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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
横浜市の地下構造調査とその応用について
 

3-5 これまでの調査結果
 これまでの調査で得られた結果は、以下のとおりである。

(1) 市域内で同じ深度で地下を切り取ってみると、P波の伝わる速度が速い地域や遅い地域がある。具体的には、地震の震源位 置に関わらず、横浜市の南東部と北部に走時遅れの大きい領域が存在し、市域中央やや西部よりの地域に、走時遅れの小さい領域が存在していることが判明した。また、走時の遅れを単純に地震波速度の遅い堆積層の厚さの違いと見なすと、上記領域がそれぞれ地震基盤相当層の深い領域と、浅い領域に当たると推定された。(図‐5)
(2) 横浜市の地震基盤深度は一様でなく、市域の西部では比較的浅く、地下約2.5km〜約3.0km、南東部及び北部では、地下約3.5km〜約4.0kmと深いことが推定された。(図‐6)
(3) 横浜市北西部における地下構造は、地震基盤が深度3km前後に存在する。また、青葉区南部で北側に向かって地震基盤が約1km深くなる段差構造があることが確認された。(図‐7)
このように市域全体は複雑な地下構造であることが推定される。これらについては、調査結果 と、「高密度強震計ネットワーク」での実際の観測記録とが対応することからも検証されている。(図‐8)
(4) また、関東大震災(1923年)の再来と考えられている南関東地震を想定した「第一次地震マップ」を作成した。これは、関東大震災と同じ震源地で発生した1999年5月22日の地震データを用いて計算し、市内の43地点がどの程度揺れるかを想定したものである。2000年度も引き続き調査を行い、より詳細な「地震マップ」を作成する。(図‐9)

 

4 地震マップの作成と活用
 2000年度は、これまでの調査で得られた地下構造をより詳細に把握することを目的に、「高密度強震計ネットワーク」で新たに得られる観測データによる解析や、新たな箇所で反射法地震探査や微動アレイ探査を実施し、市内の地震基盤の形状をより精度よく求めるとともに総合的な解析を行っている。

 また、1998年度から2000年度までの3ヵ年の調査で得られた詳細な3次元地下構造モデルに基づき、複数の想定地震に対する地震動を計算し、「市域内のどこがどのように揺れるのか」などを示す強震動予測図である「地震マップ」を全国に先駆けて作成する予定になっている。

 本市では、作成した「地震マップ」を以下のように活用し、「地震に強いまちづくり」を推進していくことにしている。
(1) 得られた結果を用いて被害想定を行い、地域防災計画へ反映させる。また、将来発生する可能性のある地震に対する具体的な情報として市民・企業に提供することにより、木造建物の耐震改修の推進をはじめ、防災意識の喚起や啓発、自主防災対策に活かす。
(2) 地域毎の震度、応答スペクトル等を市民や企業に提供することによって、建築物・構造物の耐震性能の評価に活用する。また、長周期の成分の地震動分布が現れている地域における、高層建築物や長大構造物の設計基準の指針として用いる。

 

5 まとめ
 これまでの日米地震防災政策会議では、震災対策に関する交流を国家レベルで進められてきた。今後は、対策の実施主体である都市レベルで、具体的な震災対策の交流を継承していく必要がある。

 カリフォルニア州のサンフランシスコ市やロスアンゼルス市では、ローマ・プリータ地震やノースリッジ地震などを克服して先進的な防災対策が進められている。具体的には、市民とのパートナーシップを通 じた防災対策や都市計画・街づくりへの展開などは、今後の本市の防災対策の推進に参考となる。

 横浜市では、木造建物の耐震補強工事に補助金を支出しているが、市民への浸透が不十分であり、バークレー市の住宅耐震化への取り組みは大いに参考となる。また、カリフォルニア州の活断層法及び地震ハザードマップ法による開発規制の手法等は、「地震マップ」の防災対策への活用についての示唆に富んでいる。

 このように、本市の今後の震災対策を進める上で、都市レベルでの交流が有益であることから、明日11月3日に、横浜市とロスアンゼルス市との間で「防災対策の情報交換及び交流に関する協定」を締結する。

 横浜市では、今後とも、日米都市レベルでの交流を通じて世界へ震災対策の重要性を発信し、国・大学などの研究機関と連携するとともに、積極的に地震防災対策を促進を図っていきたい。

 
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写真1,2, 図1,2 図3,4,5,6 図7,8,9
 

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