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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国津波予防プログラムについて
 
3. プログラムの現状  
 

A. 津波危険査定
 過去の津波データから危険区域を割り出せる地域もあるが、そのようなデータがある地域はほとんどない。このような場合には、津波浸水数値モデルを使えば、局地津波や遠地津波の発生時に浸水する恐れのある区域を予測することができる。この浸水数値モデル技術は、非常事態対策のための津波浸水地図を作るのに役に立つ。

 各州では、州のニーズと必要な専門知識に基づいて浸水地図を作成する方法が決められている。太平洋沿岸の州が津波浸水予測地図を作るのを支援するために、ワシントン州シアトル市にある津波浸水地図エフォート(TIME:Tsunami Inundation Mapping Efforts)は、津波浸水モデルの実行およびテスト、浸水モデルの当該地域への応用、これらのモデルを実行するのに必要な水深測量 データと地形データの保管を行っている。過去4年に亘って、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州の約20の浸水地図が作られ、現在はアラスカ州とハワイ州の浸水地図を作成中である。

B. 警報指導
 モデルの第2の要素は、迫り来る津波の危険を沿岸地域の住民に伝えるための、地域の危険査定に基づいた適切な警報システムである。これには太平洋全域、地方、地域を対象とする3種類の警報システムがある。太平洋全域を対象とする警報システムは警報を出すまでに約1時間かかるので、震源から750キロ以上(この時間内に津波が到達する最大距離)離れた住人に対してのみ有効である。地方警報システムは10分後に出される(震源から100キロ〜750キロ離れた住民に有効)、地域警報システムは5分後に出される(震源から60キロ〜100キロ離れた住民に有効)。現在、太平洋全域システムを受け持っているのは太平洋津波警報センターと、定評ある5箇所の地方システムである(その内2ヶ所は米国にあり、日本、ロシア、フランス領ポリネシアに1つずつある)。

 これら3種類のシステムはどれも地震の規模と場所に基づいて警報を出す、また津波の確認と「警報解除」の決定には沿岸の津波観測所を利用している。すべての地震で津波が発生する訳ではないので、誤った警報を出すこともあるが、その主な原因は、津波を直接観測するのではなく地震データに基づいて警報が出されることにある。たとえ沿岸で津波を観測しても誤報が生まれる可能性はある、なぜなら港の共振と水深の局地的影響が沖合いの津波エネルギーを大きく増大させたり、減らしたりするからである。米国海洋大気局(NOAA)の津波警報システム改良計画の骨子は、リアルタイム深海津波探知センサーの設置と、地震情報をハワイの太平洋津波警報センター、アラスカの西海岸・アラスカ津波警報センターへ送る現在のリアルタイム地震ネットワークのグレードアップである。2001年末までに、合計で6台のリアルタイム海洋センサーと、56台のリアルタイム地震計が新たに設置され可動する。

 過去5年間にわたり、リアルタイム深海津波探知システムの試作品が開発されてきた。このシステムは、ボトム圧力センサー、アコースティクモデム、海面 ブイ、静止業務用環境衛星(GOES:Geostationary Operational Environmental Satellite)通 信リンクで構成されているが、北太平洋の厳しい環境に耐え、信頼度が90%を超えるデータを提供するように工夫された。これらのシステムは、津波振幅の限界値(3センチ以上)を探知することで殆どリアルタイムで津波データを報告し、これらのデータをボトム探知機から海面 ブイ、さらには静止業務用環境衛星(GOES)を経由して警報センターまで送信するよう設計されている。津波を探知してから約1分で警報センターまで情報が届く。これらのデータは即時的価値がある、なぜなら津波が発生したのか、しなかったのか直接検証できるし、津波が発生した場合には深海の振幅が送られてくる。しかし米国沿岸への津波の脅威の程度を査定する段になると、この情報は役に立たないだろう。もっと研究開発が進めば、これらのデータは最終的に津波予測アルゴリズムに組み入れられるだろう。

 カリフォルニア、ワシントン、アラスカ、ハワイにある既存の地震ネットワークの改良は、信頼性の高い地震関連データを津波警報センターに素早く提供することから始められた。

 現在、100台以上のリアルタイム地震記録計から成る7つの地震ネットワークが、米国の津波発生源地域の地震を探知している。過去5年にわたり、新しい観測所と、ネットワーク間を結ぶソフトウエアが設置されてきた。これらのネットワークはリアルタイムの地震データを米国海洋大気局(NOAA)の津波警報センターに提供し、センターは地震の発生地と規模をより早く特定できるようになった。この改良によって、米国海洋大気局(NOAA)はもっと短時間で津波発生を予測できるようになった。

C. 軽減
 軽減には、津波に襲われる危険地域による危険軽減努力が含まれる。遠方で発生した津波の脅威については、地元の管轄機間が津波警報センターからできるだけ早く情報を入手し、警報センターの掲示板に載った情報を把握し、適切な対策プランを実施することが肝要である。局地津波の場合、津波は地震発生後わずか数分で近くの沿岸地域に達するので、津波警報を出せたとしても、地元の役人にはリスクを正確に査定し、避難について合理的な判断を下し、住民に警報を周知させ、整然と避難させる余裕はない。どの地区が危険なのかを知っておくだけでなく、住民が津波の前兆を察知して、海岸から離れて速やかに高台や内陸部に避難することが最も大切である。このプログラムに基づく軽減活動については、クリス・ジョニエ−トリスラー氏とリチャード・アイスナー氏の発表でもっと詳しく説明されるだろう。

 

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