について調査審議するため,平成14年7月,中央防災会議に「防災に関する人材の育成・活用専門調査会」が設けられ,検討が行われた(平成15年5月に報告取りまとめ)。

上記専門調査会の報告を受け,内閣府では,平成15年度から,各省庁の防災担当職員を対象とした合同研修を毎年度実施し,平成21年度は,平成21年8月6日から7日までの2日間,有明の丘基幹的広域防災拠点施設において,14省庁等から58名が参加して行われた。

また,地方公共団体の防災担当職員・消防職団員や地域の防災リーダー等に対しては,都道府県等において研修等が実施されているが,消防庁では,平成17年度より消防大学校において,地方公共団体の首長等幹部職員を対象に大規模災害発生時における対応能力の習得を目的とした「トップマネジメントコース」,地方公共団体の自主防災組織の育成担当者を対象に必要な知識及び能力の習得を目的とした「自主防災組織育成コース」等を実施するとともに,住民や地方公共団体の防災担当職員を対象として,インターネットを活用した家庭や地域でいつでも体系的に学習できる「防災・危機管理e−カレッジ」の本格運用を,平成18年3月から開始している。なお,平成21年度には,小中学生などに対する防災教育において活用できる指導者用防災教材「チャレンジ!防災48」を作成し,全国の都道府県,市町村,消防本部等に配布したほか,「防災・危機管理e−カレッジ」で公開している。

更に,平成17年度から大規模災害を想定した図上型防災訓練の実施を通して,市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定と応急体制の点検,住民と行政との信頼関係に基づく地域の防災力の強化を図ることを目的とした,防災危機管理ブロック・ラボを全国3ブロックに分け実施している。

また,農林水産省では,平成18年度から全国土地改良事業団体連合会の「農村災害復旧専門技術者制度」と連携を図り,災害対応面で技術支援を行うための人材確保を図っている。平成21年度は,平成22年1月から3月にかけ,全国33会場において,農地・農業用施設等の災害対応に一定の知識と経験を有した技術者を対象とした講習会の開催を支援しており,全国で「農村災害復旧専門技術者」が272名(累計2,570名)認定された。

(2)情報・通信体制の整備

a 情報収集・伝達システム

大規模な災害が発生した際,政府として迅速な災害応急対策がとれるよう,気象庁からの地震・津波情報,関係省庁等からのヘリコプターにより撮影された被災映像,指定公共機関,地方自治体,その他防災関係機関からの被害情報など,災害に関する情報を総合的に収集し被害規模を把握するとともに,これらの情報を直ちに総理大臣官邸,指定行政機関等へ伝達するためのシステムが構築されている。

まず,地震の情報については,気象庁は全国約630地点に震度計と約240地点に地震計を設置してオンラインで地震の観測データを収集し,その他の機関の観測データとあわせ地震活動等総合監視システム(EPOS)により処理・解析して,緊急地震速報や津波警報・注意報,地震・津波情報を発表している。

また,消防庁は,震度情報ネットワークシステム整備事業により全国の都道府県,市町村の約2,900地点に設置した震度計から観測される震度情報を消防庁へ即時に情報収集し,広域応援体制確立の迅速化等に利用している。なお,震度情報ネットワークシステムは,整備から10年以上が経過し,更新時期を迎えるとともに,その具体的な配置基準も課題となった。このため,消防庁と気象庁は合同で「震度に関する検討会」を平成20年度に開催し,震度計の具体的な配置基準や設置環境等について検討を行い,地方公共団体に示すとともに,震度情報ネットワークシステムの更新・整備について,消防庁は財政的な支援を行うこととした。

一方,独立行政法人防災科学技術研究所は,全国約1,000箇所に強震計を設置し,地震情報を通信ネットワークで収集・配信するための設備の整備を図っており,地震発生時には気象庁が行う震度情報の発表に活かされるなど初動対応等に活用されている。

次に,雨量・風速等の情報については,気象庁が局地的な気象情報の観測を行う地域気象観測システム(AMeDAS),降水の強さ・風の3次元分布を観測する気象ドップラーレーダー,アジア・太平洋域の雲の分布・高度などを広く観測する静止気象衛星等を活用して観測データを収集し,数値解析予報システムにより解析,予測等が加えられている。

気象庁で処理・解析により作成された情報は,気象庁本庁に設置された気象情報伝送処理システムを介して内閣府,消防庁,海上保安庁,防衛省等の中央府省庁と共に,国土交通省地方整備局,地方公共団体に伝達されている。

また,国土交通省が,一級河川等を対象として,雨量・水位テレメータ及びレーダ雨量計並びに情報処理設備からなる河川情報システムを整備して雨量・水位の情報を収集している。

b 防災無線通信網

防災関係機関では,災害時に人命・財産に係わる重要な通信を確保するために,専用無線通信網を整備している。これらの無線通信網は,電気通信事業者回線が途絶した場合であっても迅速かつ確実に災害情報を伝達し,また,商用電源が停電した場合であっても予備電源などにより機能を維持することを目指して整備がなされている。最近は,大規模地震発生時などにおいて多様な情報通信を行うため,通信回線のデジタル化が進められている。

防災無線網のうち,中央防災無線網,消防防災無線網,都道府県防災行政無線網,市町村防災行政無線網,防災相互通信用無線等の概要は次のとおりである(図2−2−3)。

図2−2−3 防災関係通信網の概念図 図2−2−3 防災関係通信網の概念図の図

(a) 中央防災無線網

中央防災無線網は,全ての指定行政機関及び指定公共機関とネットワーク化されており,大規模な災害が発生した場合においても,政府の緊急(非常)災害対策本部,総理大臣官邸,指定行政機関,指定公共機関等との間で災害情報の収集・伝達を行うことを目的として整備されている。この防災無線網は,固定通信回線(画像伝送回線を含む。),衛星通信回線,移動通信回線から構成されており,相互に機能を補完して,いざという時に信頼しうる通信手段を提供している。更に,デジタル化による大容量通信への対応,IP(インターネット・プロトコル)の導入による利便性の向上を図ることによって,気象庁が発表する緊急地震速報を,中央防災無線網により防災関係機関に配信したり,防災関係機関と災害情報を共有するため,中央防災無線網を活用した防災情報共有LANを整備中である(図2−2−4)。

なお,内閣府を中心に,全国の地方公共団体等の防災関係機関の防災・災害情報を政府の対策本部等ともシームレスに共有するための仕組みとネットワークの整備を推進することとしている(「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月11日IT戦略本部決定))。

図2−2−4 中央防災無線概念図 図2−2−4 中央防災無線概念図の図

また,首都直下地震に備えるため,東京湾臨海部基幹的広域防災拠点整備基本計画に基づき合同現地対策本部が設置される有明の丘地区と物流コントロールセンターとなる東扇島地区において,非常時における現地対策本部の運用を支える情報通信基盤を整備している。

<1> 固定通信回線

固定通信回線は内閣府からの電話,ファクシミリ,災害映像,地震防災情報システム等,各種防災情報を中継・伝送する基幹的な通信回線であり,総理大臣官邸などの在京の指定行政機関等(29機関),指定公共機関(20機関)及び立川広域防災基地内の機関(11機関)をマイクロ波による大容量の固定無線回線で結んでいる。

この他,国土交通省の回線と相互接続し,都道府県の災害対策本部と総理大臣官邸及び国の災害対策本部を含む防災関係省庁との間で直接連絡がとれるように通信体制を確立している。

<2> 衛星通信回線

内閣府から遠隔地にあるため,直接固定通信回線を結ぶことが困難な指定公共機関等36機関との間については衛星を利用した通信回線で結んでいる。

また,首都直下の大規模な地震により,中央防災無線網を支える庁舎等が損壊して,固定通信回線が使用できなくなった場合のバックアップとして,指定行政機関,首都圏に所在する指定公共機関等の41機関に可搬型の衛星通信装置を配備している。

更に,国の災害対策本部と現地災害対策本部との間で,迅速に通信回線が確保できるよう全国13拠点にあらかじめ可搬型の衛星通信装置を配備している。緊急時には,これを設置することで衛星による通信回線が確保される。

この他,東海地震,首都直下地震への対策として,大規模災害発生時に,早急に国の現地対策本部を立ち上げ関係10都県との連絡を取るためあらかじめテレビ会議装置を設置している。

<3> 移動通信回線

移動通信回線は,移動時あるいは未就業時においても,災害対策要員等との間で連絡することができるように整備しているもので,都内4箇所に基地局を設置し,車両,災害対策要員等の自宅等に無線電話装置を配備して通信の確保を図っている。

更に,気象庁からの警報発表に連動して緊急参集連絡を行う緊急情報連絡用携帯電話を災害対策要員等に配備している。

また,政府調査団が被災地に派遣された場合には,調査した被災現場の画像を現地から伝送するため,画像伝送機能を強化した携帯電話を活用することとしている。

(b) 消防防災無線網

消防庁と都道府県との間を結ぶ無線網で,地上系及び衛星系で構成されている(図2−2−5)。

図2−2−5 消防防災無線概念図 図2−2−5 消防防災無線概念図の図

<1> 地上系

国土交通省の無線設備と設備を共用して通信回線を確保しており,消防庁から全都道府県に対し電話,ファクシミリによる一斉伝達を行うほか,災害情報の収集・伝達に活用されている。

<2> 衛星系(衛星通信ネットワーク)

消防庁と全都道府県の間を結んでおり,通常の音声通信のほか,一斉伝達,データ通信,映像伝送等が可能で地上系を補完する無線通信網として位置づけられている。

(c) 都道府県防災行政無線網

都道府県が災害情報の収集・伝達を行うために,都道府県とその出先機関,市町村,防災関係機関等との間を結ぶ無線通信網で,地上系,衛星通信ネットワークによる衛星系又は両方式により構成されている(図2−2−6)。

図2−2−6 都道府県防災行政無線概念図 図2−2−6 都道府県防災行政無線概念図の図

(d) 市町村防災行政無線網

市町村が災害情報を収集し,また,地域住民に対し災害情報を周知するために整備している無線通信網で,市町村庁舎,学校,病院等の防災関係機関・生活関連機関,車両等間をネットワークする移動系,市町村庁舎と屋外拡声子局や家庭内の戸別受信機を結ぶ同報系から構成されており,これまでも豪雨等の災害の発生時における住民への情報伝達手段として,その重要性が認識されてきた(図2−2−7)。

また,消防庁においては,有事関連情報のほか,津波警報や緊急地震速報,噴火警報などの緊急情報を,人工衛星を用いて市町村に瞬時に伝達し,同報系の防災行政無線にも接続可能な全国瞬時警報システム(J-ALERT)を平成18年度から運用しており,平成22年度には,柔軟な音声放送等を可能とするシステムの高度化を行うとともに,高度化後のJ-ALERTを全国一斉整備することとしている。

図2−2−7 市町村防災行政無線概念図 図2−2−7 市町村防災行政無線概念図の図

(e) 防災相互通信用無線

地震災害,コンビナート災害等の大規模災害に備え,災害現場において警察庁,消防庁,国土交通省,海上保安庁等の各防災関係機関との間で,被害情報等を迅速に交換し,防災活動を円滑に進めることを目的とした無線通信であり,国,地方公共団体,電力会社,鉄道会社等に導入されている。

(f) その他

総務省においては,地方公共団体等における被害情報の収集や災害応急対策の実施に必要な通信手段の不足に備え,被災地方公共団体等から災害対策用移動通信機器の貸出要請があった際に,東京,大阪の各拠点から,移動無線機を速やかに搬入できるよう体制を整備している。

c 映像情報の活用

ヘリコプター等による災害現地の映像情報は,災害の全容を的確に把握する上で極めて有効であることから,ヘリコプター映像伝送設備等の整備を進める警察庁,消防庁,国土交通省,海上保安庁及び防衛省の協力を得て,ヘリコプター災害映像を全国のどこからでも総理大臣官邸,内閣府及び各省庁に伝送できる映像伝送システムの充実・強化を図っている。

更に,送られてきた現地災害映像情報を総理大臣官邸及び各省庁に配信するための映像伝送回線を整備するとともに,あわせて被害箇所を適切に特定できるようにヘリコプターの位置情報を集配信するためのヘリコプター位置情報システムを導入している。

また,政府の緊急災害対策本部と現地対策本部との間を結ぶテレビ会議システムにより,その模様を官邸,防災関係機関に伝送することにより,災害現地との情報共有を図っている。

更に,総務省においては,地上テレビジョン放送のデジタル化完了後の空き周波数を有効利用し,安全で安心な社会の実現のための映像伝送が可能な移動無線システムの実用化に向けて検討を進めている。

d 放送による情報伝達

災害情報を住民に周知するためには,防災無線網のほか放送の活用が有効であることから,日本放送協会及び一般放送事業者との間で災害時における放送要請に関する協定を結び,災害対応に関する協力体制を築いている。

e 安否確認の情報伝達

災害が発生したときは,多くの人が家族や知人の安否を確認するが,迅速な安否情報の提供はその後の救援活動,復旧活動を円滑に進める上で極めて重要となる。こういった要請にこたえるものとして「災害用伝言ダイヤル」や「災害用伝言板サービス」が提供されている。また,消防庁においては,平成20年4月に安否情報システム(国民保護法に基づく安否情報の収集及び提供を行うシステム)の運用を開始したところであるが,災害時にも利用されるよう地方公共団体に働きかけていくこととしている。

f 情報・通信体制の整備に係る今後の課題等

阪神・淡路大震災及び新潟県中越地震等の教訓を踏まえ,また,首都直下地震等に備えた業務継続性の確保対策の一環として,各防災関係機関においては,大地震に耐え得るよう通信施設の耐震・免震対策,商用電源の停電等に備えた非常用電源の確保,通信回線の多ルート化及び映像伝送等の機能拡充などを一層推進する。更に,最近のICT技術を導入することにより無線通信回線等のIP化,大容量化を推進している。

加えて,各防災関係機関の通信網相互の連携,防災情報の共有化・標準化の推進,中央防災無線網を使用した災害映像の効果的な活用のために,各省庁との一層の連携と運用方法・活用の周知の徹底及びこれに基づく訓練の実施等を強力に行う必要がある。


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