1 自然災害要因とその変化第1部 災害の状況と対策



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第1部 災害の状況と対策

序章 災害リスク認識を高め,多様な主体の行動により被害の軽減へ

1 自然災害要因とその変化

昭和52年から昨年までの30年間(1977-2006年)を振り返ると,ここ10年間の気象には,短時間に激しく降る大雨の発生回数が明らかに多いなど,異常なものが見られる。平成16年にはそれまでの観測史上最多であった6個を大幅に上回る10個の台風が上陸したほか,毎年のように台風,熱帯低気圧,梅雨前線などに伴う豪雨による災害が頻発している。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の作業部会では本年に入り,地球の気候システムに温暖化が起きているとほぼ断定し,地球温暖化の進行に伴って大雨の頻度や熱帯低気圧の強度が増加すると予測している。また,昨年は,相次ぐ竜巻災害により観測史上例を見ない12名の死者が発生し,竜巻がもたらす破壊力の恐ろしさを改めて思い知らされた。さらに,阪神・淡路大震災,新潟県中越地震,福岡県西方沖を震源とする地震,能登半島地震など,大規模地震発生の切迫性が指摘されている地域以外において大きな地震が発生しており,地震は全国どこでも発生しうることが改めて認識されている。

(1)増加する集中豪雨の脅威

これまでの30年間を見てみると,最近の10年間(1997−2006年)では,短時間に集中的に雨が降る事例が明らかに多くなっている。気象庁の全国約1,300箇所あるアメダス観測点で観測したデータを基にすると,過去10年では,1時間で50mm以上の雨が観測された回数は3,132回,1時間で100mm以上の雨が観測された事象は51回となっており,前々の10年間(1977-1986年)と比べると,それぞれ約1.6倍,約2.3倍に増加している(図表1参照)。雨の降り方から人の受けるイメージとしては,気象庁によると,1時間で50mmから80mmの雨は「滝のように降る,ゴーゴーと降り続く」,80mm以上の雨では「息苦しくなるような圧迫感があり,恐怖を感じる」である。

クリックで拡大表示図表1−1 1時間に50mm以上の雨が観測された回数の推移

クリックで拡大表示図表1−2 1時間に100mm以上の雨が観測された回数の推移

最近の10年では,平成12年に東海豪雨,平成15年に九州北部を中心とした梅雨前線豪雨,平成16年には新潟や福井等での梅雨前線豪雨やそれまでの観測史上最多の6個の上陸を大幅に上回る10個の台風の上陸による各地での被害,平成17年には東京23区内において1時間の雨量が100mmを超える猛烈な雨による浸水被害,平成18年には中部,中国,九州地方において梅雨前線豪雨などが発生している。

 

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では,その第1作業部会が本年2月に,地球の気候システムに温暖化が起こっているとほぼ断定し,大雨の頻度が引き続き増加するとともに,熱帯低気圧の強度の増大することなどの予測を発表した。また,本年4月には,第2作業部会が,地球温暖化の影響として,洪水と暴風雨による損害の増加,洪水被害人口の毎年数百万人の増加などの予測を発表している。

気象庁の異常気象レポート(2005)によると,過去約100年間では,日降水量が100mm以上及び200mm以上の大雨の出現数は増加傾向にあり,大雨が増加する傾向は日本だけでなく東アジアの広い範囲でも共通しており,地球温暖化やそれに伴う水蒸気量の増加など世界的な規模の変動が寄与している可能性があるとしている。

我が国は,山地や谷地など地形が急峻であり,都市化の進展なども相まって,洪水や土砂災害による被害を受けやすく,また,三大湾を始めとする沿岸部には,人口,資産,都市機能が集積しており,中長期的な気候変動も含め,今後の気象現象の動向には十分な警戒と備えが必要である。

クリックで拡大表示コラム IPCC作業部会レポートについて

(2)頻発する竜巻などの突風による災害の脅威

昨年は,竜巻災害が相次ぎ,9月には宮崎県延岡市で発生した竜巻により,死者3名,負傷者143名,住宅全壊79棟などの被害が生じ,その2か月後の11月には,北海道佐呂間町で発生した竜巻により,死者9名,負傷者31名,住宅全壊7棟などの被害が発生し,竜巻災害による死者数では観測史上最多を記録した。それまでの過去10年を見れば,竜巻災害による死者数は1人という状況であり,昨年は竜巻災害の恐ろしさが強く印象づけられた年となった。また,過去の竜巻災害による被害を見ても,数百人の負傷者や数百棟に及ぶ全壊・半壊の住宅被害が起きており,人口が密集している住宅地でひとたび竜巻が発生した場合には大きな被害が生じることを物語っている(図表2参照)。

 

竜巻などの突風による災害は,これまで全国各地で発生しており,突発的な破壊力が大きく,人命や住家のみならず,交通やライフラインなどに甚大な被害をもたらしている。今後,災害をもらたすような突風の監視・予測能力の向上,わかりやすい情報の提供と迅速な伝達,交通やライフライン等の分野ごとに取りうる対策の検討とともに,竜巻などの突風からの身の守り方など個人レベルでの対策の周知を進める必要がある。

クリックで拡大表示図表2 最近の主な竜巻災害による人的被害,住家被害

(3)どこにでも発生しうる地震の脅威

我が国は,太平洋側にある海洋プレート(地球表面を覆う岩盤)と大陸側のプレートの境界に位置し,それらの相互運動などによって地震や火山による被害が世界的にみても多い地理的条件を有している。我が国はこれまで関東大震災や阪神・淡路大震災において甚大な被害を受けた経験を踏まえつつ,東海地震,東南海・南海地震,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震,首都直下地震などに備えた対策を進めている。

さらに,次の東南海・南海地震の発生に向けて,中部圏及び近畿圏を含む広い範囲で地震活動が活発化する可能性が高い活動期に入ったと考えられるという指摘もある。近年,平成16年の新潟県中越地震,平成17年の福岡県西方沖を震源とする地震,本年3月の能登半島地震など,大規模地震発生の切迫性が指摘されている想定震源域以外でも全国各地で地震による被害が発生しており,地震は全国どこでも起こりうるものといった認識をより周知する必要がある。

また,海溝型地震のような巨大地震により発生する地震動にはやや長周期の地震動がより多く含まれる場合があり,地盤構造によっては振幅がさらに大きくなり,継続時間も長くなり,また,震源から遠い地点でも振動が続くことがある。このような長周期地震動が,高層建築物や長大構造物など長い固有周期を有する構造物と共振することによってどのような影響が生じるかについて,専門的な検討が進められている。

クリックで拡大表示図表3 過去20年の地震と海溝型巨大地震等の震源域


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