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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
サンフランシスコ湾地域における「プロジェクト・インパクト」の概要について
 
アリエッタ・チェィコス
カリフォルニア州バークレー市シティマネージャー事務所 チーフ
 
 

問題の背景
 サンフランシスコの湾岸地域は自然災害の多い所であるが、中でも最も深刻なのが局地的な大地震が発生する脅威が常にある点である。米国地質調査所(USGS)はカリフォルニア鉱山・地質局(California Division of Mines and Geology)と一緒に、この地域が直面する地震の脅威のスペクトルを調べるため、様々な研究を始めた。昨年の研究では、今後30年間にマグニチュード6.7以上の地震が発生する可能性は70%だと指摘されている。この地域の多くの活断層が災害のシナリオに大きな影響を及ぼす。1989年のローマ・プリータ地震と1994年のノースリッジ地震をきっかけに、近代的都市に大地震が発生した場合、複雑なエネルギーシステム、通信システム、輸送システムに頼っている都市住民は長期的にどのような影響を受けるかを検討し、完全に把握しようとする努力が地方および州全体で始まった。

 ヘイワード断層はサンパブロ湾の北あたりからアラメダ郡とサンタクララ郡の境まで伸びており、マグニチュード7.0以上の地震を発生させる威力がある。この脅威は地震に伴う、火災(都市部と人が住んでいない土地との境目で発生する火災を含む)、地すべり、地震の近隣地区への影響によってさらに増大される。サンフランシスコ湾の東端にある断層地域は、災害に取り組む政府各局に特別な問題を投げかけている。この地域は非常に都市化が進んでいるので、州と連邦の役人は、この地域の大地震に対する脆さは、州の中で最も深刻な状況だと受けとめている。

 地方の管轄地域が直面している問題は、人的被害を減らし地域のインフラを守るには、次の地震にどう備えるべきかということである。災害への対応と復旧作業は一義的には市や郡の地方政府の責任であるが、地方政府の手に負えないような災害が発生したときには、州政府と連邦政府も迅速な対応を迫られる。過去10年間に、米国は死者、負傷者が発生し、連邦の災害対策・復旧基金から250億ドルを拠出させるような大きな自然災害に何度も見舞われた。民間と政府の諸機間が負担した費用も相当なもので、総額で何十億ドルにも達した。自然災害の増加と被害の深刻さは、連邦の役人に地震、火災、洪水、暴風雨、ハリケーン、竜巻がもたらす危険を軽減する対策を取らせることになった。

 連邦政府はこの重大問題を議会から省・局の報告書に至るまで多くのフォーラムで取り上げ、政策、研究の面からもっと議論するよう奨励した。役人が問題にした点は「被害の大きい予測不能な災害に対し、国家としてどう備えるべきか」であった。アメリカにおける市民参加プロセスの例に漏れず、多くの大学、研究機間、専門機間、非政府組織がこの国家的議論に参加した。地域社会の人々も国中で開かれた災害後コミュニティー会議に参加した。先導役は州の救急隊と共に連邦緊急事態管理庁(FEMA)が務めた。

 こうした多くの声の中から共通のテーマが浮かび上がった、つまり、緊急時の対応対策と共に事前の被害防止と危険軽減対策を講じることが、最も費用効率が高くて倹約できる方法だと思われた。頻発する災害の被害査定額がかさみ、議会は毎年、緊急対策費用と短期復旧作業に緊急の政府支出金を割当てざるを得なかったので、前述の2重方式には多くの資金が当てられた。

 1997年に連邦緊急事態管理庁(FEMA)のプロジェクトインパクトが誕生したのは、長年に亘る価値ある作業の最大の成果であると同時に、災害対策への新たな取組みの始まりであった。連邦緊急事態管理庁(FEMA)の長官であるジェームス・リー・ウィット氏は上級スタッフ、特に副理事のミカエル・アームストロング氏と共にプログラム始動の先導役を務めたが、このプログラムは連邦政府の政策を調整して地方政府に実行できるようにしたものである。負傷者と災害費用の軽減という連邦の緊急命題は、多様な状況下で危険を減らせるようにプログラムを組みたてる必要性と一致した。省の役人達は、人々の個人的な危険問題を解決するのだから、このプログラムは地元からの投資によって維持できると考えた。連邦緊急事態管理庁(FEMA)はパートナーとして元手資金と技術援助を提供し、州政府にも参加を求めた。

 連邦緊急事態管理庁(FEMA)はプログラムを試すために国中から7つの地域を選び、各地域に対し、その地域特有の危険条件を自分たちで解決する方法を開発し、管轄地域内の住民にプログラムに積極的に参加するよう求めた。プロジェクトインパクトのカリフォルニアにおけるパイロット地域は、1998年はオークランド市、1999年はバークレー市とナパ市、今年はサンレアンドロの隣接市であった。連邦緊急事態管理庁(FEMA)は知事の救急隊と共に、被害軽減投資を地方戦略に集中させるという賢明な道を選んだ。最初の災害対応大学となるカリフォルニア大学バークレー校を含む近隣の4つの市に照準を合わせることで、プロジェクトインパクトは意義ある転換をし、地域社会の価値に見合った災害対策の育成を図った。

 1989年のローマ・プリータ地震によって、多くの地域が災害対策に興味を持つようになった。1991年にイーストベイヒルで大火災が発生した時、バークレーと隣接するオークランドでは25人の住民が死亡し、3,500棟以上の住宅が消失した。これは1906年のサンフランシスコ地震の火災以来、全国で最も大きな都市火災であった。連邦緊急事態管理庁(FEMA)の役員は、プロジェクトインパクトとこれらの近隣地域を結びつければ良い対策案ができると考えた。

 

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