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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
官民のユーザー指向型ライフライン研究パートナーシップについて
 
ロイド S. クリフ
ウイリアム U. サベージ 上級地震専門家
ノーマン A. アブラハムソン
パシフィックガス・電力会社
 

序論
 高度に都市化が進んだ地域やその近辺に大規模な地震が発生すると、住居用と商業用の建物群の局部的な破壊、公共施設と交通 網の崩壊、および長期にわたる経済的、社会的影響を引き起こす。世界の人口が加速度的に都市に集中してきていることから、社会のあらゆる部門は都市における地震の危険を軽減するため努力すべきであるということが、次第に知られるようになってきている。地震の脅威を理解し、脅威を軽減するための有効な方策を講じることは、単に政府の問題や、経済界の問題あるいは公共施設の問題だけではない。しかし、カリフォルニア、日本、台湾、トルコで過去7年間に起きた都市の大災害を見るにつけ、地震の危険を軽減する動きは恐ろしいほど遅いことに皆頷くことと思われる。より効果 的な方法は何かないのだろうか。

 地震の被害を軽減する具体的な問題を解決し、将来の地震による被害の効果 的軽減を実現するため、政府機関とその他の企業の両者の協力体制を活用し、民間部門の組織が実行できる有効な役割に本書は焦点を合わせている。こうした「官民協力体制」は、それぞれの協力相手の本来の要請に合致するよう上手く考案され、各当事者の投資によってそれぞれの当事者および社会全体から評価される結果 が生じる場合、直接参加している当事者にとって相互に納得できるものであり、協力の場である都市地域全体にとっても利益になるものである。カリフォルニア北部と中部で公共施設の利用者のため働いている、太平洋ガス電気会社は、地震の災害を軽減する官民協力体制を作り上げる際の支援を行ない、地震対策をことのほか上手く樹立することができた。順調に確立できた要因の内、重要だと思われるものが本書の主題となっている。

 

現状
 公共施設と交通網は、都市社会のインフラの基本構造を作り上げ結び付けていることから、ライフライン・システムと呼ばれている。ライフラインの所有者と経営者は、地震対策で指導的役割を担うことができるが、その理由はは経済界や住民の利用者に直接影響を与え、また採用されるべき地震対策に対し、確約し優先順位 を示すことができるためである。しかし、往々にして、適当な行動を起こす前に身に付けておかなければならない地震に対する危険性や脆弱性に関する知識に、ライフラインの決定権を持つ人達は欠けていることが多い。

 地震対策には本質的に知識を持つ必要があるという理由は何であろうか。大きな地震が人の数世代の期間に何回も起きることは稀であるため、ライフラインの関係者と組織は、一般 的に打つ手と備える方法に関する、経験に裏付けられた知識に欠けているものである。地震は偶にしか発生しないことから、地方(都市)レベルでも、何が起きるのか、次に何時、何処で起きるのか、建物や他の施設に対する影響はどんなものか、社会が直面 する別の危険に対し、地震問題のためにどれだけの資金を使用する必要があるのか、知識を欠くようになってしまう。このような不確定性がすべて、行動することに対する大きな障壁となってしまう。

 こうした状況下、地震の知識を深め持っている者と、地震の影響を軽減するためその知識を用い専門的に実行する者とを結びつける協力体制の戦略が必要である。ライフラインの組織の状況では、地震の知識を持っている協力の相手は一般 的に学界か政府の研究機関におり、世界的規模で地震の研究を行なってきており、1箇所で経験するのに数千年を要するものを短期間(数十年)で学んでいる。地震の知識を実行する者は、民間か政府が所有する公共施設か交通 網の管理者である。

 しかし、協力体制に対する戦略的必要性を単に傍観するだけでは、何も生まれてこないし、必要だからと言って協力活動が上手く行くわけでもない。地震の影響を軽減する協力体制を作り上げるための成功要因を見つけ出すためには、協力体制の定義を吟味することが役立つ。すなわち、一定の努力をした個人の間の関係で、通 常危険と利益を共有している。表1は、この定義に関して、成功した協力体制で適当だと考えた表現により定義の各要素を詳しく説明したものである。

 太平洋ガスと電気会社では、当社の民間部門の電気施設における地震の危険性と地震に対する脆弱性に対処するため、こうした考え方を特に採択した。当社の営業地域はカリフォルニアのサン・アンドレアス活断層系のおよそ70%に広がって事業を行っているため、地震による危険度は高い。地震の可能性とその影響を考慮し、低いコストで妥当な期間、受容可能なレベルの危険度を達成したいと考える。問題は地震の危険が事実上不確定なものであり、きわめて近い将来に最大級の地震が起きる最悪の事態を想定したレベルの改装コストは、その結果 高い電力料金に跳ね返るため、料金支払い者や政府の職員には受け入れられるものではない。しかし、何も備えをせず、将来地震でなにが起きようが簡単に決め込んでしまうことは、長期間の停電や、施設の顧客や他の建物の所有者の側に備えが欠けるように仕向けてしまい、急速な復旧が妨げられることから、高いものにつく結果 となる。

 

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