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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
平常時及び激甚災害後の情報交換
 

片山 恒雄
独立行政法人 
防災科学技術研究所理事長

 

 世界の先進国の中でも、日本とアメリカの両国は、自然災害、特に地震災害の多い国である。然るに、両国間でのシステム化された情報交換は、本来求められているよりはずっと少ない。言葉の問題から、多くの場合、情報の流れは一方通 行、個人対個人ベースで、かつ激甚災害発生直後に重点が置かれているのが実状である。情報の流れは通 常、アメリカから日本であり、主に専門家同士の個人のやり取りによっている。1994年のノースリッジ地震や1995年の神戸地震の直後、あらゆる分野とあらゆるレベルの地震災害の専門家が被災地を訪れ、ある意味では必要以上に情報交換が行われた。

 「情報交換」は、1998年シアトルでの第1回および1999年横浜での第2回の過去のハイレベル政策フォーラムにおけるキーワードであった。事実、フォーラムの議事次第に目を通 すと、「情報交換」という言葉がほとんどのセッションで現れていることが分かる。過去の情報交換が一方向性であったことを見るには、第1回シアトルでのフォーラムの記録にある各セッション末尾にまとめられたサマリーを読むのがおもしろい。それは基本的に、日本側のプレゼンテーションだけの断片的なサマリーなのである。もしかしたら単に、この特定の本がアメリカで編集されたものによるのかも知れない。しかしながら日本側参加者の観点でみると、サマリーの内容は、日本の地震災害関連活動の現状に関する、常識的な材料にほかならない。日本側からの単なる一般 情報は、アメリカ側の関係者にとっては、特別に議論すべき事がらのようである。FEMAやUSGS、その他のアメリカの防災機関のホームページに継続的にアクセスしている日本の状況は、先方にはない。

 私は、こうした状況は多くの場合、言葉の問題から発生していることを強調しておきたい。そして、この問題の解決は難しい。

 日米コモン・アジェンダで決められたことを2000年までにフォーラムの結果 として広報するという取り決めからして、この第3回フォーラムが最後のものであることを考慮すると、3回分の成果 がまとめ上げられ、おそらくインターネットを通じ幅広く世界に広められることになると思う。これは良いことであるが、この種の広報はもっと早く行われているべきであった。ここで問題は、どんな材料を広報するか、1回だけで終わらせてしまうかどうか、である。

 継続は力である。継続的な努力は、平常時の防災活動および災害発生の直後やしばらくしてからの活動を相互に理解するために、両国にとって重要である。過去の経験では、1994年のノースリッジ地震や1995年の神戸地震のような激甚な災害の直後には、日米の両国民は、災害そのものに関連した情報については、必要以上に入手することができたともいえる。しかしながら情報の流れは、数週間または数ヶ月もすると突然止まってしまうため、新しい法律や制度の発令等の施策変更や災害影響の長期化などに関しては、ほんの一握りの専門家しか知らないことになる。将来計画の立案のために何が本当に重要かは、しばしばこのような事後情報にあるものなのである。

 災害直後の情報はメディアを通じ、一般の人に強烈なインパクトを与えるが、一方で、施策変更や災害影響の長期化などは、一般 の人には理解することは難しく、報道価値も通常高くない。両国の防災専門家にとって、既存の法体系を学び、両国民の生活環境の社会背景を理解することが必要である。過去のフォーラムのいくつかのプレゼンテーションは、そうした背景知識を分かってもらおうとして素晴らしいものもあるが (八木氏のシアトルでの第1回フォーラムにおける「日本における地震災害対策について」は良い例)、理解してもらうべきことは、膨大かつ複雑なためたった30分間の発表では説明しきれない。

 フォーラムの新しいホームページができたとして、そのホームページがきちんと維持され継続的に更新されることで、地震防災分野における現在の状況がどうなっているかが、日本とアメリカの防災専門家に伝えられることを、私は強く希望する。この目的を満たすために、ホームページは2つのパートで作られるべきである。パート1では、3回のフォーラムの成果 のようなものを一般情報として世界中の防災専門家に公開すべきである。パート2は、両国の地震施策について、より良くかつ深く問題を理解し、情報交換が行えるチャンネルとし、そこには日本とアメリカの一部限定した専門家だけがアクセスできるようにすると良い。    

 仮にこのようなホームページが作られ適切に維持されれば、本フォーラムの活動は基本的に我々が集まらなくても続けられると思われる。私は、特に日本側にとって、このことは言うは易く行うは難しであると認識している。しかしながら我々は、遅くても着実な歩みが勝利を導くことを覚えておきたい。

 ご静聴ありがとうございました。

 

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