検索の使い方
内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 防災情報のページ > 防災対策制度 > 地震・津波対策 > jishin
3 活動と成果 本プロジェクトの派遣チームの派遣期間は1999年9月5日〜9月19日でトルコ共和国滞在は2週間であった。派遣先はトルコ共和国公共事業省とイスタンブール工科大学である。前者は建築物危険度診断手法の普及及び実施のカウンターパートであり、後者は判定手法の開発に当たった。イスタンブール工科大学では建設工学科のカラドヤン教授(Dr.Frauk Karadogan)、ボヅロール教授(Dr.Hasan Boduroglu)、およびオズデミール助教授(Dr.Pinar Ozdemir)が派遣チームの半数と協力業務を行った。この分野での派遣専門家は東京大学生産研究所から1名、建設省建築研究所から2名が参加した。
政府及び自治体職員からなる派遣チームの他の半数はアンカラへ出向いて公共事業省との協議に臨んだ。国際協力では良く生ずることではあるが、最初の公共事業省担当官との会合では、政府間調整の不備による混乱が見られたものの、両者はこのプロジェクトの目的に対する相互理解に到達することが出来た。誤解が解消した後、公共事業省の地方担当官により地域の専門技術者に対する協力成果 の研修が準備された。
判定手法の開発では、トルコの建築物の性質と構造部材の被害の実態を考慮した建築物危険度診断手法とチェックシートを英文で作り、次にトルコ語に翻訳し、トルコ語版の建築物危険度診断手法とチェックシートを作成した。
作成したトルコ語版建築物危険度診断手法とチェックシートを用いて、イスタンブールの構造技術者および他の大学関係者に対して、研修が行われた。研修においてはイスタンブール工科大学における講習会と被災地域での実地訓練が行われた。
これらの活動をすべて終了した後、日本チームは9月の半ばにトルコをあとにした。残念ながら、つねに国際協力としての限界が存在する。日本側にとっては、本プロジェクトのその後の結果 を詳細に知ることは困難である。成果物はトルコ側に渡っているが、具体の判定あるいは診断活動にどの様な影響を与え得たかを実数として把握することは困難である。しかしながら、震災後の建築物危険度診断手法の考え方と方法が、トルコの地に根付き、数多くの被害建築物に適用されるとともに、よりよい手法への改良が行われることが期待される。
4 活動を踏まえた論点 地震の危険性の高い国々では、地震対策を講じておかなければならない。この対策は地震後の被災者の保護から復興に向けての段階に応じて講じておく必要がある。被災後72時間は人命救助に最大限の努力を集中しなければならないが、その後は復興に向けて住民の居住の安定や民間企業活動の再開へと重要な部分が移っていくといわれている。危険度判定はその嚆矢を担う活動である。危険度判定を行うことにより住民に建築物の安全性を認識させ日常生活を再開することが可能となる。ある場合ではこの判定のあと詳細判定や、必要に応じて修理、改築、再建といった行為につながることとなる。
この判定では、非常に多くの建築物ストックを短時間にかつ円滑に判定する必要がある。このため、民間分野にいて組織活動には必ずしもなれてはいない多数の民間技術者の動員が必要であり、判定の正確さを確保するには判定基準の策定が重要である。結果 として、被災後の活動の一環として、多くの国で応急判定活動の準備を行っておく必要がある。特に近代化が進むにつれ、このような多くの国々で工学手法に基づく建築物の数が多くなってきている。国によって地震力の設定やそれに耐えうる建築物の変形度基準などの差はあるが、大きな意味では普遍的な原理をもとにしている。このため、この分野は国際的な技術協力を進めることが有効な分野であると考えられる。
ここで報告した応急判定チェックリスト開発の技術協力プロジェクトは長年に渡る日本とトルコ間の地震研究に関する協力活動を踏まえた付加的活動の一つとして実施された。言い換えれば、人間関係を含む長期の経験の積み重ねがなくては短期間でこのようなプロジェクトを実施することは不可能であったであろう。このことは、地震被災を被る恐れのある国々にとって、将来の被災を最小限にくい止めるための活動として相互の国際協力体制を継続することが重要であることを示唆するものでもあろう。
参考文献: 国際協力事業団国際緊急援助隊耐震専門家チーム:トルコ地震報告書 イスタンブール工科大学・国際協力事業団専門家チーム:被災建物の応急判定
【前へ 】【一覧へ 】【次へ 】