2. 強振動の試算


 
2. 強振動の試算
 
   
(3) 強振動試算の結果
  試算された地震動の結果について、過去の地震記録から得られた最大加速度および最大速度の距離減衰、応答スペクトル特性、および1854年安政東海地震の震度分布の東側部分との比較を行った。
(1)最大加速度および最大速度の距離減衰
 破壊開始点(1)の場合の最大加速度および最大速度の距離減衰を資料2の図2−1に示す。最大加速度の距離減衰は、福島・田中(1990)の経験式と比較してやや大きいようにも思われるが、最大速度の距離減衰は、司・翠川(1999)による経験式とほぼ一致している。 また、資料2の図2−1に、海溝型地震の1985年チリ地震の観測値と試算値の比較を示す。最大加速度および最大速度ともほぼ一致している。
 破壊開始点(2)の場合の最大加速度および最大速度の距離減衰および1985年チリ地震の観測値との比較を、資料2の図3−1及び図3−2に示す。結果は、破壊開始点①の場合とほぼ同じで、今回の試算値と過去の地震の観測値とはほぼ一致している。
 これらから、今回試算した地震動は、最大加速度、最大速度の距離減衰の面からみると、経験式および過去の地震の観測値ともほぼ一致しており、強震動の計算方法及び設定した断層パラメータは妥当なものと評価される。
(2)応答スペクトル特性
 応答スペクトル特性は、速度については高橋ほか(1998)の、加速度については Youngs et al.(1997)の経験式と比較する。資料2の図4に試算した観測点を、資料2の図5に高橋ほか(1998)による経験式の誤差を示す。
 破壊開始点(1)の場合の試算した強震動の応答スペクトルを資料2の図6−1及び図6−2に、破壊開始点(2)の場合を資料2の図7−1及び図7−2に示す。高橋ほか(1998)の経験式は、資料2の図5からわかるように実際の観測データは平均スペクトルから3〜4倍の範囲にあり、今回試算した速度の応答スペクトル(工学基盤上で計算)も同様の範囲内にある。また、加速度の応答スペクトルも、Youngs et al.(1997)の経験式と概ね一致している。
 資料2の図8に、破壊開始点(1)の場合の試算した強震動の速度応答スペクトルと、1985年チリ地震の観測データの速度応答スペクトルの比較を示す。比較地点は、震源からの距離がほぼ同距離の地点を選択した。両者の応答スペクトルは概ね一致している。
 これらのことから、応答スペクトルの面からみても、今回試算した強震動が妥当なもので、強震動の計算方法及び設定した断層パラメータ等が適切なものであると考えられる。
(3)震度
 想定震源域が適切なものであるか否かを評価するため、1854年安政東海地震のときの震度分布(資料2の図9)と比較する。この地震は、想定東海地震の震源域よりも西側にまで広がる震源域を持つ地震であることから、評価は御前崎よりも以東の領域の震度分布と比較することとする。
 今回の試算では、それぞれの地点の地盤条件を正確に反映したものではないが、駿河湾の西岸から伊豆半島の西岸に強いゆれの地点が見られ、大局的には1854年安政東海地震の震度分布がほぼ反映できるものと思われる。
 しかしながら、場所によっては、1854年安政東海地震のときの震度よりゆれが小さく計算された地点もあり、今後の評価には地盤条件等の反映が重要となる。
 今回の試算から、強震動の計算方法、設定した断層パラメータ及び想定震源域の位置はほぼ妥当なものと考えられるが、今後、各地点の地盤条件等を適切に反映した時点で、再度、評価することとする。
 
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